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1-5 反逆への第一歩

 その反政府組織の名はニブルヘルという。

 フェンリエッダと宝石商の案内で俺たちはサウスの町を抜けて、南の魔境より南西に向かった。

 その先に隠された迷いの森を抜けると、そこが彼らダークエルフの隠れ里にして反逆のアジトだった。


「よもやこんな時間に叩き起こされることになるとはな。俺はニブルヘルのリーダー、グフェンだ。ようこそアウサル殿、我々は貴方を歓迎しよう」


 木製の円卓に青肌のダークエルフが待ちかまえていた。

 彼のイスだけ飾り気があったので、一目でその男がここのリーダーだとわかった。

 美形と呼ぶには老いていたが、厳めしいその容姿と大きな体格、長い銀髪は英雄然としたものがあった。


「アウサル、ここは私に任せてくれ。グフェン、早寝が習慣なのに起こしてすまなかったな。……実は、町の方で昔の素性がバレてしまってな、そこをこの男に助けられることになった」

「ほぅ。……お前ともあろう者がしくじったものだな。助かったよアウサル、ニブルヘルにとって彼女は欠かせない幹部戦力だ、組織を代表して礼を言おう」


 体躯の割に品の良い男だ。

 イスより立ち上がり彼の巨体が丁重にお辞儀をして、確かめるようにアウサルの蛇眼を見た。


「フェンリエッダは強い。俺がいなくともどうにかなっていただろう」

「そう謙遜するな、お前のおかげで本当に助かったんだ。……グフェン、それで彼なのだが、理由は知らないが侯爵側に付くのを止めたらしい」


 フェンリエッダはこの男を尊敬しているのだろう。

 言葉尻が丁寧であったし、すっかり心を許しているように見えた。


「ほぅ……それは驚きだ、眠気をおして起きただけの価値がある」


 そのグフェンが目を擦った。

 なりはでかいが、厳めしいが、かわいいところもあるのかもしれない。


「すまんなグフェン、眠いようなので俺も話を進める。まあもう聞いていると思うが、どうかこの水晶剣を買ってくれ」


 布に包まれたそれを円卓の中央に置いた。

 隠された総アメジスト製の刀身を見せつけると、グフェンの眠気も一気に飛んだらしい。


「これはなんと優美な……いや、だがこれは……。エッダ、明かりを強くしてくれ、もっとよく見たい」


 ランプを用意するなど面倒だ。

 フェンリエッダのクールな顔にそう書かれていた。

 だから彼女は手のひらをさしだし、その中に炎を灯らせた。


「素晴らしいな。これだけのものがまだ残っていたか……。ありがとうエッダ」

「いえ……」


 どうもそれが普通のやり取りらしい。


「呪われた地より発掘したものだ。この通り一見は武器というより装飾に見えるが……鑑定したところ、とんでもない魔力と強度を持っていることがわかった。これをダークエルフの技術で修復すれば、無双の魔法戦士が1人出来上がることだろう」


 とにかく俺は商品を売り込んだ。

 それだけ素晴らしい物を発掘したのだと自慢した。

 ……堀り当てた異界の本も帰ったら読もうと思い返しつつ。


「素晴らしい、これは喉から手が出るほど欲しい。だがアウサルよ、悪いがコレに見合う金がない、我々は大商人ではなくレジスタンスなのだからな。むしろ侯爵の方がこれを高く買ってくれるだろう」

「……論外だな。グフェン、これだけの逸品をヤツの倉庫に眠らせておけと?」


 グフェンが価値を理解してくれたのが嬉しい。

 アウサルのパトロンにふさわしいのは本来こういった男のはずだ。


「ならば何の為にこの剣は今日まで朽ちずに生きてきた。断じて支配者にコレクションされるためではない。次なる戦いの為だ、戦いで朽ちてこそ剣、よってこれはアンタたちが持つべきなのだ」


 あのスコルピオ侯爵も好事家だったが、やはり気に入らないところがあった。

 ヤツは財宝の価値を金でばかり計る。そこが許せん。


「フ、フハハ、そうかさすがはアウサルだ。実は君のお父上とは密かに取引をしていたのだよ。殺されてしまってからはそうもいかなくなったがね……。まあ、だが、さすがにこれは買えない、やはり金がないのだ。欲しいがね」


「そうか、ならやるよ」


 その返答にフェンリエッダもグフェンもギョッとした。

 ならばお前は何のためにはるばるレジスタンスの拠点まで来たのだと。当然の道理だった。


「俺にはコレがある。侯爵とももう取引をする気になれない」


 スコップを見せつけた。

 コイツも逸品だ、遠い先祖があの地より掘り当てたものだ。

 親父より受け継いだ、絶対に欠けないスコップだ。


「……アウサル、一体何があったのだ? 我々の状況からすれば寄贈を断る理由などない。だが俺は理由を聞きたい、どうしてこんなものを我々によこす」

「ああ、理由ね……」


 移動中暇だったのでそれも少し考えておいた。

 結論から言えば、邪神ユランに頼まれてお前たちを救いに来た、などと言っても人は信じない。

 本音の前に建前が要る。


「今さら親父の仇を討つ気になったのさ。……だってそうだろ。俺を虐げる者に味方する理由はない。なら、俺とエルフは味方同士だ」

「待てグフェン、私からも一言言おう。アウサルは普通ではない。私が賞金稼ぎどもに襲われた際に、そのうち1人を彼が店外に誘導してくれた。そして念のため私が店の外を確認してみれば……」


 いやちょっと待てフェンリエッダ、それは俺へのフォローになっているのか?


「そこに首から下を埋められた男がいた……。その男は、アウサルは、私たちの想像も付かない不思議な技を使う。魔法とも異なるおかしな技をだ……」


 端的に言えば掘って埋めただけなのにそりゃ大げさだ。

 ただの才能100倍のスコップ技でごり押ししただけなのに。


「ほぅ、それは不思議な話だ。一体どうやったのだアウサルよ」

「いや、ただ落とし穴にかけただけだが」


「いやそれはおかしい、お前にそんな時間は無かったはずだ!」


 フェンリエッダが間髪入れず食い下がった。

 後で彼女らに種明かしをするとして、話の要点はそこじゃない。


「それは後で説明する。それより俺のもう1つの用件を聞いてもらおう」

「ふむ、確かに脱線だったな。ならばアウサルよ、俺たちに何を望むのだ」


 少なからず眠いのもあるのだろう、グフェンが話を進めることに同意してくれた。

 その要望に従って単刀直入にいこう。


「なら一言で言う。……俺をニブルヘルに加えてくれ」

「何と……。エルフでもないのに……、我々に味方すると……?」

「アウサルッ、お前っ!」


 グフェンは慎重に、フェンリエッダはどこか期待と驚きを込めて声を上げた。

 表だってダークエルフに味方する者などいない。やはり旗色が悪過ぎるからだ、それも絶望的に。


「ああ、それが契約だ」

「どういうことだ? 君は誰と契約を結んだと言うのだ」


 ……む。しまったうっかり口が滑っていた。

 だがまあいいだろう、元から不自然な申し出なのだ。

 隠せば疑われるだけだと開き直ることにした。


「邪神ユランを知っているか? 創造主に弓を引き、敗れ、地底深く封じられたとされる愚かな赤き巨竜を」


 俺の言葉にグフェンだけが具体的な反応を示した。

 特にユランという名と、赤き巨竜という部分に。


「我々がその名を忘れるはずがない。もちろん知ってるとも、確かに赤く巨大な竜だった」

「そうか。つい今日の昼間のことだが、それを掘り当てたのだ」


 するとグフェンがイスより跳ね上がった。

 フェンリエッダは驚いて彼に歩み寄り、その隣からアウサルを見つめる。

 ……見るからに何か怪しむように。


「アウサル、それは、本当か……?」

「ああ、だがどこかに消えた。虐げられし種族を救って欲しい……などと邪神にしてはかわいらしい契約を俺と結んでな。で、俺はユランと契約して至上最高のスコップ使いになったのだ。落とし穴くらいなら一瞬だ」


 どうもグフェンは知っていたようだ。

 赤き竜ユランのことを、神話ではなく別の何かの経緯で。

 でなければ俺の言葉を信じるはずがなかったのだ。


 青い肌の厳めしきリーダーは、円卓に両手を突き俺の蛇眼を食い入るように見入っていた。


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