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8-01 深刻なスコップ問題と後日談


前章のあらすじ


 セイクリットベルというバランスブレイカー、それがニブルヘル隠し砦陥落を招いた。

 その危険極まりないアイテムを封じるため、アウサルらは1月をかけての策略を進めていった。


 また同時に常識外れな計画が進行した。

 楽園ア・ジールと、西のライトエルフの国を地下道で繋げてしまおう。

 アウサルの穴掘り能力により、工事は順調に進んでいくかと思われたが、採掘道具が岩盤と彼の力に耐えきれず無くなってしまう。

 しかしそれが世界への大きな介入となり、邪神ユランが子竜として復活することになった。


 予定の1月経つとセイクリットベル奪還計画が始動した。

 アウサルはサウスの地下競売上に潜り込み、持ち主の望む夢を見せる宝石デミウルゴスの涙を出品させていた。

 本国へのおべっかに最適なそれにスコルピオ侯爵が引っかかる。

 競り合いで発生した揉め事に見せかけて、アウサルはスコルピオからセイクリットベルを盗み取った。


 その後はベルそのものを陽動材料として再利用、別働隊のニブルヘル砦奪還を援護した。

 こうしてニブルヘルは奪われた砦をようやく取り戻せたのだった。



 ・



 隠し砦を取り戻した。

 だがそれがスコルピオ侯爵の激昂を呼んだ。

 迷いの森の周囲を侯爵軍が常時取り囲み、要するに兵糧攻めを仕掛けてきたのだ。


「わははっ、やつらア・ジールの黄金の沃野を見たら失神するぞっ! 自分たちが見当違いな包囲網を布いてるとも知らずになぁっ!」

「これで時間が稼げますねアウサル。今回の件、あのユラン様まで力を貸していただけるとは……ああユラン様、ユラン様……なんて、かわいい……」


 地上は地上で手を入れ直す必要があった。

 畑などを根こそぎ荒らされ、住居を好き勝手に使い回されてた。が反面嬉しい収穫もある。

 取引をしなければ調達の難しい各種物資が砦に備蓄されていたのだ。


 砦の見晴らし台から隠し砦の復興作業を眺める。ハイペースとはいかないが順調だ。

 って、フェンリエッダ……今なにか言ったか?


「あ、いやっ、じゃなくてっ……ええっとっ、とにかくよくやったアウサル! 貴方とユラン様がいなかったら私たちは……死んだ方がマシな目に遭っていただろう……。だから感謝している……!」


 よくわからぬごまかしがいきなりの感謝に変わっていった。

 そうか、エッダはユランが気に入っているのだな。どうしてかそれを隠したいと。


「だが俺には1つだけ不満がある」

「不満だと? 何だっ、よしこのラジールに言ってみよ、どうにかしてやろう」


 いいやどうにもならない。

 むしろアンタが動くといつだって騒動が起きる。積極的に止めてくれ。


「結局俺は、家宝のスコップを取り戻せていない」

「なんだそんなことか! そんなものサウスを落とせば自動的に取り戻せる、もう少しの我慢だぞアウサール!」

「簡単に言ってくれますねラジールさん……。それが出来たら苦労はありません」


 ああ、気の遠い話だ。

 やはりスコップをどうにかしないと、不便極まりないどころかトンネル工事が止まってばかりで進まない。

 ところが家宝のスコップはベルを盗んだことで奪還がさらに難しくなった。……しばらくは諦める他にない。


「こうして隠し砦を取り戻せたのだっ、大丈夫だアウサル。全て上手くいくっ!」

「……そうかもな」


 根拠は無いがその前向きさを見習おう。


 ・


 ……この時は思いもしなかった。俺の商売道具にしてア・ジール地下帝国の拡大を担うスコップ。

 まさかその2本目の相棒が現れることになろうとは、まだ夢にも。



―――――――――――――――――――――――――

 スコップの章 忘れられた鍛冶師と新たなる可能性

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8-01 深刻なスコップ問題と後日談


 状況はまた停滞した。

 侯爵側が間抜けな兵糧攻めに出たために、こちらは向こうの消耗を待つだけにしたとも言う。

 とはいえ実際のところ迷惑な包囲ではあった。


 おかげでア・ジール国外との商取引が完全に封鎖されてしまったのだ。

 ここまで積極的な行動に出るとは侯爵め、よほどに焦り頭に血が昇っているのだろう。


 ……まあそんなわけなのだ。

 すると俺が気まぐれで始めた事業にア・ジール中の期待が伸し掛かることになった。

 秘密の敵国横断トンネルの開発をここの上層部やそれに連なる商人の誰もが見守り、積極的な援助をしてくれるようになっていたのだ。


 しかしそうなると1つの避けられぬ問題に行き着く。

 これをどうにかしないことにはア・ジールの未来はじり貧という闇に閉ざされることになると言えよう。


 ……スコップだ。

 掘り続けるためには絶対に欠かせないソレが、ただの鉄製では問題が出た。

 工事は今中盤といったところなのだが、参ったことにとんでもない地層にぶち当たってしまったのだ。


 鉄より硬質な黒い金属……その巨大な鉱床が穴掘りアウサルの針路に立ちはだかった。

 アイアンスコップでも掘れぬこともないがすぐ折れる。これでは作業が遅々として進まない。


 つまりサウスとの行き来も半ば封鎖された今、いかにして良質なスコップを調達するかという問題に至ったのだ。

 ……いいやあえて逆に言おう。この試練さえ乗り越えれば、侯爵とエルキア本国を完全に出し抜けるのだ、と。


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