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6-4 地下帝国にひっそりとたたずむ遺跡の話 1/2

 その後、アベルを連れてグフェンの邸宅を訪れた。

 屋敷と呼ぶほど大きくはないが、町で1番大きな建物だったので政務の都合でそこがグフェンの家になった。


 ……つまりまあちょっと広いだけの民家だ。

 一応お屋敷っぽく飾り立ててみたようだが、当のグフェンが頻繁に泥まみれで仕事してるとくる。

 それを人徳と取るか、さぼり癖や田舎の王者と取るかは人それぞれだ。


 で、運良くその日はちゃんといた。

 新人アベルを紹介すると――仕事にあえぐ幹部たちに期待の助っ人としてすぐさまさらわれ、俺と泥の付いた青肌ダークエルフ様だけが残った。


「アベルハムくんか。見所があるとは思っていたが、そうか貴殿をかばったのもあの子だったな……」

「何だもう目星付けてたのか、それは余計なことをしたな」


 だがまあ幹部連中が喜ぶ姿を見れただけでも良いか。


「そんなことはない、忙しいと人事にも手が回らんのだ。かといって、誰に彼にも中央の仕事をさせるわけにもいかん。その点、アウサル殿を命がけでかばった彼、これは問答無用で信用できる逸材と言えるだろう」


 いやグフェンにも大好評だった。

 ついそこで思い付きに任せて拾って来ました、などと今さら言えないほどに。


「アンタも大げさだな。……ん、ところでエッダの姿がないな?」

「ああ、ゼファー殿が気になると言ってとある遺跡に向かった。君もエッダのことが気になるなら追いかけてみてはどうだ」


 フェンリエッダに会いたいとかそういう意味で言ったんじゃない。

 まあグフェンくらい歳を取ると他人の色恋ざたが面白いのだろう。……違うがな。


「暇だしそうするよ。で、場所は……?」

「出口の方だ、ここア・ジールのな。高台を下りて右手にいけばあの巨門がある、その周囲を探せば見つかるだろう」


 そういえばそんな門もあった。

 あの扉を開いたとき……門から言葉が聞こえて……ああ、余計にその遺跡に興味がわいてくるではないか。


「ありがとう行ってみるよ。またなグフェン、脱走すんなよ」

「ハハハッ、アウサル殿が復帰すれば嫌でもさらに忙しくなる。今のうちに働いておくよ。……それと、めぼしいのがいたらまた引っこ抜いてきてくれ」


 実は例の反則アイテム、セイクリットベル奪取ついでにスコップ奪還計画を彼に相談してある。

 もちろん好評だ。復帰1仕事目は汚い裏技封じといこう。


「畑の芋じゃないんだから気軽に言ってくれるなよ」

「似たようなものだ。手塩にかけて育てるとかわいいものだからな」


 それは年寄りの感覚だ。俺にはわからん。


「アウサル殿、そこには貴殿も含まれているよ」


 ……なんて恥ずかしいことを言うんだ、グフェンに苦笑いを浮かべて邸宅から立ち去った。



 ・



 案内通りに巨門を目指すと、その外れの荒れ地エリアに遺跡構造の地下道を発見した。

 それは短いものですぐに開けた部屋へとたどり着いた。


「おおアウサル殿ではござらんか。してなぜここに」

「……お前か。おかしなところで会うものだな」


 そこにグフェンの話通りの2人がいた。


「偶然ではない。実はグフェンから話を聞いてな、面白そうだから混ざりに来たのだ」

「面白そうってお前な……。こっちの事情も知らずいい気なものだ」


 知ってるよ。

 エッダは警戒心が強いからな、新参のゼファーをまだ見定めかねているんだろ。


 ……実際、有角種でありながら外で商人と剣豪をしているだなんて通常ではない。

 良い悪いはおいといて、何か面白い秘密がありそうだ。


「貴殿はまだ拙者を疑っているのでござるか。裏など無いと言ったでござろう、知的好奇心、それが全ての回答でござる」

「だが口ではどうとでも言える。戦うことを止めたお前たち有角種が、そもそもどうして我らに力を貸すのだ……」


 ……何か難しい話だな。

 確かにレジスタンスのニブルヘルからすれば、結界の中に閉じこもって出てこないなんて、日和見という名の裏切りかもしれんが。


「まーたその話でござるか……。拙者は故郷の連中とは気質や思想が違う、同じにしないで下され……」


 だがゼファーは盗品の取引を受け持ってくれたんだ、なら味方だ。


「なら何が目的なのだ!」

「はぁ……それは繰り言でござるな……」


 しかし何だろうな。もしかしてこの2人相性が悪いのか……?

 だがな、これじゃあ楽しく遺跡見物とはいかない。


「……セイクリットベル。迷いの森を無効化させた規格外のマジックアイテム……。これは有角種から見れば脅威以外の何ものでもない」


 そこで直感と思い付きに頼った。

 ……意外とこれは良い線いっているかもしれない。


「……そうでござるな。もうあの連中に日和見は許されないのでござる。いずれ共闘することになるかもしれないゆえ、そう角を立てないでほしいでござるよ」

「アウサル……たしかにソレは、ああわかった……。剣豪ゼファーよ、それでここは何なのだ」


 しかし結界を破れるその奥の手を、なぜ今まで使って来なかったのだ。

 ……という疑問が自動的に浮かぶが、そこは考えてもしょうがない。そんなのわからん。


「ははは、それが意味不明。まるでわからないでござる」

「本当……でしょうね……?」


「剣豪は嘘など吐かないでござる。まああえて言うなら……拙者の知る文明、言語ではござらん。よってわからんゆえ、むむむ余計に気になる……」


 その言葉につられて彼女らから離れ、軽く辺りを回ってみた。

 少し離れた壁に文字を見つけて立ち止まると、彼女らが俺の背中を追って来る。


「ここの遺跡は機能が死んでおる。だからこそ遺跡という名になるのでござるが」

「もしかして読めるのかアウサル?」


 エッダの問いかけに即答しかねた。

 遺跡の中は薄暗く、そのせいで彼女の美しいブロンドばかりが目立って見えていた。


「読めるかどうかで言えば……読め……あー、まあ、かろうじてわかる」

「本当でござるかっ?!」

「そういえばお前は発掘家でもあったな……」


 いや今も本業は発掘屋のつもりなんだが……。

 さて……となるとだ。


「アウサル殿、ならば読んでみて下され」

「かまわない、しかしなら先に教えてくれ。アンタ、なんで遺跡に興味がある」


 こちらの好奇心も満たしたい。

 交換条件を提示するとゼファーがうつむいて、それによって危なっかしくその一角がこちらに向けられた。


「2人ともっ疑り深いでござるなぁっ?!」

「ああ、無条件で人を信じるのはどうも苦手でな」

「そうだ、今だけはアウサルの意見に同意しよう。いい加減、腹を見せてくれゼファー」


 遺跡から何かを得て、それを秘匿されたり持ち帰られら俺たちも困る。

 ……彼女はよそ者なのだ。


「はぁ……わかったでござるよ……。拙者、実のところ本国の平和ボケが許せんでござる。だがそこにヒューマンに対抗するだけの力があればどうでござろう? 手っとり早くそれを実現するとなると、遺跡を調べて利用するのが1番早いと思ったのでござるよ」


 エッダの顔色をうかがってみた。

 ゼファーから目をそらして文字を睨むだけで、他の態度を見せようとはしない。やはり頑固だ……。


「そうか、じゃあ読もう。エッダもそれでいいよな?」

「……聞くな」


 だそうだ。


「一応言っとくが、この文字は俺の専門分野ではない。歴代のアウサルの誰かなら完全に読めたかもしれないが、この異界文明は趣味じゃなかったからそんなに学ぶ気がしなかったのだ」

「前置きはいい、拙者に早く教えてくれ!」


 意外に熱い思いで遺跡にこだわっていたのだな。

 さっきの言葉、その眼差しに免じて信じよう。


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