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永き雌伏の終わりと聖戦のやり直し サウス奪還電撃戦
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25-2 タイムリミット 始動・サウス奪還電撃戦

 月日は流れ、ついに時が来た。

 フェンリエッダの無念、俺とスコルピオの雌雄、グフェンのフィンブル王国復興という切なる願い、ダークエルフが地上を取り戻す日が来た。


 タイムリミットだ、これから俺たちは地上サウスを取り戻す。そして震撼をもって聖戦の幕開けを奏でよう。


「戦いに勝利することはさして難しくない。大事なのは、私たちがどれだけ被害を出さずに、次のフェーズに移れるかだ」


 ア・ジール、グフェン政務所に集まって、俺たちはこの電撃戦の最終確認を行っていた。

 次期王女フェンリエッダという旗印を書斎に置き、アベルハムが話を引き継ぐ。


「では大まかに解説します。本作戦の参加戦力ですが、まず俺たちニブルヘル――ではなく、フィンブル王国軍が4200、移民してくださったリザードマンが1600、有角種の皆さんが1100、獣人ヤシュさん率いる軍勢が2500、ニル・フレイニアからの援軍が1000、遠方サンクランドからヒューマンが500、同じく遠方ワルトワースからライトエルフが500、封印の国エルフィンシルから精鋭が800……」


 単純兵力はエルキアに劣る。だがこちらはその1体1体が優秀だ。

 魔霊銀製の武具、それにラウリルの輪による魔法剣という奥の手もある。


「合計で12200の軍勢だ。これだけ集まると食べさせたり寝かせたりするだけで大変だが、物資の面は今のところ問題ない。ワルトワースが莫大な備蓄をこちらに回してくれなければ、かなり苦労することになっただろうな」


 グフェンが俺に向けて軽く微笑んだ。

 それは予言者ゲルタと2代目アウサルにとって全て計算通りのことだった。

 その計算を狂わせる要因があるとすれば、フィンの言っていたあの言葉だろう。

 サマエルは確かに天獄に繋がれていたが、片目と、口と、心臓がなかったという。


「対してサウスの軍勢は5000弱です。しかしそれもエルキアとのあの戦争により、ローズベル要塞の防衛に4000が傾けられています」

「わはははっ、つまりは敵にもならぬ楽勝ということだな!」


 ラジールという最強のトラブルメーカーもこうして来てくれた。

 顔付きが前とは違って見える。どいつもこいつもだが、覚悟を決めていた。


「だけんど、その5000の敵兵は明日の味方だべ。まっ、被害を抑えるのには賛成だぜ」


 銀狼のヤシュも来た。ヒューマンの隣国と話を付けたそうだ。

 エルキアを倒しに行くのでしばらく見逃せと。


「ローズベル要塞を含む各地の砦、駐屯地、その他立てこもられると厄介な拠点には、全てアウサル殿が地下道を繋いでくれている」

「だがここに来てスコルピオが妙な動きを始めた。あの戦いからずっとローズベル要塞に拠点を移して、そこで生活していたらしいのに……数日前から元の屋敷に戻っているんだ……」


 フェンリエッダのもたらしたその情報は、グフェンをのぞく皆が初耳だったらしい。

 どういう判断なのだと、首を傾げる他にない。

 俺はあのローズベル要塞防衛戦の際にスコルピオに要求した。1ヶ月以内にサウスの領主の座を降りろと。


 こうしてやつはそれに応じる結果を残さなかったが、こちらの決起を感づかせてしまったのだろうか。

 だがなぜ、安全なローズベル要塞ではなく、己の屋敷に舞い戻ったのか、それがわからない。


「地味でつまらんが、なら先にスコルピオを掌握した方が被害は圧倒的に少ないぞ。チェックメイトをかけられては兵は戦えんからな、一番楽だ」

「ラジールさん、だがそれは罠かもしれないぞ」

「フェンリエッダさんの言うとおりだべ、なんか露骨に怪しい動きだべ」


 わざわざ警備の薄い屋敷に戻ることに、利益があるとは思えない。

 なら自らを囮にするつもりなのだろうか。だがあのスコルピオがそんな手を取るだろうか。


「そうだ、私たちはこの前の橋落としで、アウサルの力をエルキア軍とスコルピオに見せてしまった」

「だというのになぜ自分の首が危うくなることをするのか、ということですね……」


 それは諦めよう。あの日までこちらの力を隠し通せただけでも良しするべきだ。

 後は決起して、エルザスと力を合わせて狂ったエルキア王と取り巻きを倒すだけだ。


「そうだった、そのことでアウサル殿に優先して伝えなければならないことがあった」

「こんなところで俺を名指しか、さぞや大事なんだろうなグフェン」


「ああ、デミウルゴスの涙を覚えているか? いや、知らぬ者のために解説しておこう。それは持ち主に合わせて色合いを変え、持ち主の望む夢を見せる石、本来は人の世界に出してはならないものだ」


 スコルピオから結界破りのアーティファクト・セイクリットベルを盗んだ際に、それを餌としてオークションに出品した。

 やつはそれに釣られ、俺にベルを奪われたっきり、デミウルゴスの涙がもたらす夢に依存するようになったはずだ。


「それをどうやらスコルピオは売り払ったらしい」

「あれを売っただと……?」


 望む夢を見せてくれる奇跡の石を、やつは処分した。

 デミウルゴスの涙は強い依存症を招く。それを克服してやつは石を売った。予想に反する動きだ……。


「うむ、それは決意の現れだな。苦境がスコルピオを追いつめて、覚悟をさせたのだ。この手合いは舐めてかからん方がいいぞ」


 こういう時ばかりラジールは頭の回転が早いのだな。

 決意か。あの高慢なスコルピオがそこまでするとは……。


「ならばこうしよう。明日の深夜、俺が精鋭をもってスコルピオ邸を襲撃する。やつを取り逃がしたら失敗だ、作戦を第二フェーズに切り替えて、全てのサウス拠点を地下から襲撃して血をもってフィンブル王国を取り戻す。スコルピオさえ討てば、地上は俺たちの物だ」


 反対はなかった。罠とわかっているなら力をもって罠ごと叩き潰すのみ、俺たちはあえてスコルピオの誘いに乗ることに決めた。

 少しでも無血で地上を取り戻したかったからだ。


 決着を付けよう、サウスを巡っての戦いに。

 アンタが夢ではなく、現実に目を向けたというならば、雌雄を決するのみだ。


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