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24-4 もう1つの前日譚 天使フィンに起きた異変

・フィン


 私はティルフィン、パパとママたちにそう名付けられた。

 種族は天使、私とユランママだけが空を飛べる。


 でも、本当の私は誰……?

 最近、私は私の中に、もう1人の私がいることに気づいてしまった……。

 無邪気なフィン、正直じゃなくなっちゃった私とはまた別の、もう1人の私が私の中から世界を見ている……。


 その子が私を急かすの。

 フィンにはやらなければならないことがあるって、私を焦らせる。

 私は何か理由があってここにいる。だけどそれが思い出せない……。


「何だフィンか……。クククッ、どうした、最近どうも様子がおかしいようだが……皆気づかぬがな」

「ユランママ、起きてたのね。うん、あのね、ユランママに教えて欲しいことがあるの……」


 ユランママの寝室を私は訪れた。

 私はユランについて、なぜか複数の感情があることにも気づいている。

 私という卵を抱いて育ててくれた母親としてのユランママと、それとは別のユラン。


「ねぇ、ママ、私は誰……?」

「フフフ……何を言うかと思えば、我が輩には天使以外の何者にも見えぬぞ」


「ちゃんと聞いて! みんなの前では子供のふりをしているけど、私はもう心まで大人になってきているの……。天使って、そういうもの……?」

「いや……そなたは例外だな」


 ユランママは私の変化に驚かなかった。

 子供が背伸びで言っているんだと、普通は思うだろうけどちゃんと受け止めてくれた。


「天使はサマエルの操り人形、本来は人形操者無しでは動かん。愛玩用の天使には、そもそも獣なみの知能しかない。そなたは特殊だ」


 ユランママは少し前からどんどん大きくなっている。

 今は大型の犬くらいまであった。これ以上大きくなったら家を改造しなきゃいけなくなる。


「それ、みんなの話を盗み聞きしてたから、もう聞いてる」

「くくくっ、わかるぞ。翼は便利なものよな、人のプライベートなど簡単に破れてしまう、恐ろしいものよ」


「私はもう大人、だからね、思ったのユランママ……。私はきっと、サマエルに作られた天使じゃない。別の誰か(・・・・)に、作られたんじゃないかな……」


 私の言葉にユランが態度を変えた。

 子供に向けるものではなく、ユランの本当の人柄が現れていた。


「……ほぅ、だとすれば、なるほどな。その可能性については我が輩も考えていなかったな。それなら見当が付く……」

「何か知ってるの?! ママ、教えて!」


「すまん、それは過去の誓約に抵触してしまう。悪いが言えんな……」

「どうして……!?」


 子供っぽかったかもしれない、ユランママが笑った。

 大きな身をもたげて背筋を伸ばし、それからわざわざ私と同じ目線の高さにしてくれた。


「そういう呪いをかけられたのだ……。だがきっと推測は合っているぞ、そなたがサマエルの影響をいまだに受けていないということは、別の者に生み出されたのだろうよ」

「サマエル以外に天使を作れる人がいるの……? なら、ユランママは……?」


「我には出来ん、我は……我は外様だ」


 ユランママはそれ以上教えてはくれなかった。

 だけどこれってどういうことだろう。

 まるで、サマエルみたいな絶対の神様が、他にももっといたかのように聞こえてくる……。

 絶対最強の神様サマエル、それと同じくらい偉いのがいたってことになってしまう。


 もどかしい。頭の芯がかすみがかってる感覚、それがずっと晴れない。

 私の頭なのに、私が接触できない部分がある……。

 私は何か理由があってここにいる、今すぐこの頭のもやを取り払って、何かをしなきゃいけない気がした……。

 だけどそれがわからない、だから焦る、どうしたらいいんだろう、私……。


 ・


「あ、フィンちゃんそこにいたのね。晩ご飯の仕込み手伝ってくれるかしら?」

「うん、いいよパフェママ。今日はパパ、帰ってくるんだよね……?」


「その予定だけど……アウサルくんって仕事に熱中すると周りが見えなくなる人だから、どうかしら。……そこは期待しないで待ちましょ」

「うん……」


 フィンはもう大人、パパとママを守るためにもっとフィンに出来ることがしたい。

 パパとママを助けてエルキアを倒す、それはフィンの焦る心が正しいと言っているから。


「サマエル、貴様の塗り替えた神話は、いずれ崩れ落ちるかもしれんぞ……クククッ。まさか当時の天使が、生き延びていたとはな……」


 ごめん、聞こえてるよ、ユランママ。


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