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22-10 死闘の地底で進める地味極まらんが戦況を左右させる戦い

 それからいくばくかの時間が流れた。

 地上ではきっと熱い戦いが繰り広げられているのだろう。

 だがな、それに反してここ地底は地味だ。


 少し前のことを話そう。

 ユランの乗り心地と速度は素晴らしいものがあった。

 主戦場たる今現在の地上部とはあえて距離をおいて着陸し、そこから地底を掘っての接近をはかった。


 ご想像の通りユランは巨大化を維持できなくなり、元の中型犬サイズに戻ってしまったがな。

 誘導という目的には、むしろそっちの姿の方が合っている。


 俺はユランの指揮に従って穴を掘った。

 ある程度進んでからは地表に近い地層まで上り、敵兵約50体がいる戦場に陥落を仕込む作業に四苦八苦した。


 動かない相手や、大規模に固まって動く大軍ならば陥れやすい。

 ところが今回の敵は50ばかしの超重装歩兵だという。


 そいつらがワルトワース軍を殲滅しながら進軍を続けるのだ。

 異界の言葉を借りよう、この作戦はベリーハードだ。しかし困難だろうと必ず実現しなくてはならん。


(くぅ……すまんアウサル、また移動された、悪いが作り直しだ……)

「謝らなくてもいい、ラジールの作戦だ、こんなもの元々からムチャクチャなのだ」


(うむ、しかしそれはそれだけ、我が輩たちが期待されているということだ。それに朗報だぞ、もうすぐラジールたちが包囲の穴の空いた敵部隊側面を突く、先回りして新しい罠を仕込むぞ!)


 ここからが本番、これまでは予行演習だったと思うことにしよう。

 ラジールのことだ、神代の時代の超兵器を何体か倒してしまってもおかしくない。


「わかった、なかなか難しいものだな。しかしユラン、俺とアンタの相性は戦術面で見たところ理想的なものがあるようだ。アンタがいなけりゃ、これは成立しない作戦だ」

(なっ、何を言い出すバカ者っ! 余計なこと喋ってないでっ、仕事を進めろっ仕事を!)


「それはちゃんとやっている」


 万一友軍が踏めば状況がこじれる。

 一度トンネルの深度を深め、可能な限りのハイペースで穴を掘り先回りする。

 緑の光放つオーブがユランの微調整に絶えず軌跡を動かしていた。

 それがやがてほぼ俺の真上へと変化していった。


「ユラン、もうじきアンタの足元だ」

(クククッ、ずいぶんと足の速いモグラだな。いいぞ、そこに陥落を掘れ! ただしいっておくがな、くれぐれも逃げ遅れるでないぞ!)


 ポイントにたどり着くと地表ギリギリまで地下を上った。

 言われた通りにそこへと陥落を作る。

 待避先の横穴に向けて支柱を3つだけ残し、アウサルという名のモグラ男は人間の身長2つ分もある落とし穴を完成させた。


 敵は超のつく重鎧、落ちればまずはい上がれない。

 その後は上から埋めて何もなかったことにしてしまえばいい。


(アウサル、来たぞ! 発動の準備は出来ているな!?)

「ああ、出来ているぞユラン、いつでもやれる」


 これは思っていた以上の命がけだ。

 当然だがスコップで固めたこの支柱を崩せば、鎧兵士と天井が落ちてくる。

 次の機会にこれをやるときは、安全な起爆方法を考えておかなければな……。

 しかしつくづく華のない地味な仕事だ。


(よし今だっ、悪夢の鎧を奈落に封ぜよアウサル! この地上にサマエルの悪意も、その遺産も必要ないのだ!! 目障りだっ、我が輩の前からアレを消せッアウサルッ!!)

「他でもないアンタの願いだ、1つ、2つ、3つ、崩れるぞ!!」


 俺は3つの支柱を破壊して駆け抜け、用意しておいた待避路に飛び込んだ。

 背中の向こう側でドサリと大地が落ち、ほんの一瞬だけだが人々の驚きの歓声が聞こえたような気がした。


 土砂が待避路にも流れ込んだ。

 まずい、思った以上の土砂がこっちに……なるほど、これがカッパの川流れというやつか。

 雨具を付けて川に入って、何をするつもりなのだろうな、異界の人間は。


 おまけに皿を頭に乗せて、キュウリをかじるのがあちらの文化らしい。


 ……わからん、謎だ。


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