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21-1 ルインスリーゼ・グノース・ウルゴス 1/2


前章のあらすじ


 アウサル、有角種の国スィールオーブより帰国する。

 帰国するなりグフェンの政務所に向かうと、今後の計画を練ることになった。

 次なる目標は[裏切り者の国ワルトワース]

 そこは50年前に反乱を起こした独裁者が恐怖政治で支配する、3つ目のライトエルフの国だった。


 ワルトワースの真意は読めない。

 宗主国のオルストア国以外には国交を持たず鎖国を続けている。

 そこでまずは経路となるトンネルを掘り、もしワルトワース政府に期待が出来ないならば、国民をこちら側に移民させるプランとなった。

 

群像劇:ラーズ少年の物語

 少年ラーズは生まれながらに期待されるザ・ヒーローだった。

 そこにアウサルらが現れて彼の世界が一変する。


 サウス奪還作戦まであと6ヶ月。

 ジョッシュの厳しい稽古を経て、ラーズは強く成長する。

 ザ・ヒーローの力は苦しくても立ち上がって仲間を守るためにある。


群像劇:ゼファーの物語

 ゼファーはゼルという有角種の指導者を元に作られた新しい有角種。

 やがてゼファーとゼルの間には軋轢が生まれ、ゼファーは有角種の栄光を取り戻すためにスィールオーブを飛び出す。

 その後グフェンとヴィト王と出会い、彼女なりの悪あがきが続いた。


 サウス奪還作戦まであと5ヶ月。

 ラーズ少年を鍛え上げ、ゼファーは弟子と認めた上で少年にお古の刀を託す。


群像劇:ジョッシュの物語

 ダレスと共にエルキアのエルザスの元にたどり着くと、相談をもちかけられた。

 続いて5ヶ月後の反乱のシミュレーションが始まる。


 エルキア王軍は独立したサウスを落とすことに全力をかける。そこで援軍を送れるようにエルザスの領地とサウスを繋げるトンネルをアウサルに造ってもらおう。

 ジョッシュがそう推測提案すると、エルザスはアウサルらを囮として使うと言い出す。

 嫌なら仲間を増やせ。


 ジョッシュはエルザスの冷たさに呆れながらも納得し、ア・ジールの仲間たちを信じることにした。


――――――――――――――――――――

 約束の国サンクランドとルインスリーゼ

――――――――――――――――――――


21-1 ルインスリーゼ・グノース・ウルゴス 1/2


 まさかとは思うが何かあったのだろうか。

 俺は地上ニブルヘル砦のあの円卓に呼び出された。

 約束の時間に合わせて地底よりはい上がると、そこにはあのグフェンの姿もあった。


 ……懐かしい光景だ。

 ア・ジールに落ち延びる前はここで、彼と何度も言葉を交わしたものだ。

 この場所を取り戻せて本当に良かった。今さらながらそんな感想を抱く。


「アウサル殿」

「待たせたな。――ルイゼ」


 時刻はもう夕方前だ。

 黄金色の美しい西日がルイゼを背中から照らしていた。

 わざわざ俺とグフェン双方を呼んだのには、やはり何か意味があるのか。


 この場所を選んだのもまた、彼女なりの意思表示なのか。

 思い返せばここは、ルイゼが俺たちの仲間になった場所でもあった。

 あの頃と比較すればこの子も成長したものだ。


「わざわざ来てくれてありがとうございます、アウサル様」

「何やらよっぽど大事な用件のようだが、まさかアウサルくんに……困ったイタズラをされているのかな」

「グフェン、冗談は止めてくれ。……冗談だよな?」


 ルイゼは俺たちのやり取りを笑いもしなければ、おろおろと仲裁しようともしなかった。

 ただ、金色の西日を背中に思い詰めていた。


「東を目指すそうですね」

「……ああ。ワルトワースという国に乗り込み、どうにかしようと考えている」


 砦の東側は深い森だ。

 ルイゼがその空の向こう側に広がる群青色の空を決意の混じった瞳で見た。


「なら……ボクを途中のサンクランドに置いていって下さい。ボクが、サンクランド王を説得してみせます」


 するとグフェンの顔からかすかな笑みが消えていた。

 ただの田舎貴族の娘とルイゼは言っていたが、それはもうあり得ない。


「味方は少しでも多い方がいいです。ボクはフィンを守りたい、ラーズだって心配です……。だから、今自分が出来ることをしたいんです」


 気むずかしくグフェンがルイゼを見つめる。一歩詰め寄った。


「ルイゼくん……それで本当にいいのか? それを行ってしまうと、君はこれまでとは異なる立場に立つことになる」

「構いません、もう覚悟は出来ているんです。だから……どうか聞いて下さい、ボクの正体を……。みんなが覚悟を決めた、ラーズでさえ、ならボクだってしなきゃいけない」


 そこにいるルイゼは俺の知る世話焼きな少女じゃなかった。

 どちらかという貴族の気品を持つ、強い意思を持つご令嬢だった。

 彼女の本当の立場からすると、サンクランドへの使者という役目を果たさなければならないという。


「ならば聞かせてくれ。ルイゼくん、本当の君はどこから来たんだい?」

「ボクは……」


 決意を尊重し、グフェンがやさしく問いかけた。

 ところが続きの言葉が出てこない。ルイゼは言葉を詰まらせて苦しそうに胸を抱いた。


「正体がどうだろうとルイゼはルイゼだ、別人に変わるわけではない。……むしろ素性がわかった方がスッキリとして付き合いやすくなるかもしれんな」

「ふふ……それはあるかもしれないな。ルイゼくん、君も俺のかわいい子の1人だ、安心してくれたまえ」

「グフェン様……アウサル様……」


 まだ10歳だ、いやもうじき11歳になるとも聞いた。

 どちらにしろまだ子供だ、ルイゼは感激したのか瞳をうるませた。


「ボクは……いいえ、私は……」


 ほどなくして覚悟がついたのだろう、己の胸に片手を当ててルイゼは真剣な眼差しで、少しだけ唇を震わせながらも言った。


「現エルキア王の姪、ルインスリーゼ・グノース・ウルゴス。皆さんの敵、エルキアの第6王位継承者です……」


 身分を隠したお姫様か、まるで異界の本の世界だ。

 ルインスリーゼ姫は無理をした笑顔であふれる涙を浮かべ、本当の自分は憎むべき敵なのだと真実をさらけ出した。


「そうか、よく明かしてくれたなルイゼくん」

「ごめんなさい、グフェン様……騙す気はなかったんです……」


 グフェンは知っていたようだ。

 国政を担い、諜報部隊を束ねているのだからそれも当然といえば当然だろう。

 俺も予想はしていた。


 兄エルザスは反乱計画の首謀者だ。

 王を倒す旗印になれるのは特殊な例を抜けば王族だけ、だから王族の末席ダレスともルイゼは面識があった。

 最初からわかっていた、簡単な真実だ。


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