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20-4 二君を持つ皮肉屋と妾の息子、古巣に戻る 1/2

「いやぁぁ~久しぶりだねぇジョッシュ。……まさかそっちのオマケが付いてくるとは思わなかったけど」


 とある旅籠の2階客室を借り切って、私とダレス様はエルザスと再会することになりました。

 ええ、この黒い長髪のように性格もうざったらしい男が、エルキア反乱計画の首謀者エルザスです。

 性格的に合わない自覚があるので、目はけして合わせないでおきました。


「こっちが親切心で、あちら側の戦力が経るのを覚悟でダレス様を連れてきてあげたというのに……貴方という人には困ったものです」


 どうしてこの人はこうねじくれ曲がってるのでしょうね。

 エルザスに好意をそのまま口に出来る素直さがあれば、それがそのまま人徳なったことでしょうに。


「おいジョッシュ、やっぱ帰ろうぜ」

「ええ、それもいいかもしれませんね」


 ダレス様は不機嫌にそう私に持ちかけました。

 本気で帰る気はないんでしょうけどね、お互いに帰りたい気持ちは十二分にありました。


「おいおい待ってくれよダレスぅ~。まあ帰りたいなら帰ってもいいけど、戦力としてもう数えていたしぃ? 今さらそう言われてもこっちは困るんだけどねぇぇ~?」

「はぁぁぁぁ……」


 ダレス様が深くため息を吐かれるのも無理ありません。

 けれどダレス様はエルザスと違って大人です。

 イスを引いて漆黒の髪を持つ男と向かい合いました。


「アウサルの旦那の隣の方が、よっぽど楽しい職場だったぜ……。今となりゃブロンゾやらラジールとバカやるのも楽しかったしよ……。あと半年はこのバカ面を見てなきゃいけねぇのかよ……」

「心中お察しいたしますダレス様」


 私も着席するとしましょう。

 はぁ、私もため息が出てしまうくらいにア・ジールが恋しいです。

 フィンちゃんとの別れは本当に心が痛みました。ラーズくんと仲良くしてくれてるといいのですが……まあ無理でしょう。


「おいエルザス、シルバとスケは……?」

「あっちこっち飛んでもらってるよ。君らが来ることはわかっていたし、早速今日から働いてもらうからね」


 シルバとスケ、正しい本名があるそうなのですが覚えてません。

 彼らはエルザス様の家の先代から続く家臣にあたります。


「つくづくア・ジールが恋しくなりますねダレス様」

「まったくだわ……」

「そうかやる気いっぱいなようで何よりだよ。実はちょうど相談相手を切らしていてね、ジョッシュの意見を聞かせてくれ。ダレス、お前はおまけな」


 人の顔色を気にしない、あえて無視するというのはこの人独特の性質です。

 良く言えばマイペース、悪く言わなくとも自分勝手の人の話を聞かない男でした。


「おやおや、ダレス様は嫌な従兄弟をお持ちですね」

「止めろよ。俺ぁ本気で一族の恥だと……前までは思ってたんだぜエルザス。まあ俺もふがいねぇ立場だったからよ、強くは言えん。……今はそれなりに評価している、これ以上俺の評価を下げさせるなよエルザス」


 エルザスに皮肉は効かない。

 ニコリと上機嫌な笑顔が生まれ、相談を聞いてくれと身を乗り出してきた。


「それは嬉しいなぁ~、じゃぁ相談なんだけどさー」


 それから1枚の紙を机の上に取り出す。

 名前が箇条書きされたリストだ。どれも見覚えがある、それはエルキア諸侯たちの名だった。

 名前の隣には[×][△][○][◎]あるいは、未記載の空白があった。


「コイツとコイツとコイツ、どう思う?」


 呆れた男です。

 それは私への相談という建前を使った、ダレス様への相談でした。

 3名のエルキア諸侯の名を指さし、エルザス様はダレス様に目を向けていました。


「そうだな……」


 ダレス様が伸びた無精ひげを撫でて考え込みました。

 私は口をはさまないことにしましょう。人物評については直接本人を知るダレス様の方が適任です。


「ベアード侯爵には昔、菓子を貰ったっけな。社交儀礼を教わったこともある。ま、頑固で保守的だが信用出来ると思うぜ。ただよ、今となっちゃ隠居しちまってもおかしくねぇ老齢だ。世継ぎの息子次第ってところだぜ」


 ええ私もベアード様は信用できると思います。ただここで付け加えるならば……。


「ああそんなこともありましたね。聞いて下さいよ、ダレス様ったら、私のためにそのお菓子を半分残しておいてくれたんですよ。かわいいでしょ、こんなに雄々しいなりだというのに」

「茶化すなジョッシュ、お前とエルザスの両方が俺をおちょくってたら、肝心のお話が進まねぇってもんだろが!」

 

 そうでした、フフフ、ダレス様の身になってみれば大変でしょうね。

 私も性格に癖があることは自覚しています。しかしエルザス様と同列扱いだけは不快です。


「ならダレスの初仕事はこれにしよう。ベアード侯爵の様子見、問題がなさそうなら勧誘と説得を頼む。……それとジョッシュ、君は同行しちゃいけないよ。俺の副官、いや軍師として常に隣に控えていてくれ」

「はいはい、仰せのままに」


 勝手にどんどん決める人です。

 私の力なんて大したものではないですが、まあちょうどいいでしょう。

 エルザスという男の器をはかり直すチャンスと思いましょう。


「ダレス様、パンツの替えはちゃんと持っていくのですよ? 換えがないと、洗濯が出来ませんから」

「うるせぇっ、男がいちいち洗濯のことなんか気にしてられっかよ!」


 そうやって横着すると、他のあらゆることにも横着が始まるんですよダレス様。

 生まれが貧しいあまりにおおらかに育ってしまったものです。


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