第2章 25話 「夕暮れ」
私はここにいるよ
だから見つけて…
もしレギンさんに、ルーフェンさんを紹介したら…?
私は想像した…。
ルーフェンさん、いつもぶっきらぼうで、すまし顔だから…。
でもレギンさん、見かけと違って結構肉食系だよね…。
『俺は女には興味がないんだ…。悪いな…。』
『あら?でも私は興味がありますわ。ぜひ今度、私の部屋にいらしてくださいね。』
『…………。はぁ…。困った……。ホープ、なんとかしてくれ。』
ぐいぐい押すレギンさんに、困るルーフェンさん…。
ふふっ…。こういうやり取りがありそう。
「どう?紹介してくださらない?」
レギンさんが今度は真面目に聞いてきた。
その声で現実に戻る。
(……ダメだ…、絶対ルーフェンさんに、紹介したい女の人がいる、なんて言えないよ…。そんなの気まずい。)
なんて答えようか…。
「レギンさんにルーフェンさんはすごく年上じゃないですか?たぶんひとまわり以上は年上だと……」
「いいえ、そんなの関係ないですわ?ホープ君、愛の前に年齢なんて関係ないのよ」
「う、うぐぐ……。……ご、ごめんなさい!えっと、ルーフェンさんは………。お、女の人には興味がないからっ!」
「えっ!?女の人には!?」
レギンさんは大きな声でそう言うと、黙りこんで下を向いた。
「あら、そうだったの…。恋愛対象が違うのね…。残念だわ…。」
すごく分かりやすく落ち込むレギンさん。
(あれ…?レギンさん、なんかとんでもない勘違いをしているのではないか?)
私はすごく焦る。
変な冷や汗が出てくる。
(えっと、なんて、言い直そう…。)
「レギ…」
「えっ………?!大変っ!!大雪だわっ!」
間違いを訂正しようと、言いかけたとき
レギンさんが突然に慌てだした。
同時に話し出したので、私の声はかき消された。
その慌て方に私はビックリした。
後ろにある窓の外を見ると、かなりの大雪だ…。
「そ、そんなに慌てて、どうしたんですか?」
「明日の戦祭りっ!雪を被ると傷んじゃう祭具が外にあるっの!急いで中にいれなくちゃ!」
彼女は窓の方を向いて椅子から立ち上がる。
すると一旦、彼女は深呼吸し、落ち着く。
そして私を見た。
「どう?お話面白かったかしら……??」
「そうそう、信者の私が言うのもあれだけど、まぁ、しょせん作り話だから…。おかしな部分もあったかもしれないけど、変に考え込まないでね。」
「ホープ君すごく純粋そうだから。」
「いえ!とんでもないです。」
「ふふっ。……話はこれくらいでいいかしら?また何かあればいつでもいらして。聞いてくれてありがとう…。」
「こちらこそ、ありがとうございました…。」
私は椅子に座りながらお辞儀をした。
彼女は、私の感謝の言葉にニッコリうなずく。
するとすぐ、走ってどこかへ行ってしまった…。
レギンさんって本当に良い人だけど、面白い人だ…。
でも、私もあんなふうに明るくなりたいと思った。
教会の外は驚くほど寒かった。
雪が強さを増しているようだ。
強い風が吹くたび、私は顔を歪める。
(早く宿に戻ろう。そろそろ夕方になる頃だし。)
今まですっかり忘れていたが、夕方には宿に戻れと言われていた。
教会を出てしばらく歩くと、多くのお店が立ち並ぶ通りに出た。
ほとんどのお店が既に閉店している。
空いているのは、酒場か食堂くらいだ。
(街のお店ってすぐ閉まるんだ…。)
そういえば、ルーフェンさんは夜に演奏すると言っていた。
もしかして演奏するのって酒場かな?
すごく楽しみだ。
早く聴きたい。
(そうだ、楽器は何を使うんだろう…。もしかして歌ったりするのかな?)
ルーフェンさんが、歌う?
どんな感じなんだろう…。
期待に胸を膨らませ、あれこれ考えながら早足で歩いていく。
街の人も早足で歩いていた。
「ホープ。」
後ろから声を掛けられる。
すぐに分かった。
この低く落ち着く声…。
「ルーフェンさん。」