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精霊の湖  作者: 桜木ゆず
第2章 世界の掟

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第2章 20話 「手袋」

あなたの声が聴きたいの…。

その柔らかな声を、私に聴かせて

 


 私たちは教会を出て、ゆっくりと昼食を終えた後、服屋を探していた。



「この店でいいか?」

 ルーフェンが前方にある小さな店を指さした。少し古そうな、さびれたお店だ。

 でも、別に気にしない。


「はい。」



 ルーフェンが先に入ってドアを開ける。

 するとカランと鈴が鳴った。


 中に入ると、70歳くらいだろうか?白髪の老婆がいた。

 老婆は窓を掃除しているようだ。


 鈴の音に気づいたのか、こちらを向く。

「ようこそ、いらっしゃいまし。」



「ばあさん、悪いがこの子の服を適当に頼む。」

 そう言いながら、ルーフェンは私の頭に手を置く。


 老婆は黙って、私をジロッと見る。私は緊張し唾を飲み込んだ。



 すると老婆は首をかしげた。

「…ふむ、そちらの娘さんは、なぜ少年のような格好を?新しい服も、今と同じようなものでよろしいか?それとももう少し女の子らしい服にしましょうかい?」



「えっ…?」

 ルーフェンは驚いて固まった。


(っ…!)

 女だとバレてしまった…。




 私は彼の顔を恥ずかしくて、直視できなかった。




「ご、ごめんなさい。」

 私は小さく謝った。



「……ホープ…、そうだったのか…。」


「勘違いしてる時は言ってくれよ…。」

 ルーフェンは頭を抱え込む。



「ごめんなさい…。」

 再び謝る。



(あぁ、穴があったら入りたい。)

 私は申し訳ないというよりも、なんだか恥ずかしかった。




「ホープ、好きな服選んでこい。待っててやるから。」

 彼はため息をついた後、そう言った。


「……はい。」


「ばあさん、この子に一式、適当に頼む。値段の上限は5000タウサ程で頼む」

 そう一言告げ、ルーフェンは、店の外に出ていった。




「あれまぁ。あたしゃ悪いこと言ってしまったかい?」

 老婆は呆然と、私を見ていた。


「いいえ。これで良かったんです。」

 私は首を横に振る。


(いつかはバレたんだから…。これで良かったんだ。)







「ルーフェンさん、決まりました。」

 店の外で待っていたルーフェンを呼ぶ。



 結局、私は今と同じで、男の子が着るような服を選んだ。


「ばあさん、いくらだ?」


「全部で4500タウサだよ。袋に詰めておいたからね。」

 老婆はその袋を、重そうにカウンターの上に置く。


「ああ。悪いな。ありがとう。」

 そう言うと、彼は私をチラッと見た。


「そうだ、この子に手袋を頼む。買ってないよな?」

 私に確認する。


「…ええ。」

(手袋?)



「これだけ買ってくれたんだい。手袋はサービスするよ。」

 老婆が嬉しそうに言った。








 私たちは店を出て、宿に向かっていた。

 気がつくと日暮れだった。



「怒ってますか?」

 私は顔色をうかがう。


「いや、それより勘違いしていて、悪かったな。」

 恥ずかしそうに、ルーフェンは頭を掻いた。


(怒ってなさそう…。良かった。)

 私は胸を撫で下ろす。



「……そうだ、さっきの手袋。外に出るときは着けておけ。お前、左手に火傷の痕があるだろ。」


(えっ…。)

 私はカラスの火傷の痕を撫でる。


 いつの間に見たんだろうか?

 私は傷痕が嫌で、いつも袖で隠していたのに…。



 かなり観察力の鋭い人だと思った。



「それ、奴隷に付ける火傷痕だろ?」



「あまり他人には、見せたくないものだろう?俺もな脚を……。」


「あし?」


「いや、まぁ……嫌なものは隠してしまえばいいんだ。」

 とても優しい声で言ってくれた…。


 その優しさで、胸がいっぱいになる。



「……ありがとうございます。」

 目頭が熱くなった。



 私は顔を見られないよう、下を向いた…。



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