第2章 19話 「瞳ノ色」
(すっごくきれい…!)
私たちは祭りに参加するため、朝食を終えた後、教会に来ていた。
教会の中は、紫を基調としていて、厳かな雰囲気だった。
そして美しい装飾品がたくさんあった。
(なんだか私って場違いだな…。)
みすぼらしい自分にがっかりする。
「戦祭りに参加したいんだが。申し込みはここでいいのか?」
ルーフェンは、受付の赤毛の女の人に話しかけていた。
「あら、いい男…。」
女の人の口を開いた第一声が、それだった。
「………あ、えっと、ごめんなさい。参加したいのですね。これに名前を書いてくださる?」
女の人は我にかえり、受付の仕事をする。
「……ああ。」
「戦祭りの規則はこの紙に。必ずご覧になって下さいね。読み終えたら、ここにサインしてください。」
そう言いながら、赤毛の女の人は、ルーフェンに何枚か紙を渡していた。
教会の中は広かった。手続きをしている間に、私は周りを見渡す。
壁には絵が何枚か飾られていた。
(教会ってことは、神様の絵かな?)
「あら?あなた…。紫の瞳をしているのね。すごく珍しいわ。」
突然、赤毛の女性にそう言われてドキッとした。
「えっ…、は、はい…。」
「きれい…。精霊様もこんな瞳だったのかしら。」
赤毛の女の人はニッコリ笑って、首をかしげる。
「精霊様?」
「そう。神様に仕えていた精霊様。とても可哀想な精霊様。」
「それは一体…」
「書いたぞ。これでいいのか?」
私が質問する前に、ルーフェンが話に入ってきた。
女の人はサッと、ルーフェンに向き直る。
「ええ。ありがとうございます。では確かに、参加確認いたしましたわ。」
そう言うと女の人は、後ろに待っていた次の参加者を呼んだ。
(精霊の話、詳しく聞きたかったな…。)
すごく続きが気になる。
でもルーフェンは精霊にあまり詳しくないみたいだし…。
ルーフェンを見ると、一枚の紙を眺めていた。
(何が書いてあるんだろ…。)
私の視線に気づく。
「戦祭りの規則だ。字は読めるか?」
私がうなずくと、その紙を手渡された。
それには戦祭りの規則と、賞金が書かれていた。
賞金金額
・1位、5万タウサ
・2位、3万タウサ
・3位、1万タウサ
規則
・一対一でのトーナメント戦とする
・武器、魔法は禁止とする
・正々堂々と正面から戦うこと
・「参った」と進言するか、戦闘不能になればと負けとする
・審判には必ず従うこと
・精霊への感謝を持つこと
以上
武器は使わない?
ますます、ただのケンカに思える…。
剣を使うルーフェンは、大丈夫だろうか?
「あの…。武器は使えないって…。」
「心配そうな顔をするな。俺は剣術だけじゃなく、体術も武術も得意だ。」
「参加する以上は、優勝してやるさ。」
自信満々に言う。
そして、すっかり忘れていたけど、私は魔法が使えたんだった…。
この文を読んでいて思い出した。
魔法が使えることを、この人に言っても大丈夫だろうか?
「ルーフェンさんは魔法を使えるのですか?」
「いいや、残念ながら。使えれば色々と便利なんだがな。まぁ嘆いても仕方ない。」
その時、大きな声が教会に響く。
「師匠なら戦祭りで絶対優勝できるさ!」
少年がキラキラした目で、師匠と呼んだ男を見ていた。
師匠と呼ばれた男は、少年を注意した。
「おいサイガ、教会では静かにしろよ。」
しかし、男は嬉しそうに微笑んでいる。
(なんだか師弟関係っていいな…。)
私は羨ましく思った。
私はルーフェンを見る。
ルーフェンは、少年と男を見ながら呟いた。
「師匠…か。」
まるで小さくため息をつくように…。
なぜだろう。
その声に、悲しみが込もっているように感じた。