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The world has died  作者: トウイ小秋大福
7/27

仲間割れ3/2

ミサキは左右に別れている道の右に進んだ。ミサキが今向かっている場所は漂流者でも住むことの出来る国で、出来るだけ情報収集をするために向かっていた。晴れている中、木が立ち並ぶ道を歩き続けると、徐々に木の数は減っていき、ついにはアスファルトの道路しかない荒野になっていた。

特に何もないアスファルトの道路を歩いていると、大きな看板があった。少年はさっそく近づいて見ると、その看板は古く、ところどころ薄れて読めないところもあったがなんとか読み取れた。

「この先×××、盆地×囲××た町が××ます」

この一文を読むかぎり、町がこの先にあるのはほぼ確実だった。ミサキは進むべき方向に向き直ると、再度、歩き始めた。


歩くこと約数時間、ミサキの目の前にたくさんの山があった。アスファルトの道路は一つの山に続き、山へ続く真っ直ぐな道の先は霞んでよく見えない。ミサキは思わず、

「....長いな」

と呟いたが答えてくる人は、当然の事ながらいない。ミサキはとりあえず延々と続く、この坂道を進んでみることにした。

木々に挟まれた道をしばらく歩くと、

「長い道をご苦労様でした。ぜひ、この町でゆっくりしていってい下さい」

そう書かれた看板が(つる)に巻き付かれながらも鎮座していた。ミサキは、やっとついたと思いながらもまだ見ぬ町にわくわくしていた、

(活気がある、大きな町だったら万々歳なんだけど)

そんなことを考えながらも脚を進めると____


死んだ町が、眼下に広がっていた。


数十年前に滅んだのか、建物はボロボロで、人間の骨のようなものが町のそこら(ぢゅう)に転がっていた。

「........。」

ミサキはしばらくその風景を見ていると、

「......まじか」

そう呟いた。


ミサキはバックパックを背中から降ろし、スナイパーライフルを取り出すと、腹這(はらば)いになってスナイパーライフルのスコープを覗きながら、町の様子を詳しく確認する。

町の中心には、大きなアスファルトの道路があり、道路の周りにたくさんの建物があった。町の出口はスコープで見ても霞んで見え、歩いていくにはしばらくかかりそうだった。

(....この町を出るのは明日(あした)にしよう、今日の間は建物の中に居よう。....ん?)

ミサキが今後の予定を決めていると、建物の陰から何かでてきた。

スコープでよくよく見てみると、ゾンビ犬がうろうろしているのがスコープに(うつ)った。

ゾンビ犬。その名の通り、犬のゾンビなのだが、人間のゾンビとは少し違う。5箇所以上噛まれるとウィルス感染し、24時間以内に対処しないとゾンビ化してしまう。だが、ゾンビ犬の恐ろしいところはゾンビ感染ではなく、狂犬病である。狂犬病は、呼吸困難や全身の筋肉の痙攣、恐水症状(水を(こわ)がるようになること)などになったりする。狂犬病のワクチンを打たないかぎり、狂犬病に感染するとほぼ助かることはないが、ワクチンを打っておけば狂犬病に感染することはない。ミサキは旅に出る前から狂犬病のワクチンを打っておいたので狂犬病にかかることはないが、ゾンビ犬とは戦わないのが一番だろう。

ミサキはゾンビ犬から視点をはずすと、今晩の宿を探す。すると、屋根が蒲鉾(かまぼこ)状の建物を見つけた。体育館である。

体育館は町の中央ぐらいにあり、学校の体育館ではなく民間人達が共有して使っていた体育館だった。ミサキはスナイパーライフルをバックパックにもどすと、バックパックを背負って、右脚のホルスターから拳銃を抜き、安全装置を外してサンプレッサー弾薬を装填する。

最後にサンプレッサーを着けると、体育館に向かった。

体育館まで距離は約3.5キロ、ミサキはとりあえず端末をとりだし、探知機を起動する。中央と円の辺をつなぐ線が一周するが、何も表示されずにまた線は周り始めた。ミサキは一応警戒しながら行くが、特に何もなく体育館に着くことができた。体育館の外側には階段があり、そこからギャラリーのための二階に入ることが出来るようだった。二階に入る扉の脇には屋上に続く梯子(はしご)があり、メッキ(錆びないようにすること)してあるのか錆びている様子はなかった。体育館に入るための扉は一つしかなく、その扉は南京錠(なんきんじょう)が掛けてあったが、ミサキがグッとひねると錆びていたのか、パキンッと音をたてて壊れた。

両開きのスライドドアを開けて中に入るとサッカーコートほどの空間があり、床には缶詰めの(から)やビンなどのゴミが捨ててあった。ステージや管理室などはなく、道具室がポツンとあるだけで、そこ以外は部屋はなかった。ミサキはゴミがないスペースをさがしてそこに四角いテントを建てると、中に入って大分(だいぶ)早い休憩を始めた。

その後、ミサキはストレッチや読書で時間を潰し、外が薄暗くなってきた頃に携帯食糧で食事を済ませると、寝袋に入ってすぐに寝た。


太陽が出始めて一時間ほど経ったときに、ミサキは銃の発砲音に起こされた。

(なんで発砲音なんかが....)

ミサキは寝ぼけた頭で考えると、とりあえず様子を見るためにサンプレッサーを着けたスナイパーライフルを持って体育館の屋上に向かった。

梯子(はしご)を登りきり、発砲音の聞こえた方を見てみると、町の出口に向かって走っている二人の若い男が見えた。二人の手には拳銃が握られ、時々振り返っては何かを撃っているようだった。

(?、何に向けてそんなに撃ってるんだろ?)

ミサキは銃を向けてい方向に目を向けると、ゾンビ犬数匹が男二人を追っていた。

(すぐに追いつかれるな、どっちかが「餌」になれば一人は助かるだろうけど)

ミサキがそう思った矢先、走っていた男二人の(うち)一人が相方の脚を引っかけ、相方は見事に()けた。()けた男はなにかをわめき散らしていたがゾンビ犬に追いつかれ、捕食され始めた。ミサキはそれを見て、腹這(はらば)いになってスナイパーライフルを構えるとゾンビ犬達がいる方向に狙いをつける、狙いはゾンビ犬ではなく生きたまま捕食されている男だった。ミサキの今までの経験だと、あの男は放っておいても苦しんで死ぬか、助けても失血死してしまうか、どちらかだった。せめて(らく)に殺してやろう、というのがミサキに出来るせめてもの「救済」だった。バイポッド(支柱のようなもの)を立てて標準(ひょうじゅん)を安定させ、男の胸に向かって狙いをつける。そして、息を軽く吸って呼吸を止めると、引き金を引いた。発砲音はプスッと間抜けな音だったが、しっかりと男の胸に当たったていた。男が絶命したのを確認すると、もう一人の方の男をスナイパーライフルのスコープでどういう状況か観察する。荷物はナイフ一本だけで、追いかけてきたゾンビ犬とは別のゾンビ犬に噛まれたのか、さっきまで押さえていなかった右腕を左手で押さえ、脚や腹から血を出していた(さっきまで握っていた拳銃も落としたのか、もっていなかった)、男と町の出口はあと数十メートル離れていたが、なんの問題もなく町から出ていった。

ミサキは男が町から出ていくまでスコープを覗いていたが、出ていくのを確認するとスナイパーライフルを持って体育館に戻った。テントと寝袋を急いで片付け、スナイパーライフルをバックパックになおすと、町から出ていくために小走りで出口にむかった、今ならミサキが撃った男が「餌」としての注目をあびているため、ほぼ安全に出られるからである。


ミサキはゾンビ犬と一度も遭遇することもなく町から出ると、漂流者も住める国を目指して歩き始めた。




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