仲間割れ3/1
少年は町に戻ると、迎えてくれたのは町の人のさまざまな視線だった。それもそうだろう、服と手に血をベッタリと付けた人間が町の出口から入ってくれば変な目で見るのも当然である。険悪、不信、好奇心、尊敬、と色んな目線で見られている当の本人は全く気にしている様子はなかった。少年が雑貨屋に向かっていると、いきなり7歳ぐらいの男の子が少年の目の前に飛び出してきて、
「ねぇねぇ!お兄ちゃんって、「ひとごろし」なの?」
「それとも、「さいこぱす」って言う人?」
と少年に目をキラキラさせて聞いてきた。
周りの大人はギョッとした、少年が怒って子どもに手を出すと思ったからだ。だが、少年は怒るわけでも悲しい顔をするわけでもなく、子どもに視線をあわせるようにしゃがみこむと、
「ちがうよー、あっ、でも「人殺し」は間違ってないかも。...そんな事より、この町の宿の激辛パスタってどのぐらいおいしいの?」
そんな事を言った。
少年は雑貨屋に着くとドアを開けて中に入る、店内の商品棚は川の字に並べてあり、棚の中は整頓されていた。カウンターに向かい、会計をしていた依頼者に依頼達成を報告すると奥の部屋に案内された。
少年と会計の男は部屋に入ると、中央に置いてある椅子に机を挟むような形で座る。会計の男は結果が気になるのか、
「それじゃあ、ゾンビの首を見せめてもらおうか」
と、緊張した顔で言ってきた。少年は何ものっていない机の上に袋を置き、紐を解くと会計の男に袋の中身を見せる。最初、会計の男はゾンビの首を見て顔をしかめたが数秒後に驚いた顔をした、それを見て少年が、どうしたんですか?と聞くと一つの首を指差して、
「こいつ、3日前に来た漂流者の1人じゃないか!」
そんな事を言った。
少年は首をかしげて、
「えっと、3日前に来た人達っていうのは?」
と訊くと、会計の男から答えが返ってくる
「3日前に来たんだよ。若い3人組で、見るからに初めて旅に出た格好で、旅の出発一日目記念だとか言って、酒を5本買っていって夕方には町を出ていった漂流者が。」
少年は3人組の漂流者の話を聴くと、一つの仮説を考えた。考えた所で、そんな...なんで...と呟いていた会計の男は表情を切り返すと、
「死んでしまった漂流者は気がかりだが、とりあえず報酬を受け取ってくれ。スナイパーライフルの説明書はこれだ」
そう言って会計の男は少年に依頼達成報酬である携帯食糧と弾薬、少しの金とスナイパーライフルとその説明書を渡してきた。
少年は雑貨屋を出て、宿に戻ると今回の報酬をバックパックに入れて、予備の服を取り出す。そして着けていた装備品をはずすと、予備の服とナイフの入った鞘を持って風呂場に向かった。風呂場で、着ていた服とナイフとナイフを入れていた鞘を洗うと、次は自分の身体を洗う。自分の身体を洗いながら少年は雑貨屋で考えた仮説を思い出す。
初めての旅で浮かれていた3人組は記念日として酒を買って、安全圏内であるこの町に留まることなく、夕方に町を出て行った。そして、町を出て進んで行くと道が別れていて偶々(たまたま)左の方を選び、サイロを見つけてそこに泊まることにした。近くにゾンビが近づいていることに気付かず、真夜中に呑気に焚き火を囲んで三人で仲良く酒を飲んで、酔っ払ったのだろう、扉を叩く音が聞こえて扉を叩いているのがゾンビとは気付かずに扉を開ける。そしてゾンビに侵入を許す。焦った3人組は必死に考えるが酔っているものだから冷静な判断が出来ない、結果、最悪の決断をしてしまった。
仲間の内の誰かを囮にするというものだ。
囮になったのはゾンビになったあの漂流者で、自分から進んで囮になったわけではないのだろう。脚に刺さっていたナイフがその証拠である。仲間の1人が羽交い締めにして、もう1人が囮役のナイフを奪ってそのナイフで囮役の太腿に突き立てる、これで立派なゾンビの「餌」の出来上がりである。律儀なことに囮役のバックパックから携帯食糧などを回収すると、そのまま囮を使って残る2人はゾンビから逃げ出した。そんな感じだろうか。
少年は風呂からあがると予め壁にかけてあったバスタオルを使って身体を拭き、予備の服に着替えると、洗った洗濯物とナイフを持ってベッドに向かう。ナイフは予備の鞘に入れてバックパックにしまうとかわりに長い紐と洗濯バサミを取り出す、取り出した紐を部屋の隅にくくりつけるともう片方の紐も部屋の隅にくくりつける。ピンと張ってあるロープに洗濯物を干していくと洗濯物のカーテンが出来上がった。
少年は洗濯物を干し終えると、ベッドに寝転びながら今さっき貰ったスナイパーライフルの説明書を読む。
銃名:DSR
全長:99センチ
重さ:5.5キログラム
ボルトアクション&セミオート
有効射程:普通の弾薬の場合1.5キロ
対物弾の場合2キロ
少年は読み終えるとまったりとした眠気に襲われ、そのまま少年は眠気に抗うことなく眠りに落ちていった。
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