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The world has died  作者: トウイ小秋大福
11/27

質問

ほのぼのとした()が照りつける部屋の中、ミサキと少女はあたふたしていた。少女は下着姿の自分の身を布団で隠し、ミサキは視線をウロウロとさせていた。

(や、やばい、目があった!まともに顔が見れない!ていうか、恥ずかしがっている場合じゃない、部屋の片付け中に考えておいたことをしないと)

ミサキは相手が下着姿なのを意識しないようにしながら、拳銃ホルスターから引き抜くと


「動くな!!」

そう言いながら少女に拳銃を突きつけた



「!?」

いきなり拳銃を突きつけられた少女は真っ赤な顔から一気に真っ青になり、ミサキの言う通りにピタリと動かなくなった。

ミサキは抵抗されなくって良かったと思いながら、

「君には今から四つの質問をする!拒否したり抵抗したりしたら、撃つ!怪しい答えをしても撃つ!」

出来るだけ威嚇に聞こえるように大きな声で言った。何故、ミサキがこんなことをするかというのは、この少女がマフユ モミジなのかという確証と、このキャンプ場でなにが起こったのかということを訊くためだった。


「1つ目!君がマフユ モミジ?もしそうなら、マフユ モミジが13歳の誕生日に貰ったものを答えて!」

「え、えっと....」

少女は明らかに困惑している。何故、そんなことを訊くのかと。ミサキがここまで質問の内容を細かくしたのは、本当に本人かどうかの判別をするためだった。そんな質問の意味を知ってか知らずか少女は、

「はい、そうです.....13歳の誕生日に貰ったものは真っ白な、ワンピース、です」

と、緊張した顔で答えた。確証を得たミサキは次の質問に移る

「2つ目!このキャンプ場に住んでいる人数は?」


ちなみに、この質問の返答が23だとしたら、相当にやばい、なぜなら


「私含めて、23、です」


このキャンプ場の生き残りはこの少女だけ、ということになるからである



「.......まじか」

少女が生き残っているということは、犯人は少女か、それ以外の人がキャンプ場の人を殺した後に少女に撃退されたかのどちらか、ということになる。

ミサキが思考を回していると、

「あ、あの」

と控え目な声が聴こえてきた。ミサキは出来るだけ不機嫌そうに聴こえるように、何?と訊くと、

「キャンプ場の、みんなは?みんな無事、なんだよ、ね?」

実に答えづらい質問がとんできた。

「・・・・・・・・」

ミサキがどう答えようかと押し黙っていると、少女の顔が徐々(じょじょ)にくもっていく。そして、自分の目で確かめに行くつもりなのか、ごそごそと動き始めたところで、

「動かないでッ!」

とミサキの静止がかかる。

だが、それでも少女は止まらず、ベッドから降りようと足を着けた瞬間、ミサキはマフユに向けてていた拳銃の、引き金を引いた。




「..........!」

マフユの動きが、止まる。

ミサキの撃った弾丸はマフユの頬ギリギリを通り、壁に穴を空けていた。


部屋の空気がさらに張り詰める


「マフユ、俺はもう一度言うぞ。動くな、余計なことを言うな、正確な答えを言え。3度目はないし、(つぎ)動こうとしたら本当に撃つから」

ミサキは驚いているマフユに忠告をすると、ベッドに戻って、と指示を出す。マフユはノロノロと動きながら元の場所に戻った。

その間も狙いをつけていたミサキは、それじゃあと言うと


「3つ目の質問、キャンプ場の住民全員を殺したのは、マフユ、(きみ)か?」


ミサキは、苦々しげに訊いた


「あ、え?な、何を言って.......」


マフユの顔に、焦りが混じり始める


「みんなが殺されたなんて、そんな.......」


ミサキの人差し指に、力が入る


「いいから、殺したか、殺してないか、答えて」


あくまで冷静に、静かに、問いただす


「......その、話が......本当なら、.....私じゃっ、私じゃないですっ!そんなっ、殺すわけっ、殺すわけ、無いじゃないですか......殺せるわけ.......無いじゃないですか.......」


マフユは最初は血を吐くように訴えていたが、しだいに声が小さくなっていき、ついに聞こえなくなった。

顔はうつ向き、黙ってしまった口からでてきたのは嗚咽だった。

「うっ、ぐすっ、うっ、うわああぁぁっ、うあああぁぁぁっ」

マフユは溜め込んでいたものを一気に吐き出すように泣き始めた。知り合いや家族を殺され、あまつさえ、銃を突きつけられて尋問される。


泣くのには十分だった


泣く姿はあまりにも哀れで、今にも道を踏み間違えそうに見えたミサキは、

「その、君に向かって銃を撃ったり、尋問した俺が言うのも何だけど。.....自殺とかはよくない

、よ?ほら、君にはまだ人生がいっぱいあるんだし、その、何て言えばいいんだろう」

しどろもどろながらも声をかけた。それでも泣いているのでミサキはどうしようと考えていると、

「___なんかしない」

と、泣きながらマフユが声を出した。

(・・・・しない?)

ミサキが不思議に思っていると、ミサキの心を読んだように、マフユは堂々と宣言する、


「自殺なんか、しないよ。だって母さんと約束したから」


泣きながらも、マフユは笑ってそう言った。太陽のような笑顔だった。





それからマフユは瞳の涙を手の甲で拭うと、ミサキに次の質問を促す。

呆気にとられていたミサキは、我に返ると構えていた拳銃をなおして次の質問をする。これ以上マフユに拳銃を突きつけるのは良心が痛んだ。


「最後の4つ目、君はこれからどうやって生きていくの?」

最後の質問はマフユの人生に関わることだった




この場合、マフユには3つの選択肢がある。1つ目はこのまま暮らす、2つ目は漂流者として独り立ちする、3つ目はミサキのパートナーになって漂流者になる、この三つだった。

(俺の見た夢が正夢(まさゆめ)なら)

マフユは3つ目の選択肢を選ぶことになる。

一方のマフユは言われてから気付いたようで、口元に手をあて、考える素振りを見せる。そして、「思いついたっ」という様な顔になると、ミサキに顔を向けて

「あなたの相棒(パートナー)にしてください!」

さっきとは対極的な声色でそう言った。


ミサキの正夢(まさゆめ)は大当たりだった











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