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死が支配したこの世界で  作者: PSICHOPATHS
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敷設の七日目

昨日は結局遅くまで要塞化計画を話し込み、気づいたら眠ってしまっていた。


ひとまずの計画は完成したし、実現性もそれなりだ。所々電気工具を使う場面がありそうだが、あの立地だったら問題ない。

ゾンビが少ないため安心して音の立つ機械を使うことができる。それに一体や二体程度なら、俺たちに取ってはいちいち騒ぐほどのことでもない。


今日は俺も外に出ることにした。午前中だけだし、足への負担はそれほど無いはずだ。

外に出るのは俺と永道、そして姫の三人。他の皆には家を守ってもらうことになる。といっても、基本的には休暇のようなものだ。


鷹ちゃん一人いれば、ここらの住人全てに団結でもされなければどうとでもなる。成人男性二、三人ではヤクザすらのしたことのある鷹ちゃんには敵わないだろう。


のりさんにはもしどこかの家が接触して来た時のために残ってもらう形だ。

基本的に相手をする必要はないと言ってあるし、少し家をあける程度でどうなるとも思えない。過信は禁物だが、この場合必要以上に怖がる必要も無いはずだ。


「よし、手土産も入れたし、出発するか」


「そうね。ちゃっちゃと行ってさっさと帰って来ましょ」


手土産は二キロもある熟成肉の塊。野菜各種、それと少しの酒。向こうの人数ならバーベキューをするのに十分な量だ。


家を出てみれば、やはり宮本が窓からこちらを覗いていた。軽く会釈すれば、向こうも会釈で返して来た。

宮本と酒井の家には昨日のうちに引き換えの品物を取りに行ってある。冷蔵庫とプリンター、布団は今はこちらの家でそれぞれ使われている。


ちゃんとした取引ができるうちはであるが、安心してもいい相手だと思う。


俺たちは車に乗り込み、一路ホームセンターへ向けて出発した。






…0…0…0…0…0…






ホームセンターへの道ではやはりゾンビの数が少なかった。かと言って、皆無というわけでは無い。

大通りであるが道路の真ん中をフラフラしているゾンビには事欠かない。


それらをスイスイと避けながら、ホームセンターまでやって来た。

ホームセンターの駐車場にゾンビの姿はない。いくつかの死体(・・)が端の方にまとめて安置してある以外、普通の状態だった。


入口の方を見たところ、前回来た時よりもバリケードが強化されているのが見受けられる。乱雑に並べられていた棚や机が、整然と並べられ、床にしっかりと固定されている。あれならゾンビはそうそう入って来まい。

入るときはどうするのかと思ったが、そこもしっかりと考えられているらしい。声をかけてみれば、バリケードの一部があっさりとどかされた。


どうやら通り口の部分のみキャスター付きになっているようだ。中へ潜ってみれば、裏から閂を閉められるようになっていた。


出迎えてくれたのは町方。数日ぶりであるが、その顔の精気は少しも衰えていない。


「よお、山本。お前怪我したと聞いてたが、出歩いて大丈夫だったのか?」


「おはよう、町方さん。今日は物資を取りに来ただけだから、大丈夫だ。交換にちょっといいもの持って来たぜ」


そう言って手土産の肉を見せてやれば、向こうのグループから喝采が上がった。


「消費期限が少し気になるから、しっかり焼いて食ってくれ。余ったら、この間あった薫製機を使って薫製にすればそこそこ持つぞ。

薄くスライスして、塩漬けにして、塩を抜いて、そっから薫製。やり方はネットで調べればいろいろでてくるから」


「おう、わかったぜ。久々の肉だかんな、なんでも持ってってくれや」


「悪いな、ちょっと入り用でな。うちもかなり切羽詰まっててさ。木材とか塩ビ管とか、結構持ってっちまう」


俺の謝罪に町方はひらひらと手を振る。


「ここにはそんなもん腐る程あるからな。多少持ってかれても問題ねえよ。それに、お前さんさえ回復すりゃあ倉庫解放すんだろ?十分だって話よ」


ありがたい話だ。この町方という男、頭が切れるのもそうだが、やはり何と言っても気持ちのいい性格をしている。

俺みたいな若造にタメ語を使われてもケロっとしてるし、一人前と扱ってくれている感じがする。


昨日の男達はあくまで俺を取引相手として見て仕立てに出ていただけだが、こいつは違う。

この辺り、ここのリーダーである所以が出ている。


「んじゃ、早速切り出ししてくよ。永道、頼む」


「あいさー。町方さん、糸鋸とかももらって行っていいかい?」


「ああ、あれもここじゃ音でかすぎて使えねえかんな。それに一台くらいなんてことねえし、持ってけ持ってけ」


そんな感じで必要な木材、資材、その他小物を入手した俺たちは帰路へとついた。

帰り際、バーベキューに参加しないのかと聞かれてが辞退した。さすがに皆に悪い。


ボウガンや矢の材料もしっかりと揃えられたし、あとは作るだけだな。






…0…0…0…0…0…






家まで帰って来たら早速敷設作業だ。


軽く昼食をとり、少し休憩したら皆で協力して作業を開始した。

今日取り掛かるのは一階部分と庭の強化。車庫は襲われることがないとしても、侵入経路になる可能性はある。そこもやっていくつもりだ。


とはいえ、俺は怪我人。細かい作業ならともかく、重いものを持ったり、踏ん張ったりはできない。

なので、もう1つの作業を進める。


それは長期保存可能な食料の作成である。

下準備が多いため、これは俺と中学生組で作ることにした。


「山本さん、長期保存食って何を作るんですか?」


「とりあえずはやっぱり薫製だよな。これの下準備は結構簡単だから二人にやってもらうよ。俺はオイル漬けの方かな」


「オイル漬け?」


「あれ?莉子ちゃん知らないか?」


オイル漬けというのは、主に野菜やキノコ、ささみなどをオリーブオイルに漬ける保存食だ。油の中では雑菌がわかない上、オリーブオイルは抗酸化力が強い。

早いうちに漬け込んで仕舞えば一ヶ月は持つ。それに何よりうまいのだ。


「へ〜、そんなのあるんですね」


「ああ。結構美味しいよ」


そう言って素早く作業に入る。

薫製肉はベーコンやハムにさえしなければそんなに調理時間はかからない。ブロックではなく、短冊形に切ってビーフジャーキーのようにすればいいのだ。


少し厚めにスライスした肉を二人にフォークで刺してもらい、そこに塩と粗く引いた故障をふりかける。醤油、そしてほんの少しのラム酒をかけ、よく揉み込む。

それを真空パックに詰め、冷蔵庫で漬け込んでおく。かなり塩分を多めにしたが、それは保存を考えてのことである。餓死するよりは塩辛いものを食べたほうがマシだ。


さて、それはさておき次の準備だ。


まずは瓶を数点用意し、煮沸消毒をする。その間にトマト、ナス、ササミ、キノコ各種をそれぞれのサイズにカットし、ササミとキノコ以外をオーブンで乾燥させる。


ちなみにこのササミ肉、ダメになっていないのはたまたま冷凍されていたかららしい。ひき肉やブロック肉がダメになっている一方で、しっかりとした保管施設に入っていた一部の肉だけが生き残っていたそうだ。

この運を神に感謝したいくらいである。


他の肉も、昨日のうちに真空パックして全て冷凍庫で保管してある。それほど長くは持つまいが、少しの間であれば贅沢できるということ。

生活基盤を整えるまで、頑張りたいものである。


さて、そのササミ肉をジャーキーの時と同様しっかりと塩胡椒でもみこむ。それを熱したフライパンで焼き上げる。

粗熱を取るために別皿に移し、今度はキノコだ。


熱したフライパンに多めのオリーブオイルを入れ、ニンニク、種を取った鷹の爪を加える。香りが立ってきたら石突きを取って切り分けた各種キノコを炒め、塩胡椒で味を整える。

それをトレーに移して粗熱をとることにした。


乾燥させたトマトとナスはそれぞれ瓶に詰められ、中にオリーブオイル、スパイス、鷹の爪などを入れて、空気の入らないようにしっかり蓋をした。

続いて粗熱の取れたサラミとキノコも瓶に移し、オリーブオイルを注いでいで蓋をしたら完成だ。


「うし、あとは冷蔵庫に入れるだけっと!」


「おー!かんせー!!」


「よしじゃあ次は薫製だな」


先ほど漬け込んでおいたジャーキーを低温に設定したオーブンで乾燥させていく。

この乾燥だけで1時間はかかる。その間に薫製機の準備だな。


先ほど貰ってきたばかりの薫製機を段ボールから取り出し、説明書をよく読んでおく。

下部にある炭入れに炭と着火剤を仕込み、桜のチップを中段に置いておく。薫製用のバータイプのチップもあるようだったが、今回はこちらを使ってみることにした。


さて、少し待ってからいよいよ薫製だ。

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