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1996年 12月23日
若いのに再婚しないの、彼氏はいないのとよく訊かれる。
「いい男紹介しようか」
どうしてそうなるのだろう。女性は、男性と一緒にいなければならない決まりでもあるのだろうか。子供がいるから、父親もいなければならないと思われているのだろうか。
男性は、怖い。
今は笑っている男が、いつ怒りだすかわからない。どんな言葉で不機嫌になるか分からない。殴ってくるかもしれない。蹴ってくるかもしれない。
「次はお前だぞ」
そう言いながら、目の前で猫を解体するかもしれない。血にまみれた包丁をつきつけて、脅してくるかもしれない。
犯されるかもしれない。
殺されるかも、しれない。
考えれば考えるほど怖くなって、男性の顔を見ただけで吐き気がして、呼吸の仕方もわからなくなって。私は地面にしゃがみこんだ。
「おかあさん、大丈夫?」
そう言って差し出してきた娘の手はいやに温かく、湿っている。
――どうして『あの男』の手にそっくりなの。触らないで、気持ち悪い。
私は、娘の手を払いのけた。