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綿あめのきみ  作者: うわの空
第二話
3/14

1995年 6月23日

 娘の顔を見る時はいつも、間違い探しをしている気分だ。

 年を重ねるごとに、私と似ている部分は減ってきている気がする。

 そのかわりにどんどん、どんどん、『あの男』に似てきている。

 二重まぶたが、鼻の高さが、口の形が、顔の輪郭が。

 そのすべてが『あの男』にそっくりで、私と似ているところなんてひとつもない。


 私が子供を産むことになった日、母は「私たちで育てよう」と言った。


「だって、あんたの子なんだから」


 それからというもの、母はことあるごとに「この子は『あんた』の子だよ」と繰り返していたけれど、私はどうしても男のことを考えてしまう。

 母が『あんた』を強調するのと比例して、この子は『あの男』そっくりになったのではないか。

 目の前にいる娘は、『あの男』の血が混ざっている人間。そう考えるだけでゾッとする。


 いつか化けの皮が剥がれて、残酷な一面を見せるのだろうか。

 それとも既に、加虐趣味があるのかもしれない。


 ――見れば見るほど、娘は『あの男』に似ている。顔が、体型が、運動神経の良さが、笑顔が、仕草が、すべてが。

 こんな気持ちで育てるのなら、母の死後は施設に預けたほうがよかったのかもしれない。たとえ娘が六歳で、物心ついている年であっても。


 間違い探しは終わらない。

 そもそも、間違いとはなんなのだろう。


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