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2005年 4月12日
ホテルで三日間、寝ずに考えた。――いや、娘が産まれてからずっと考えていたことに、ようやく自分なりの答えを出せた。
思えば、母も私も間違えていたのかもしれない。
あの子は確かに私の娘で、誘拐殺人犯の娘で、けれども娘は娘だ。誰に似ているとか似ていないとか、そんなの関係ない。娘はひとりの人間で、誰の分身でもない。こんな簡単なことに、どうして気づけなかったのだろう。
娘とあの男を重ねるのが、間違えていた。
亜衣は、亜衣だ。
――ケーキを買って、家に帰ろう。あの子の好きな、苺のショートケーキにしよう。まだ、大学の合格祝いも何もしていない。高校の卒業祝いも兼ねて、ガトーショコラも買おうか。
そうして今度こそ向き合おう。『あの男にそっくりな人間』ではなく、『亜衣』に。今思っていることを、きちんと伝えよう。
ねえ、亜衣。今更だと思われるかもしれないけれど。
死なないで。
生きて。
泣いたり怒ったりしてもいい。
けれどそれよりも一秒でも多く、笑って。




