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少女と死神   作者: ゆーてんぶるぐ
1/1

出会い

死神と少女 1


死神は、主に死者を冥界の門まで送り届けたり、死者の経歴を調べて審判を円滑に進めるのが仕事だった。

 しかし、最近では働き辛くなってしまった。原因としては冥界での自動化が進み、冥界の門までエスカレーター、経歴など手軽にシステム検索するだけで出てくる時代になってしまった。最もそれだけならば、働き口はまだあるのだが、一番の原因なのは死者の減少。

 人間界はここ最近大幅に進化した。車は宙に飛び、人は若返り、物質は何処からともなく現れる、人間の死ぬ要素がなくなっていった。仕事がなくなった死神はどんどんリストラされていった。転生する者、冥界から消える者などが増えていき、冥界での死神と言う存在はほとんどいなくなってしまった……



 人間界の日本と言う国に、昔は神社と呼ばれていた施設があった。神社は神を祀るところだったが、信教よりも科学という思考のためか神社という文化は衰退していった。

 そして、ここもかつて神を祀っていた場所である。俺はここで、いや私はここで人として、ここの主としてこの場所で生きている。

「ししんーここわかんないー」

子供が、ノートを出し指をさす

「あー、夏休みの宿題か?えっとなぁ……」

 ここには、数人子供が遊びに来る。夕方になったら帰り、また翌日遊びに来る。山の中にあるため、夏休みになったら子供たちが宿題を抱えてやってくる。この地域ではそれが普通になってきた。親も子供の帰りが遅ければまず最初に電話してきたりと、私が何十年かかけて周りの信頼を得てきた。

「ねぇ〜、このあいだまでいたおじいちゃんは??」

ある男の子が唐突に質問した。

「あーおじいちゃんはね、もう1つのお家にいるよ」

もうこの嘘も慣れてきた。

 実は、この身体は三代目。死神は死なないため、人間の格好しても生きてしまう。なので、若返って新しい主人としてやり直している。さすがに身体を分けて分身することはできないので、古くなった体はこう言ってごまかしている。

「ほら!みろ!薬で若返ったんじゃなかったんだー!!」

「まじかーぜったいおじいちゃんだと思ってたのに」

「さすがにあそこまで若返らないでしょ!」

 これこそが、死神の仕事をなくした一番の原因。若返りの薬ができてしまったことである。この薬はそれほど高価でもなく簡単に手に入り延命が容易にできるようになった。

私は人じゃないから飲んでも変わらないけどな…

「うちのばあちゃんはまた若返ってたよー」

「うちの、じいちゃんもー」

「うちはもういいかなって言ってる」

なんとも不思議な会話だが、この時代、若返りが当たり前なのだ。


「いて!!何すんだよししん!!」

「手が止まってる。……宿題、はよやれ。また去年みたいに泣きついても助けてやらないぞ。」

「な、泣いてねーよ!!」

周りの子たちが笑い出す。周りも宿題を進め、ある程度したら山を駆け回り、たくさん笑って、そして帰っていった。

 今日も何も起きないで、終わった。

 一体なぜここに住み始め、こうしてるのか…もう忘れてしまったが、私はこの時間がとても…とっても大好きなのである。



 しばらくすると、毎日来る子供達が来なくなる一週間がきた。

 お盆と言って、こぞってどこも休みになる週らしい。いつもは子供の声が聞こえる山は、蝉の声だけが聞こえる…

「暇…ほんっと暇…」

毎年恒例にもなった1人の時間。ただごろごろして起きてゴロゴロするを繰り返す一週間。

 しかし、今年は違った。ぼーっと、居間から空を眺めていた時であった。玄関が勢い良く開いたのだ。

「ごめんくださーい」

 突然の訪問に、飛び上がり、慌てて服装を直し玄関に向かう。

「はいはい」

玄関に立っていたのは、高校生ぐらいの女の子。背中には大きめのリュックを背負っていた。

「あ!あなたがしひとさん?」

どうやらここに来るのは初めてみたいだ。

「いや、それは祖父です、私はししんと言います」

「あー…なるほど。」

「なるほど?」

「いや、なんでもないです。私は茜と言います。」

「あ、茜さんどうもこんにちわ。それで、この山の中にどういった要件で?」

「すみません、しばらくここに泊めてもらえませんか?」

彼女はとても笑顔だった。



 夏の終わりになると、子供達、特に男の子たちが泊まりに来る。最後に溜まった宿題をさせる為に親が連れてくるのだ。だから、普段なら来客が泊まることについてなにも抵抗もしないが……彼女は別だ。ここに来て一週間以上経つのに帰ろうともしない。頻繁に親と連絡を取っていて楽しそうにしているところから、別に家出をしてきたわけでもないようだ。

 お盆が終わり、再び遊びに来た子供達とも茜さんは仲良くしている。 子供達も彼女を気に入り、遊んでいて馴染み始めているのだが……

「あ、しーちゃん!お腹すいた!!!」

まだそれほど経ってもいないというのに彼女、妙に馴れ馴れしいというか、子供っぽいというか…

「茜さん、たまには自分で作ってもいいのではないですか?!それより、そのしーちゃんはやめてくださいと言ったはずです。」

「いいじゃん!ししとってとっても言いにくいし、あとしーちゃんが作った料理美味しいし!」

「あー、もうわかりましたよ」

 こうは言っても彼女は作らないことぐらい分かっているので、しぶしぶ作り始める。

 帰ろうとしない彼女だが、ここに来た目的はなんとなくわかってきた。私が人間かどうか…いや私が死神かどうか確かめに来たのだ。

 …あの日から…すでにそうだった。

「すみません、しばらくここに泊めてもらえませんか?」

「別に構いませんが、家出の場合は歓迎できませんよ?」

「大丈夫です。親には言ってありますし、この山の生態調査?するのが目的です!まぁ、夏休みの自由研究みたいなところです。」

そう言った彼女は子供のような笑顔を見せた。

 私は、毎日親と連絡を取ることを条件に、彼女をここに泊めることにした。

「ここは客間ですので、ここで寝てください。あまり広くはないですが……」

「あ、大丈夫です。ありがどうございます!それより”死神”さん、どうしてここに住んでいるのですか?」

「あーそれはですね、むk・・・・・・ん?はい?」

思わず話を続けそうになてしまった。彼女はさっきよりも笑顔ではにかんでいる。

「し、死神とは?」

気のせいかどうか、慌てて聞き返す。

「いえ、なんでもありませんよ。これから数日間お願いします」

聞き間違いだったのだろうか

「は、はい」

私は微笑んだ


 しかし、あれは聞き間違いではなかった。

最初はなにも気にしていなかったが、しばらくしてわかったことがある。彼女は、会話にまるで私が死神ではないかと疑うような言葉を会話の中に混ぜていた。

 それに気付きつつもあえて知らないふりを続けた。そして、そんな私と彼女の密かな攻防戦が今も続いてる。


そんなある日の午後、今週分の食料を買いにスーパーへ行き、茜さんと一緒に帰ってる途中だった。

「重い!持って!!!しーちゃん!!」

ボスッと買い物袋渡された。

「あなたが持ちたいって言ったから渡したのに…」

「ん?なんか言ったー?」

何歩か先にいる彼女は、笑顔で振り返る


「あのさー私ねー」

歩道橋の階段を登りながら話す彼女の後姿見て思った。

あれ…下着見えそう……

「私、聞いたんだけど、昔ここには死神伝説っていうのがあったらしいんだー」

また不意に彼女からの攻撃だ。

「はい」

そっけなく返す

「それでね、いろいろ調べたんだ」


リズミカルに階段登る彼女

「はぁ、はい」

動揺を隠せてない自分。何故ならその死神伝説の死神とは自分なのだから……

「その死神が、やけに人間に交流的なこと、子供が好きなこと……人間の姿になれること」

こいつ…知ってたのか……

「でもね、確証は持てないからどうしようかと思ったけど……っと」

すこし駆け足で登りきり、軽やかに手すりに登った。

「え、あ、ちょ!あぶないから!!やめなさい!!!」

 忠告を無視して、手すりを平均台のように渡っていく…

「だからね…最後の手段に出ようと思うんだ…」

何を言ってるんだあの馬鹿女は。早くやめさせないと …いや、でも…

本来、死神は人間の最後…つまり死ぬ瞬間には立ち会わない。死後しばらくして、完全に身体から幽体が抜けた時に迎えに行き、届けるのが仕事だった。

その後、経歴を調べ死因が自殺だとしても、それが死者の人生、運命として審判として使われる。

 そう、自殺ですら運命になるならばその運命を変える事をしていいのか、という思考が私の行動を抑制していた。

「茜さん、降りなさい、危ないから」

身体は動かなかったが、辛うじて口だけが動いた。

彼女はその場に止まり

「大丈夫!だって私…」

言い終わらないうちに、彼女は落ちていった。

 それからはあんまり覚えていない。気付いたら後ろでスーパーの袋が落ちていた。

「ほらね、大丈夫だったでしょ?」

彼女は笑顔で言った。

「んーちょっとでもイメージとは違ったなぁ〜…あ!でも私、お姫様だっこは初めて!」

私は彼女を抱きかかえていた。

「やっと見せてくれたね…ありがとう、 死神さん」


死神の姿で・・・・・


pixivでも記載しております


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