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DARK WORLD  作者: 西本 拓人
1/5

奇説

十二の扉を全て巡りし者に十三番目の扉が開かれん


阻む者は闇


掴むべき希望の光は征く先に


さあ、闇の世界を踏破しろ


そして、神龍に逢うがいい


己が夢のために


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


白く輝く空間の中に神秘的なオーラをその身に纏う龍ととある男が対峙し、口論を交わしていた。


「俺はこんな世界にしたかったわけじゃない!」


男は何か必死のようでその表情がすごい剣幕を帯びている。

対して龍の方は涼しい顔で、彼のその言葉を冷酷に嘲笑った。

『ならあなたの思う本当の世界を心から願いなさい。…できなければ、この世界こそが』


ーーーー貴方の望んだ世界だ!


男は絶望に満ちた顔で視線を右にずらす。

すると、……



「……っ⁉︎…はあはあ…くそっ…またあの夢か…」

目が覚めるとそこは見知った暗闇の世界だった。

「………」

額のあたりが何か冷たい、ローブの裾で拭って見るとしっとりと濡れていた。

「くそっ…あともう少しなんだ!…寝てる場合かよ!」

男は手に持つ杖を突いてよろよろと立ち上がると歩き始めた。

そして、数時間後、彼はある神々しく輝く紫色の宝玉を見つけた。

「…ははっ…見つけた!…これで……これで、俺の夢が叶う!」

男はそれに手を伸ばし……。


ーーーーーーーーーーーーーーー


ある事件より数時間前、宇津井建は通学路を急いでいた。

口にパン、片手に牛乳パックといかにも古い時代の漫画にありそうな様子だが、彼はとにかく急いでいた。

何故か…

「定期テストだっつーのになんで寝坊すんだよ俺のバカやろー!」

と言う訳だったのである。

ちなみに彼が起床した時間はちょうど8時20分。

彼の通う花王高校までかかる時間は自宅から歩いて30分。

走って15分とすると朝礼が始まるのが8時35分なのでジャストで間に合うはずだ。

しかし、今の時間は8時30分だ。

あと五分で朝食を食べ切り、校内玄関から校舎3階の教室まで行かなくてはならない。

しかし、ここまでで第三者ならこう思うはずだ。

「遅刻しても別に大丈夫だろ?」

と。

しかし、彼は進路が控えている三年生である。加えてその三年間の内に出欠日数が彼の志望する大学が規定する数にそぐわなかった場合、その大学に受験することすら叶わないのである。

事実彼はその出欠日数があまりにも危うい状況にある。

だから彼は焦っているのだ。

あと一回でも遅刻、もしくは欠席してしまうと自分の志望する大学に受験できない、と。

「くっ…やっぱしょうがねえよな…農家さん悪りい!」

不衛生極まりないがパンを食い散らかし、牛乳パックのストローを加えてズゴー!と中身を吸い込むと、走るのに専念した。

数分後、黒色の校門が見えてきた。

その奥には全部で五階だての校舎がある。

「よっしゃ、ラストスパート!」

校門をくぐり抜け、校舎の中へ。

そして、3階へ階段を駆け上がり…。

「間に合えッ!」

教室のドアに手をかけ、左にスライドした直後。

「へっ…?」

建は黒く淀んだ世界に立っていた。

「なんだよ…ここ…て言うか俺には時間がな…ッ⁉︎」

背後にガラガラと何かがスライドする音が聞こえた。

彼は直ぐに振り返って、飛んだ。

「届けえーっ!」

しかし、閉まるドアの方が数秒早く…ピシャッと冷酷に音を響かせて忽然とそのドア自体が消え失せた。

建は脱力して両膝をついた。

「ははっ…嘘…だろ?」

表情は絶望感に染まり、薄笑いを浮かべていた。

「嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だッ!」

彼は立ち上がって消え失せたドアのあった場所を手で何度も何度も何度も何度もまさぐったが、出現する形跡もなく、自分の知る校内の通路に出ることもなかった。

「は…ははっ…あはははははははははははっ‼︎」

彼は自分を嘲るかのように暗く淀んでいて地も空も同じ紫色でこの世界に存在しない「空」を見上げて、狂った様に大笑いする。

後に、

「ははははっ…ふざけるな…」

涙が頬を伝い、勝手に声が出た。「…不幸なんてレベルじゃねえよ。…某漫画みたく『教室に入ろうとしたら別世界に飛ばされました』だぁ?…笑えねえよバーカ…」

嗚咽がその声に混じる

「…ぐっ…大学行けなくなったらどうすればいいんだよ…、現役で行きたかったのに…なんで…ッ…!……なんだ…これ…」

泣き叫ぶ彼を前にある鈍色に輝く両扉が現れた。

「はははっ……次はなんだ?…次はどんな展開が待ってんだ?」

彼はもう半ば自暴自棄になり苦笑しながらその扉の金属質な取っ手に手をかけて内側に押した。

刹那、

「っ⁉︎…な…に…!」

眩い白く輝く光が彼を包み込み、


「ここは…何処だ?」

次に目を開けると彼がいたのは現実世界とは全く別の異質な世界だった。


眼前に螺旋状の階段が一階から四階まである空間。


どうやら彼がいるこの空間は円柱状の塔の中らしい。

一階は巨大な何か神々しい龍の絵画が彫られた両扉が正面にあり、眼下にはアメジストのように輝く緻密な魔法陣が描かれていた。

二階から四階までには扉がそれぞれ四つずつ配置されている。

その塔の中は何やら紫色に光っており、若干不気味に思える。

天井を見上げると木材を何度も重ね合わせて造られてあるようでつぎはぎに見えるが何故か美しく感じられた。

いろいろと見ていると唐突に

「やあ、運命の申し子よ」

「っ⁉︎」

背後から声を掛けられた。

その声はまだ高く少女なのか少年なのか判別し辛い。

振り返ると

「ようこそ…ダークワールドへ」

と笑みを浮かべ、建を迎える黒いタキシードにシルクハットを被った少年がいた。

「…ダークワールド?……君は?」

聞くと少年は

「僕?……僕はここダークワールドの守護者、『闇の番人』…まあ、シェイドとでも呼んでよ」

と名乗った。


かくして、12の扉と闇を巡る壮大な物語が始まる-----!

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