表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
認定式  作者: 岸野果絵
5/8

廊下

 講堂を出たロジーナは、廊下を売店の方に向かって歩き出した。


「ロジーナ」

穏やかな声に呼び止められ、ロジーナは息をのむ。

胸の前に持っていた筒を両手でぎゅとにぎりしめ、ゆっくりと振り返った。

「師匠……」 

優しい眼差しに吸い込まれそうになる。

「元気そうだな」

クレメンスは目を細め、ロジーナに微笑みかける。

「はい」

胸がいっぱいで、ロジーナの声は声にならなかった。

「おめでとう」

クレメンスは真っ直ぐにロジーナを見つめて言った。

「ありがとうございます。これもみんな師匠のお蔭です」

ロジーナは瞳を潤ませながら頭を下げる。

クレメンスは「フッ」と笑った。

「私は何もしていない。お前の努力が実を結んだのだ。よく頑張ったな」

「師匠……」

顔を上げたロジーナに、クレメンスはにっこりと笑いかけ、真剣な眼差しをむける。

「よくぞここまで来たな。ここからが本番だ。精進しなさい」

「はい」

コクリと頷くロジーナに目で頷き、クレメンスはくるりと向きを変え、廊下の奥へと消えていった。

ロジーナは両手で筒を握りしめながら、クレメンスの後ろ姿を見送った。

見えなくなっても、しばらくそのまま動けなかった。


ロジーナは喘ぐように切ない息をつく。

こみ上げてくる想いをギュッと抑えつけ、大きく深呼吸すると、方向転換し、売店に向かって歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ