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認定式  作者: 岸野果絵
2/8

控室

 魔術師協会の幹部たちは少し早めに本部の控え室に集まり、ソファーに座り、和やかに談笑していた。

皆、師範魔術師の正服姿だった。


「おはよぉ」

ニコラスが大きなあくびをしながら入ってきた。

さすがのニコラスも今日は正服に身を包み、まるで別人のように髪もきちっとセットしていた。


「朝からご苦労だねぇ~」

そう言いながら、ズカズカと部屋の奥へと進み、クレメンスの前に立つ。


「クレちゃん。おめでとう~。愛弟子が師範になって嬉しいでしょ」

ニコラスは抱きつくようにクレメンスの膝の上に腰掛け、頬がくっつきそうなくらい顔を近づけた。

「ありがとう」

クレメンスは顔を正面に固定したまま答えた。


「ところで、ニコ。一つ尋ねたいことがあるのだが」

ニコラスの顔をチラリとみる。

「なぁに?」

ニコラスはクレメンスの耳元に口を寄せて言った。

「お前はなぜ私の上に座っているのだ?」

クレメンスは静かな声で尋ねる。

「オイラの座るとこがないからさ」

ニコラスはクレメンスの顔を至近距離で覗きこむ。

「向こうの席が空いているぞ」

クレメンスが空いている方へ視線を動かす。


「ヤダよ。オイラ、こっちがいいの。ディミトリアス先生の顔がコワいんだもーん」

向こう側に座っているディミトリアスがジロリとニコラスをみる。

「ほらぁ~。コワいでしょ~。きゃー」

ニコラスはディミトリアスを指さし、両足をバタつかせながらクレメンスに寄りかかる。

ディミトリアスが目をすがめた。


部屋の空気が凍りつく。


凍てつく空気を突き破るかのように、クレメンスの隣に座っていたフランクがスッと立ち上がった。

「わるいねぇ」

ニコラスは悪びれる様子もなく、フランクの座っていた場所に移動する。

「惜しいなぁ。もうちょっと早ければ満点をあげたのに」

フランクの顔を下から見上げ、ニコラスはニタァと笑った。

フランクは、一瞬眉をピクリとさせたが、すぐに口元を緩める。

「ご指導ありがとうございます」

微笑みながら、ニコラスにうやうやしく頭を下げた。

ニコラスのニタニタ笑いが固まる。


「フフフフフ」

クレメンスが笑い出した。

ニコラスは眉を下げてあからさまに残念そうな顔をした。

その表情に、他の幹部たちも笑い出す。


「つまんなーい。フランク先生、クレちゃん化したらダメだよぉ。かわいいフランク先生を返せ~」

ニコラスはのけぞって足をバタつかせる。

室内は笑いに包まれた。

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