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風と共に。  作者: フラップ
第一章 飛行隊構築
8/50

航空適正

 あと一機。


 ミーナが仕留め損なった様だ。


 旋回のあと、こちらに機首を向けてくる。


 スロットルを上げ、迫ってくる。


 セオリーで来るか?


 スロットルを開ける。


 ヘッドオンで近づいてくる。


 すれ違う瞬間、スプリット・S。


 Gが掛かる。


 「うぅぅ……」


 声が漏れる。


 頭痛。


 顔を歪めた。血が下っていく。


 吐き気。


 そのまま3/4アウトサイド・ループ。


 終えたところでクォータ・ロール。


 敵の頭上に覆いかぶさっていく。


 ハーフ・ロール。正立に戻す。


 速度が速い。このままではオーバ・シュートする。


 プロペラをフェザリングに。逆ピッチは強度的に無理だった。


 吐き気を堪えながら送信ボタンをおす。


 「う……撃墜」


 吐き気で死にそうだ。


 * * * *


 着陸して、トイレに駆け込んだ。


 口から胃液が出るのを抑えられなかった。


 赤い液体が混ざる。


 額に手を当てる。熱い。熱が出たようだ。


 気持ち悪い。


 後ろの壁に靠れる。汗で濡れたシャツが背中に当たる。


 トイレを出ると、ミーナが壁に靠れ掛かりながら待っていた。


 「大丈夫?どうしたの?」


 訊いてくる。しっかり言ったほうがよさそうだな。


 「実は……」


 「実は?」


 「実は俺、Gに弱いんだ。航空適性がない」


 航空適正……要するにパイロットになる素質だ。ミーナみたいな猫獣人には適正があることが多い。逆にイヌ科は適正が無いことが多い。その代わり地上戦ではイヌ科が強いらしい。


 その中で湊は適性が無い。技量は有る。機敏性も判断力も有る。何が無いか。耐G能力である。


 「はっきり言って6G以上は無理。4Gなら辛うじて5秒は耐えられる」


 「それは……」


 ミーナが哀れみを込めた目で湊を見る。ミーナが普段急旋回を使う時に掛かるGが7G。急速離脱が9G。急降下爆撃機が引き起こし時にかけるGが最低でも5G。それも5秒以上は掛かる。


 つまり、湊はパイロットにならない。なれない。使い物にならない。


 「えーっと、整備士としては優秀だし?技は凄かったし?」


 「慰めが痛い」


 「うぅ」


 「……」


 「……」


 沈黙の蚊帳が降りる。


 「……えーっと、貞操の危機脱却おめでとう」


 「……ありがとう」


 「……」


 「……」


 気まずい沈黙。話題の転換に失敗した。二人をますます重い沈黙が包む。


 これがもうちょっと色気の有る沈黙だったらいいのになぁ、と頭のどこかで考えてる。


 「えっと、菊染良かったよ?」


 「今後継機のプッシャ計画中」


 「期待してます」


 「休ませていただけるとうれしいです」


 「あ、ごめん」


 「うん」


 湊はふらふらあるきながら格納庫に戻った。割り当てられた自室に戻らないあたり徹夜作業が板についている。

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