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風と共に。  作者: フラップ
第四章 ドーナツのように
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初飛行

 滑走路に引き出された瞬摘に乗り込む。


 シートベルトを締めている間にミナトが機体周りをまわって最終確認。ピトー管カバーを外す。


 初めての新造機のテスト飛行。準備が整うにつれ緊張してくる。


 「ミィ、離陸直後に何かトラブルが起きたら脱出だ。迷うな」


 「解ってる」しつこいぐらいだ。


 他の係員が機体から離れていく。


 ミナトも、やや遅れて機体から離れていく。


 『じゃあ、始めよう』


 ミナトの声がトランシーバーから聞こえる。


 つばを飲み込む。


 ボタンのカバー。跳ね上げる。


 一度だけ深呼吸。


 さあ。


 息を止めて


 グローブ越しに固い感触。


 それを、押し込んだ。


 ジジジッという火花の散る音。


 一秒。


 大丈夫だよね?と思った直後。


 背中に衝撃。


 ものすごい勢いで加速。


 方向が左右にぶれるのを必死で抑える。


 顎が上を向きそうになる。


 直後、機首が上下に揺さぶられる。


 腹をくくって、操縦桿を引いた。


 またミナトの言葉を思い出して、低空で抑え込む。


 高度約50。


 もう速度計の針がマーカーと重なっている。


 スロットルを押し出した。


 ロケットエンジンの轟音が消える。


 速度は下がらない。ラムジェットエンジンに火が付いた。


 息を吐いて、ゆっくりと操縦桿を引いた。


 コックピットから地面が消える。


 バンクをとって、旋回。


 『OK、機体を振ってみろ』


 命令通り、ロール。ループ。


 すごいパワーだ。


 速度計は700を指している。


 離陸してから3分経った。


 「異常なし」


 それぞれの舵をフルで切る。


 ロール。OK。


 ピッチもOK。


 水平に戻して、ヨーイングをテストしたとき。


 それは起きた。



 * * * *



 ミーナ機はもう点のようにしか見えない。


 「OK、機体を振ってみろ」


 少し軸がぶれた後、ヴェイパーを引いて上昇し、水平に戻る。


 直後。


 急激に点が動きを上げる。


 「ミィ!?おい、応答しろ!」


 点に目を凝らす。


 「脱出しろ!」


 

 * * * *



 頭痛。


 視界が白い。


 眩しくない。


 眩しくないのに、白い。


 首が背もたれに押し付けられて痛い。


 もう、眠い。


 水が飲みたかった。


 冷たい、奇麗な水を。


 ああ、眠い。


 なのに………。


 この五月蠅いのは、何?



 * * * *



 「脱出しろ!ミィッ!」


 点は、どんどん大きくなっていく。


 どうする?


 どうしたらいい?


 胸ポケットから製図ペンを取り出す。


 轟音はどんどん大きくなる。


 魔法陣を編む。


 緊急装置が動いて、エンジンが停止する。


 そのペンを握りつぶして、


 その魔方陣を拳で叩いた。

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