王都の雪
25000PV記念!
今回は気になるアノヒトにスポットライトを向けてみました!
…………誰だろう。
「お願い。抱きしめて」
涙を流す彼女は俺の腕の中でそう言った。
「好きだわ。愛してる。………………なんで?どうして別れなきゃいけないの」
王都は雪。伝わってくる彼女の体温。
「分かっているだろう。俺は平民なんだ」
「関係ないわ」
「ある」俺はそう言った。彼女の顔が悲しげに歪む。
傷つけてしまった。しかし、それは最初から分かっていたはずだ。
「あぁ…………本当に。一体、どうすればよかったというの」
「間違っていたんだ。最初から」
「言わないで」彼女は顔を胸に埋める。
彼女の格好は雪の中にいるには軽装だった。
冷たい手が俺の肩に触れる。
もう、日は沈んでいる。
「言わないで…………お願い」
俺はもう何も言わなかった。
彼女も何も言わない。
ただ時間だけが過ぎる。
すすり泣く声。
俺は泣かなかった。
「ごめんなさい……………こんなつもりじゃなかったのに」
「あぁ」俺は何とか答える。彼女は1メートルほど距離を取って、俺と相対した。
「もう会えない?」
「あぁ」
「本当に?」
「本当だ」答えてから、もう一度小さな声で繰り返した。
自分に言い聞かせていたのだろうか。
「じゃあ、これっきりってわけね」彼女の落ち着いた声。
「あぁ」
「さようなら」
「さよなら」俺はそう言って別れる。
そこから離れる間、一瞬だけ彼女を見た。
彼女はもう泣いていなかった。
きっと、彼女はそういう人間なのだ。
俺だって…………きっとそうだ。
出世のためだったんだと、自分のどこかが言う。
そうじゃないという意思はあまりにも小さい。
帰りがけのバーでグラスを傾ける。
未練があるのは、俺の方じゃないかと、一瞬思う。
そうなのかもしれない。
馬鹿馬鹿しくなって、少し笑う。
俺は懐から紙切れを取り出して、サインした。
そこには、【空軍移籍希望届】と書かれていた。
本命:ネイチャー
対抗:豚
大穴:湊
さーて、誰にしようか………(まだ決めてない)




