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風と共に。  作者: フラップ
第三章 試験管な飛行隊
27/50

成功

 『発射5秒前、5…4…3…2…1…発射!』


 編隊を組んでいた左前方の『母』が揺れる。ミサイルが尾を引きながら伸びてゆく。


 一秒後、誘導を開始する筈だ。


 一秒が長い。空中できりきり舞いするのではないか、と疑う。


 次の瞬間、ミサイルの軌跡はカクッとその向きを変えた。


 白い筋が吸い込まれてゆく。


 あっという間に見えなくなる。


 空間を、不気味な沈黙が包み込む。


 『き、来よった来よった来よった来よったぁ、わぁぁぁぁぁぁぁ!』


 「おい!大丈夫か?」


 嫌な想像が頭を(もた)げる。


 スロットルレバーに手をかけた。


 「ミィ、いく━━━━━」


 『ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、だ、大丈夫や。死ぬかと思ったでぇ』


 ミーナへの指示を遮り、やけに憔悴したおっさんの声が聞こえる。


 一瞬、二つの可能性を思い浮かべる。


 ・おっさんが驚いてうっかり自爆ボタンを押してしまった

 ・命中した


 命中が一番目であるのは言わずもがなである。あのおっさん、近頃の鈍感係主人公とは違った頼りなさがある。褒め言葉ではない。


 『め、命中や!チャンと当たったで!』


 もうこれはいやや、と繋げるおっさん。


 「OK。帰投しよう」


 三機で翼を連ねる。今回は結構基地に近いところでやった。空域の使用許可が出たのだ。


 * * * *


 「死ぬかと思ったで」


 「何時ものことだし?」


 おっさんをカイが宥める………と言うよりいなす。何時も死にそうになるらしい。


 お留守番(という名の放置)だったネイアとザイルが寄ってくる。ミサイルが左主翼に突き刺さったグライダーを見て顔を引き攣らせていた。


 問題はコストだ。いちいち湊が手作りしていたのでは金がかかりすぎる。いくら魔導弾の十倍の射程で、二倍の速度だとしてもこのままでは高すぎる。


 ミサイルの弾頭やフィンはスライム樹脂だ。これは簡単に成形できるが、誘導装置、推進装置はそうはいかない。鋳型から抜き出さなければいけない。だがこれは三次元で入り組んでいて、今のところ鋳型では抜き出せそうではない。


 「湊」


 「ん?」


 「この人数がいる。活用したら?」


 要するに、手持無沙汰だから何か考えさせろ、というわけだ。


 「コホン。えー、この装置……魔導回路の量産方法を考えている。素材は普通の魔力を通した金属なら大抵の物は大丈夫だ。魔導弾発射体並に複雑。うまい作り方を考えている」


 あたりを沈黙がつつむ。まあ、エンジニアではない飛行兵たちだ。期待しない方がいいか……?


 「あ~、いい?」


 「ん、カイか」


 チャらい感じであまり賢そうな感じはしない。


 「魔導弾()に複雑なんだよな」


 「ああ」


 「その作り方真似りゃいんじゃね?」


 「……あ……」


 よくよく考えたら単純なことであった。


 微妙な視線が湊に突き刺さった。


 結構、きつい体験だった、とだけ言えよう。

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