両刀
「……こいつ等にやらせればいい」
ミーナが湊を向いて……というよりも睨んで言った。不機嫌だ。この上なく。
「ミサイルの試験を?」
ミーナが無言で頷く。
「冗談じゃない。こんな奴らに任せられるか」
…………湊も未だに警戒態勢である。
「……酷くないか?流石に」
「これは扱いが悪いね」
左遷という言葉は強ち間違いではないかもしれない。
「で、その二人はどうする?」
「さて、どうすっかな……」
湊は考え込む。今のところ湊とミーナで十分なのである。
「……あれ?そういえば、ネイアはミーナにセクハラしていなかったか?」
「ああ、僕は両刀使いだからね」
黙り込む二人を、苦笑しながらザイルが取り成す。
「ま、そういうことだ。襲われないように気を付けるこったな」
湊は地下階への扉をいじり始める。
「……何をしているんだい?」
怪訝そうにネイアが湊を見る。
「ああ、鍵を付けているんだよ」
「どうしてだい?」
「誰かがシェルターに入ってこないようにだよ」
「誰かって誰だい?」
「女も男も分け隔てなく接しすぎる人をかな?」
ミーナが格納庫を出る。湊から鍵を受け取るのを忘れない。
残された三人の間を鍵を付ける音だけが響く。
「……あ」
湊がつぶやいた。思わず作業の手を止める。
「こいつら二人に何させるか考えないと」
抜けている、と思わなくもない。
「……とりあえず、今ここにあるのは三機だけだ」
【母】一機と【菊染】二機である。試験機は基本設計こそできているものの、主翼付け根と胴体前部しか出来ていない。
どっかからまた引き取ってくるか……。ハンガーにはあと詰めれば6機ほど入りそうだ。




