歓談
「……で、研究のサポートをしろと言われたと」
「それそれ~」
赤毛の犬獣人、カイが言った。その両脇には茶髪の少女、ジーラと黒髪の少女、ニーナがいた。ニーナをジーラの隣に持ってきたらグラデーションができるな、と湊は思った。
ほかの三人はそれぞれ好き勝手にハンガーの中をうろついている。ミーナが眉を顰めている。あまりいい気ではないようだ。
「なるほど……」
「でも、今は出来ることはない」
ミーナが言い放った。最初のころはこれぐらい冷たかったな、と思い出す。多重人格を引き延ばして、グラデーションにしたらこんな感じだろうか。
「サポートの内容位教えてくれても良いのではないか?」
ジーラが言った。そりゃ呼ばれて来たらこうなっていたらあまりいい気はしないだろうな。
何か言おうとするミーナを抑える。
「標的機曳航をしてほしい。全幅3メートルの無誘導グライダーだ。実戦配備機を改造するわけにもいかんからアスレティング・フックにワイヤーを取り付ける。それを曳航して離陸できるか?」
「……?」
黙ってニーナがカイを見る。どうやら空気振動を介さない最新式の意思疎通装置らしい、とジョークを思い浮かべた。勿論、口には出さない。
「出来んじゃね?でも……」
「なんだ?」
「残念ながらおたくの装置を信用しようがない。聞くと、事故を起こした直後らしいじゃないか」
ジーラが言った。どうやらマイナス事項は彼女が言うらしい。
「事故を起こしたのは誘導弾で、誘導機構に不備があったらしい。曳航してもらうのは一回も事故を起こしていない。あれの大型版だ」
湊は壁にかかっている3機の2メートルほどのグライダーを指差した。
「つまり、誘導機構の不備でこっちに飛んでくる可能性があるということだな」
「理論上、な」
ジーラの言葉にカイが付け足す。
「標的を外したら自動的に自爆するようになっている。あくまで爆薬を積んでいた場合な。今回は錘を積んでいるから自爆は無しだ」
「じゃあ!」
「ワイヤーが3000メートル以上あったら大丈夫だ。だが改造できないとなると、3000メートルは苦しい。そこで、今回は自爆用の爆薬を積もうと思っている」
黙って聞いている。うろついていた3人もいつの間にか集まってきている。
「誘導弾を爆破するだけなら一割で事足りる。遠隔操作で両方から爆破できるようにしよう。1000メートルのワイヤでも誘導弾なら1秒で追いつく。後方機銃手は?」
「わいやな。わい」
眼鏡をかけた中年の小太りの豹獣人がいった。……父さんと言っても通じそうなくらいだ。よく言えば貫禄、悪く言えばおっさん臭さが全身からにじみ出ている。
「…………」
「なんや?」
「あ、あぁ。向かってくる全長3000ミリ、直径150ミリの音速の1,2倍で飛ぶ物体を発見できるか?先端は赤い」
「曇りなら無理やな。晴天なら何とか」
「バックアップを頼む」
「任しとき」
話がまとまった。三週間後、改良版を試験しよう。




