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風と共に。  作者: フラップ
第二章 田舎的森林
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【母】

 ミサイルは何で機体に取り付けるか。戦闘機では【パイロン】と呼ばれる懸架装置が用いられる。本来なら抵抗が少ないほうがいいのだが何しろ試験機だ。柔軟性のほうがずっと重要なので今回は空気抵抗は考えない。


 構造は簡単。ペンチの取っ手みたいな3/4の円の形をした装置を主翼に二つ取り付けるだけである。また極端に魔力伝導性が悪いといわれる銅の板を魔力回路を遮断する形で取り付けるだけだ。これでパイロンからミサイルが離れた時に銅の板がパイロンに残り、回路がつながり、ミサイルが稼動するというわけだ。この銅の板の長さや形状で発射するタイムラグが決まるが、現時点での長さがちょうどいいのかどうかは全く不明。計算上、魔力回路がしっかりと推力を発揮するのは0,34秒後。時間差でその一秒後に追尾装置が起動する。


 今回標的は菊染が投下した無人標的機だ。格好よく言っているが要するに手投げ飛行機を大きくしたようなものである。ちなみにこれをつけたまま急旋回すると垂直尾翼にワイヤが絡まる。使った後はそのまま投下。人口密度が低いファンタジィだからできる技だ。


 ミーナの様子が余り宜しくない。ダメだと言われたお菓子を目前にした子供のようにせかせかしている。指摘するとへそを曲げてしまうので言わないでおこう。なんというか、格好つけること自体が可愛いという意図したものとは全く逆の効果を出してしまっているものだといえる。


 仕舞いには操縦席に座ってしまった。ミサイル積んでないからいいものの発射ボタンぱちぱちするのは止めて欲しい。こええ。


 本物のミサイルパイロンがどうなっているか湊は知らない。


 「はっきり言おう。今回の試験は、危険だ」


 「…………」


 あ、ジト目で見ないで。ジト目ってじっとりから来てるのかなぁ。ジロりからかなぁ。


 「……風防はレバー一つで外れるから。左側の赤い平べったいのがそれな」


 「生存確率は?」


 「未知数」


 「…………」


 「ミィ、強く生きろ………!」


 「交代は?」


 「不可」


 「…………」


 「あと二週間だから。あと二週間であと二人ほど入ってくるから」


 「試験は?」


 「今日」


 「……」


 「行くぞ」


 「うぅ、お母さん、湊に殺されるぅ」


 「人聞きの悪い…………。あ、そうだ。ニンバルの愛称つけるか?」


 「へ?なんで?」


 「菊染に付けたから」


 「あぁ。もう母さんで良くない?」


 「了解。「八式試験母機【母】」ね」


 「あ、本気にしないで」


 「じゃあ、俺は外から見なるから【母】にのって」


 「だからぁ……」


 そんな風に掛け合いながらも着々と準備を進めるのはこういう試験に二人が慣れたからと言える。まあミーナが湊のリズムに侵されたともいえる。


 ニンバル改め【母】と菊染は翼を連ねて離陸した。

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