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風と共に。  作者: フラップ
第二章 田舎的森林
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フォレスト

 ミーナの実家、二階建てのごく普通のお家。


 迎えてくれたのは温和な笑みを浮かべる優しげな中年男性だった。


 「やあ。よくおいでなすった。どうぞごゆっくり」


 「…(なあ、この方お父さん?叔父さんとかじゃなくて)…」


 「…(いや、家の父です)…」


 ガイスと耳打ちを交わす。嘘ぉ!?あの殺人鬼がこの温和なおっさんと同一人物?!


 地面が割れんほどに踏み込んでくる影。


 スパナが折れ曲がるほどの怪力。


 浮かぶ怒りの形相。


 あれがこのステッキを持った温和な獣人とは思えない。間違っても杖持ってる人がする動きじゃねぇ!


 「ああ、そうだ。家には年頃の娘がいるから、済まないが一回の客間で寝てくれないかね?」


 「え、えぇ」


 「夕食はうちの家内が腕を振るうから楽しみにしておいてくれ。うちの娘が世話になっているようだね。また迷惑をかけるかもしれないが、どうぞ宜しく見てやってくれ」


 ……………………猫をかぶるという言葉がある。しかしやはり本職の猫獣人には敵わない様だ。


 肩越しに暖炉が見える。その上に長剣と猟銃。一目で分かる。あれは飾りなんかじゃない。長剣も、猟銃も、ちょうど手が当たる部分が擦れている。作りも実践的。飾りの一つも無い。


 それに気付いた瞬間、男の目が一瞬暗く光る。笑みも、仕草も、立ち振る舞いも一切変わらない。唯眼だけが光っている。


 「……宜しく。フォルス・モーガンだ」


 「えぇ。宜しくお願いします。遠井湊と申します」


 日本で先生に向ける顔を貼り付けて返事をする。失礼と思われない、薄めた笑い。


 「……」


 「……」


 「……いや、済まない。君と似た人間をずいぶんと前見たのでね」


 「……?」


 「君と同じ異世界人。性根は腐り落ちているのにやたら頭の回る奴だった」


 「……」


 「君は……」


 如何かな?声に出さないフォルスの思い。手を出して握手する。ヤスリみたいにザラザラした手。


 「明日出るそうだね。明日は迎えられないから先に行っておくが、いつでもおいで。君は【面白い】人だ」


 「【面白い】かどうかは分かりませんが……」


 一旦区切る。二階からミーナが降りてくるのを視界の端で確認。


 「世界を跨いで変人呼ばわりされますからね。【楽しい】人であることは保障しましょう」


 【面白い】と【楽しい】。その言葉の差に込めたニュアンスは十分に伝わったようで、彼はますます笑みを深めて手を握り返した。


 「……何があったの?」


 ミーナ、そこは黙って背景に徹して欲しかった……!

わあ!湊が男らしい……!

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