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風と共に。  作者: フラップ
第二章 田舎的森林
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ニアミス

 「あぁぁぁぁ!ミーナが男連れてるぅ!」


 里に入って一番最初に、小学生くらいの女の子が声を張り上げた。驚きと好奇心に満ちた瞳には一切の邪気は無い。無いが無邪気とは時に恐ろしいものである。


 背後に殺気。敵意を通り越して殺意である。


 「……!」


 ネイチャーには通じなかったとはいえ、湊だって元冒険者である。反射的に体が動く。左前に倒れこむように回避。その上を長いナイフが通り過ぎる。


 後ろに立っていたのは、長身の獣人。その手には先ほどのナイフ。もう既に攻撃のモーションに入っている。


 鋭い――間に合わない!


 湊は魔方陣を構築。丸と二等辺三角形のシンプルな組み合わせ―――【初級無属性魔法:簡易防御壁】!


 ナイフはそれに当たる。魔方陣が弾け飛ぶ。


 その一瞬の隙を突き湊は構えを取る。


 相手を見る。ガイスによく似ている。地面を蹴り向かってくる――早い。


 獣人の里にはそれぞれのもてなし方や流儀があるという。ミーナかガイスに事前に聞いておけば良かった。


 こっちに武器は無い。相手が突きを放つ。全身に魔力を行き渡らせ、後ろに飛ぶ。


 ミーナの方を見るミーナは気まずそうに視線をずらした。教え損ねたのか!?


 相手はそのままナイフで薙ぎ払ってくる。


 腰のポケットからスパナを取り出す。相手のナイフにそれを合わせる。重い!


 「ぐ……!」


 思わず呻きが漏れる。相手は怒りに顔を歪めてナイフに力を込める。


 「……めを……」


 相手が何かを呟く。何だ――?


 「……娘を渡して堪るかぁぁぁ!」


 「…………は?」


 相手のナイフを弾き飛ばした。湊は呆然と動きを止める。


 『娘を渡す』……何言ってんだこの人……。


 後頭部に衝撃。地面が迫ってくる。いや、自分が倒れてるんだ…………。


 湊の意識はここで途絶えた。


 * * * *


 目を開けると、そこは木陰のベンチだった。焦点が合うのに時間が掛かる。広場か?真ん中にステージがある……。


 例の女の子がこちらを向く。結構遠い。声が聞こえずらい。頭が痛い。


 ガイスが駆け寄ってくる。


 「大丈夫か?」


 大丈夫だったら昏倒しねぇよ、という言葉を呑み込む。気分が悪いからって周りに当たるのは良くない。


 「う……あぁ、大丈夫だ。何だったんだ、全く……」


 「あ……あぁ、あれはだなあ」


 ガイスが気まずげに視線をそらす。


 「あれは家の父で……その、まぁ何だ、お前がミーナを貰いに来たんだと誤解したんだ」


 「……で?」


 「………………」


 ガイスは気まずげに空を見る。


 「で、来客をナイフで迎え撃ったと」


 「……申し訳ない」


 「あの状況で申し訳が立ったらそれはそれで凄いな」


 「………………」


 しまった、当たらない心算だったのにガイスに当たってしまった。


 「これ、お前の工具だ」


 「…………」


 頑丈な鋼鉄鍛造のスパナには深い切れ込みがつき、折れ曲がっていた。もし当たっていたら……。


 「お前の父ちゃん、化け物だな」


 「………………」


 しまった、当たらない心算だったのに……。


 「宿……」


 「何だ?」


 「宿を探さないと。ミーナは実家に泊まれるけど」


 「いや、お前も泊まれ。でないと申し訳が立たん」


 「……お言葉に甘えて」


 「あぁ。ミーナも父も今そこにいる」


 とりあえずガイスと俺はミーナの実家に向かった。

よし、そこそこコメディになった。

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