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風と共に。  作者: フラップ
第二章 田舎的森林
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ガイス

 「フラップサーティーン」


 ミーナがレバーを下げる。機首が上がるのを抑え、ファイナル・ターン。


 サイドウィンドウを一瞥。ミーナがそわそわしだした。


 「どうした?」


 「え……いえ、ちょっと寄りたい所があるから、寄っていい?着陸した後で良いから」


 「一泊する心算だったからいいけど……なんだ?」


 ミーナから返事は無かった。頻りに周りを見ている。視界を塞がない様、背をシートにつけた。


 「いたっ……」


 ミーナが頭を窓に打ち付けた。ヘルメット越しとは言え、痛いものは痛い。


 「着陸するからちゃんと座ってろ」


 返事は無かったが相手が動く気配。そわそわしているのは変わらないが。


 「スロットルスロー」


 滑走路が迫ってくる。思わず操縦桿を引きそうになるが、落ち着いて一拍遅れで引く。飛行機はこの一拍というのが大切だ。


 スロットルをカット。


 機体が沈み込む。


 衝撃。


 ここでもやっぱり一拍置いてブレーキを踏む。


 一気に踏むと危険だからじわじわと踏み込む。


 前に向かってG。


 そのまま誘導路へ。


 エンジンをアイドルに。


 「ミーナ、フラップアップ」


 ミーナの反応は無い。


 「ミーナ!フラップ」


 「あ、うん、ごめん」


 さっきからミーナの様子が変だ。どうしたんだろう。


 「どうした?さっきから」


 「ここには……」


 「ここは?」


 「私の実家があるの。ダウンフォレスト」


 驚いた。この近くに獣人の里があるのか。或いは都市部に住み着いた家なのか?


 こっちで自転車を借りてそこまで行こうか。


 パーキングブレーキをかけ、エンジンを切る。魔導ワイヤから魔力を抜いて、舵をフリーにする。


 さてと、ここは民官共同運用だから手続きはこっちに任せよう。向こうから整備士が牽引車に乗ってきた。


 「これが整備記録だ。燃料とプリフライト点検だけ頼む」


 「了解しました。それと……」


 「手続きはどうすればいい?ここは初めてなんだ」


 「いえ、こちらでフライトプランは受理しています」


 「分かった。助かる」


 もう既に手続きは終わっているようだ。普段隠れているが、こういうネイチャーの根回しは凄い。前は【飛べない豚】のストッパーに使ったが意外と優秀なのだ。平民だから余り優遇されていないが。


 ヘルメットは貸しロッカーに入れておく。この機体は司令部から借りたものだからだ。


 このまま泊まる所を探すだけでいい。基地でも頼めば泊めてくれるだろう。


 「湊」


 「ああ、自転車を借りようか」


 「いや、迎えに来てくれるように頼んだ。ほら」


 向こうから馬車が来た。あれか。


 中からミーナよりも年上の猫獣人が出てきた。湊を見て目を丸くする。


 「婚や━━」


 最後まで言わせず、ミーナが襲い掛かってその男にチョップを食らわす。意外と力を込めたようで、蹲って頭を抱えている。


 「紹介するね。これが私の兄」


 「っ痛ー。俺はガイス。宜しく。えーっと、お宅は……」


 「遠井湊。エンジニアをやっている。こちらこそ宜しく」


 ガイスがミーナと湊を見比べる。


 「私の隊の飛行隊長。任務のついでに寄っただけ」


 「ああ、なるほど」


 ミーナが男連れてくることなんて有り得ないもんな、という呟きはミーナにもしっかり聞こえていたようでガイスは本日二度目のチョップを食らうのであった。

アメリカン・コメディ(コーヒー的な意味で)

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