進むべき道
「ミィ、フェリー任務だ」
「ふぇ?」
ミィが目を開く。勿論、今まで閉じていたわけではなく今までより少し大きく開いただけだ。それだけでこんなに驚きオーラが出るとは……。ミィ、恐ろしい子……!
ふざけるのは程々にして、ミィにフェリーを頼むのは本当だ。フェリーとは、燃料だけを積んで機体を輸送することだ。
「今回運び込むのは中型攻撃機【ニンバル・シスターズ】だ」
【ニンバル・シスターズ】とは……大手航空機製造会社【イカロス】製の最後の軍用機だ。何故最後かというとイカロス社はこの攻撃機を作った後国の投資を受けて半官営化、半官半民の【フェインダース】となってしまったからだ。ファンタスはフェインダース製、スクリプトはまた別の会社だ。
中型双発複座のニンバル・シスターズはこの命名の元となったニンバルR-201魔導発動機を二発積んでいる。当初は同形態の単座戦闘機型と二機種で『シスターズ』だったのだが戦闘機型はキャンセル、名前だけが残った形だ。
何故この機体を編入するかと言うと、都合が良いからだ。考えても見てほしい。爆発するかもしれないミサイルを胴体に搭載するのは危ない。脱出する余裕が無いからだ。すると当然主翼に搭載することになる。だが残念ながら菊染にはミサイルを安全に積める場所が無いのだ。
そこでテストベッド機が必要になる。整備士一人で整備でき、この菊染が二機入ったハンガーに入るサイズで、尚且つミサイルが爆発しても最低限風防を爆破してパラシュートで脱出するだけの時間を稼げるくらいの頑丈さが必要だ。しかも、脱出した時に垂直尾翼に衝突しないために双垂直尾翼式で無ければいけない。寧ろあった事が奇跡というレベルだ。
「と、言うわけでフェリーだ。行きは俺が司令部のヴェイバスで送る」
「了解」
ミィがヘルメットを取りに菊染に登っている間にヘルメットを取る。気付かないうちに埃をかぶっている。それが、進むべき道を指し示している気がした。




