ミサイルとおもひで
「へっへっへ」
「湊、それ悪役」
ミィからの鋭い突っ込みが入る。二つ繋げたデスクの上には爪楊枝みたいに細長く白い棒が乗っかっている。それに未塗装のフィンを用意。ドライバーとねじを準備。
「珍しいな。ミィがわざわざ来るなんて」
「実験台にされ━━」
「正解」
実際、ミィに発射試験をしてもらうつもりだ。ミサイル後部から台に乗せる。流石に重い。ミィの身長よりずっと高い。此処の天井だとつっかえてしまう。手動エレベーターが無ければ格納庫まで持ち上げられないだろう。
「ねえ、湊がする訳にはいかないの?」
「高Gに耐えられるのがこの飛行班でミィだけだから」
「人数の増強は?」
「あと二ヶ月で人員表更新だからもしかしたら来るかも」
この世界には通信施設もデータセンターも無い。軍総司令部では各旅団の人数なぞ確認しない。各飛行団が各飛行隊から人員表を受理するだけだ。その前にドカっと異動が増えるのだ。決算間近のスーパーみたいだ。いや、別にスーパーだけじゃないが。
「つまり━━」
「おまいさんが、これの試験をすることになる」
苦虫を噛み潰したって程じゃないが苦い顔。引き攣っているのとはちょっと違う。
「飛行機の改良はいい、でもこんな得体の知れない物積んで飛ぶのは……」
「得体の知れなくない!前の世界では有り触れてた!」
嘘である。日常生活にミサイルが有り触れる終末的な世界ではない。
「……これを辞退する方法はある?」
「否」
「……」
「……」
「にゃ」
「ん?」
ミィが謎の声を出す。聞き返すが多分これについて触れないほうがいい。獣人がうっかりそういう声を出した時にはノータッチ。例のアストンが決めたことらしい。何やってんだアストン。割とどうでもいいことにこだわるなぁ。
「了解」
「あれ?意外と簡単に決意したな」
「いや、多分大丈夫だと思ったから」
「……」
「だから、了解」
「……」
いつの間にか普通の顔に戻ったミーヤが頷く。
菊染が成功したからか、ミーヤは湊の技術に対して信頼を置いてくれたようだ。
それが……おそらく成り行きが含まれていたとしても……うれしかった。
止まってしまった手を動かす。ミサイル前部を台に載せ、尾翼から取り付ける。
湊が黙って作業を続ける。それをミーヤが黙って見つめる。
聞こえるのは金属の触れ合う音だけ。
ミーヤと僕の距離は約2m。
振り向いて驚かしたら猫みたいに飛び上がるだろう。耳が糸で吊り上がったように立つのが面白い。前やった時には二、三週間半径5m以内に入らせてくれなかった。いや、表情無しに後ずさる姿は心に深く突き刺さりました。大分痛かったです。
フラグが立たない




