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風と共に。  作者: フラップ
序章
1/50

プロローグ

 「後方!」


 「よし!」


 「魔導発動機(エンジン)スタート!」


 言われた直後、(ミナト)はキャブに左手を当てて魔力を流した。電車のインバータ音のような音が響き渡る。右手の旗を上げた。


 「イグニッション!」


 ミーナが左手を振り下ろした。右手で操縦席右手の赤いイグニッション・ボタンを叩く。


 排気管からチロッと紫色の陽炎が吐き出された瞬間、魔導発動機(エンジン)が回り始める橙色(だいだいいろ)に塗装されたプロペラが回り始める。


 魔導発動機の下にあまったチョークが液体になって滴る。地面についた瞬間、蒸発して染みも消えた。かぶることなく、やや乾いた音を立てて回っている。倒立V字型8気筒空冷の魔導発動機は調子よく回っている。


 ミーヤが操舵チェックをした。残りも左右ずれも無い。右エルロン・左エルロン両方とも舵角は同じ。機体下面のスプリット・フラップも引っかかりも無い。ラダーは垂直尾翼がプロペラ交流対策で傾けてあること以外は傾いているところや偏っているところも無い。


 右手の上げていた旗を回す。ミーヤがキャノピーを閉めた。


 車輪止めを転移魔法で外す。これもチョークと言うからややこしい。旗を下げる。


 ミーヤは親指を立ててタキシー・インしていった。帽子を三往復させてかぶる。汗が蒸発したので気化熱効果で冷たい。


 車輪止めを回収してピトー管キャップをポッケに突っ込んだ。


 ちょうどミーヤ機が離陸していった。


 この世界に来て三年、ミーヤの乗っているスクリプトももうそろそろ退役が始まるだろう。そうしたら……退役機をガメてテストベッド機にでもしよう。民間に払い下げられることもあるぐらいだから簡単に引き取れるはず。工作機械も魔法がある。


 ファンタジィなこの世界には様々な【現代技術】がある。医療や軍隊、理科や温泉まで。


 最初は驚いたがよくよく考えれば簡単なことではある。今までに何人この世界に【異世界人】が来ていて、そいつらは何をしたか。


 転移の恩恵で勇者になった奴だっている。でも精々活動期間は何年、十何年が精一杯だ。そのあと、何を始めるか。現代技術の再現だ。特に料理関係は多い。この世界の中でも一つのジャンルとして保っている。何故料理か。簡単だ。比較的誰にでもできて、比較的再現が簡単で、比較的分かることが多いからだ。


 その中で、難しいことに挑戦する奴が出てきて、飛行機やら鉄道やら作り始めて今に至る。そりゃカオスになるわな。


 町を歩けば分かる。始めてみた奴が腹を抱えて爆笑するほどに面白い。言うことがあるとすれば鯛焼きにトマトスープはナイ。あれは無理だ。あとバナナチョコに魚醤も。


 その中で湊が選んだのは研究分野で、大好きな飛行機だった―――。







  ハンガーに向かった。ハンガーの下は対魔法弾シェルターになっている。金剛鉄アダマンタイトで補強されたシェルターは相当頑丈だ。金剛鉄と言うと高価で貴重なイメージがあるが実際はステンレスのように鉄に魔力付与して錬金を加えたものだ。異世界人が魔改造を始める前は貴重で高価だったんだろう。まったく異世界人様々だ。


 おかげでドワーフの仕事が減ったり冒険者の仕事が軍隊によって駆逐されたり混乱はあったらしいが。自分のパワーバランスを考慮して行動してほしいものだ。職人村がいくつかつぶれて孤児が増えたと言う話も聞いた。おおかた、俺TUEEEとか言っていろいろやらかしたんだろう。軍隊は空軍や海軍は軍人が多いが陸軍は奴隷が多いと聞く。手柄を上げたら開放するらしい。


 絶対王政の国も結構あるがここは共和制。収入のうちの税は大体二十%ぐらい。地租改正とか冗談じゃない。


 ただ、自動車はサスペンションの問題がきついらしい。騒音も酷くてとても使えたものではないとか。ウォークリフトみたいな小型の奴なら実用レベルに達してるらしい。それよりも自転車が大人気だったが。比較的安く、整備も簡単で場所もとらない自転車は冒険者や旅人の間で爆発的に広まったそうだ。歩きよりも効率がいいらしいからな。


 対魔法弾シェルターの中に入る。いつもここで生活している。折りたたみベッドと、机が一つ。魔導コンロとやかんとインスタントラーメン。(これも異世界人の発明)あとはボール盤と旋盤、いろいろと工作機械。全部モーターの変わりに魔法。魔力を流して調節する。


 ただこの魔力と言うのが難しい。魔力の量と強さがあって、魔力の強さが言ってみれば濃度、量がそのまんま量といえる。魔導発動機を回す時、トルクを強くしたければ濃度を上げて、空気と混合させ、プラグに刻んである小点火ショート・ファイアの魔導式を発動させ(これも魔力)その魔導式に反応した魔素が反応、発火して(このとき魔素は膨張しない)その熱で空気が膨張、ピストンを動かす。


 魔力と魔素の違いも難しい。魔力は体から出す時、または魔法として発動した時の力(火・水など)で、体から出す魔力を多くすればその分発動時の力も強い。魔素はタンクに入ってる時のもので、魔力の元。魔法は、体から出た魔力が魔素に変換され、任意の場所と時に魔力に変換され与えられた力と要素(主に火や水)が発動するものだ。つまり、魔力は体内にあるか発動する瞬間にしか存在することができない。術式を間違えると崩壊し、無属性の力になってその場で四散する。


 魔素は、温度も膨張も無い。与えられた属性により周りの物質に熱を与えたり硬化させたり軟化させたり、つまりはエネルギーを与えるのだ。


 また、魔素はその存在を一時的に変えることができる。それには魔力の供給が不可欠だが。それが魔力盾シールドであり、魔力斬撃スラッシュだ。


 もうそろそろミーヤ機のエレベータが寿命だったはず。もう既にエレベータは届いている。予備のエレベータなどの部品はハンガーごとにある。下手な整備士は届いた部品を使うが湊は予備から使う。


 待っている時に焦る事を湊はしないことにしている。墜ちた機体も、死んだやつらも、湊にできたこともできることも整備を完璧にすることだけだ。


 煙管に煙草を詰めて火であぶる。紙巻煙草は面倒くさいのだ。巻いた状態のは売ってない。


 木箱の上に昨日置きっぱなしにしたグラスがある。今飲むわけには行かない。帰ってきた時の整備が必要だからだ。


 脇に置いたパイプいすに座る。ギィと音が鳴った。


 ハンガーの外に出た。春風が首筋を撫でる。煙が50cmほどで見えなくなる。


 偶然だがメートル法だったのは日本人の湊にとって良かったといえる。息を吐く。空気が冷たい。


 煙草が無くなった。煙を捨てて、ポーチに入れる。中が何層にもわかれてる奴だ。ミーナが戻ってくるのは二時間後。それまで自由時間。


 鼻歌を歌う。元の世界でも古い歌。流行についていけないからだ。マイペースな自覚はある。仕方ない、生まれつきだ。


 今では歌える現代の歌もずいぶんと減ってしまった。向こうでの記憶も薄れてきた。あまりにも変化が大きすぎたのだ。おおよそ現代人の想像するファンタジー世界。


 剣、魔法、獣人、ドワーフ、エルフ、ミスリルetc……。


 記憶と常識を一度捨て去る必要があった。でもそれは研究者とはいえ一般人には難しすぎた。そこで湊がとった思考形式は観察である。全然普通じゃない。


 世界を観察し、自分を実験装置とする。一種の賭けだった。もし普通に生きたら町に付いた途端絶叫しただろう。あるいは飛行機を見たときに。


 飛行機を見たときの湊の感想は……


 効率悪っ!!!!


 だった。

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