冬の始まり
「しょうー!! 早く起きないと遅刻するよー!! 今日は終業式だよー」
一階から空の声が聞こえる。
「もー少しだけ寝かせてー」
空には聞こえない程の小さな声で返事する。
五分くらいすると……
「さっさと起きんかー!!」
ものすごい勢いで扉が開けられる。
――こいつは空。俺と同い年で血は繋がってないけど家族みたいなものだと思う。俺の母さんは小さい頃に死んじまって、天涯孤独となった俺は空の母さん亜紀さんに引き取ってもらって生活してる。いつか亜紀さんには礼をしたいな。
「まだ寝てるの……翔あんた遅刻するよ」
薄目で空を確認する。
「今何時?」
「8時」
「嘘だろ!!」
ベッドから飛び降りものすごいスピードで下に降りていく。
「亜紀さんおはよ!」
身支度のために洗面所へと走って向かう。
リビングから追い打ちをかけるような亜紀さんの声が聞こえる。
「翔ー早くしないと遅刻しちゃうわよ」
数十分後洗面所から出てきた。
「空は?」
「もう行った」
「やべえ! ごめん、今日朝食いらないから!」
「あっちょっと翔待って!」
玄関に向かおうとするとき、呼び止められる。
「なに?」
「深く考えなくていいけど・・・・・・」
亜紀さんがなにか躊躇っている。
「どうしたの?」
翔は急かすように聞く。
――走んねえと遅刻しちまう!
「私に・・・・・・もう一人娘がいたらどうする?」
「亜紀さんに? 俺はなんとも思わないよ、むしろ今までこんなに良くしてくれてるんだ、なにか困ってることあったら何でも言って。娘がいて引き取るとかなんでもいいからね」
翔は冗談のように笑いながら言う。
「そっか・・・・・・いやそれだけだよ翔」
「じゃ行ってきます!」
俺は学校へと向かった。