第1話異世界
目を開けた瞬間、まばゆい光が視界に差し込んできた。
「……ここは、どこだろう」
見上げた空は、どこまでも青く澄んでいる。
吹き抜ける風は穏やかで、不思議と嫌な感じはしなかった。
遠くを見渡すと、川や森が広がっている。
さらに目を凝らせば、ゲームでしか見たことのない動物や、見慣れない種族の姿まであった。
――ここは、もしかして。
僕がいた世界じゃないのかもしれない。
確か、さっきまで教室にいたはずだ。
それなのに、そこから先の記憶がまるで思い出せない。
夢だろうか。
そう思って自分の頬を思いきり引っ張る。
「いたっ……」
はっきりとした痛み。
どうやら、これは現実らしい。
どうするべきか迷いながらも、遠くに見える村を目指して歩き出す。
その時だった。
森の奥から、かすれた声が聞こえた。
「……助けて」
思わず足を止める。
声のする方へ向かうと――
そこには、耳の尖った少女が三人の男に囲まれていた。
「こんなところに、幼いエルフの子どもがいるとはな」
「ここで少し楽しんでから、売り物にするか」
耳を疑うような言葉に、考えるより先に体が動いていた。
「何をしてる!」
男たちがこちらを睨みつける。
「なんだ、ガキか」
「さっさと帰れ」
地面に落ちていた剣を拾う。
部活で少しだけ習ったことを思い出し、必死に構えた。
二人に向かって突っ込む。
その隙に――
残りの一人が、エルフの少女へと手を伸ばした。
「――っ!」
反射的に彼女をかばい、腕を伸ばす。
次の瞬間、激しい衝撃が走った。
視界が揺れ、力が抜ける。
腕が、思うように動かない。
それでも歯を食いしばり、残る男たちを追い払った。
盗賊たちは舌打ちを残し、森の奥へと逃げていく。
静寂が戻った頃、遅れて全身に重さがのしかかる。
――さっきまで、興奮していて気づかなかっただけだ。
そんな考えが浮かんだところで、僕の意識は途切れた。
目を開ける。
「……ここは」
周囲を見渡しても、誰の姿もない。
それに――
切り落とされたはずの腕が、痛くない。
見ると、きちんと包帯が巻かれていた。
(誰が……?)
その時、見覚えのある少女が近づいてきた。
「起きましたか」
「あの時の……エルフ」
「はい。あの時はありがとうございました」
自分と同い年くらいの少女が、静かに微笑む。
「ここはどこ?」
「ここは精霊の森です」
少女は胸に手を当てた。
「名乗るのが遅れました。私の名前はルシアです」
「僕は凪成」
「凪成さん……あの時は本当に、ありがとうございました。私を助けてくれたせいで、その腕が……」
「いいよ。助けられて、よかったと思ってる」
ルシアは少しだけ目を伏せ、それから真っすぐ僕を見つめた。




