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異説鬼退治⑦

 桃太郎たちは最上階へとたどり着きました。

 そこは何もない部屋でした。蛍光灯が三つ、天井にあるだけで、他には机も電話も伊勢海老もありません。

 いくつかある窓からかすかに外の光が入ってきていました。

 奥には影が佇んでいます。

「よくぞ来た」

 聞き慣れた声がします。

「その声は……おばあ」

「ヴァヴァアTHEウルトラグレートマグナムテンペストLV392メガエンジン搭載ザビエルモード発進!」

 そこには甲冑を纏ったお婆さんがいました。無駄に長い名前が素敵です。

「お婆さんが、鬼が島㈱の社長だったの?」

「そうじゃ。ワシこそ影の総帥、ヴァヴァアTHE……」

「長いからもういいよ、ソレ」

 お婆さんはしょんぼりと肩を落としました。

「ともかく、最終決戦と行こう。ダイゴロウ、ポアロ、ホームズ、行くよ!」

 ラスボス戦の開始です。桃太郎は抜刀して、構えます。亀さん、涙目です。

「まずはこれでも喰らえ!」

 桃太郎はダイナマイトをホームズにまきつけて、それをお婆さんに投げつけました。

「甘いわ!」

 お婆さんは金属バットでホームズごとかっ飛ばします。

「サル爆弾作戦は失敗か。次は……」

 刀を握り締めました。

「皆で一斉に突撃するぞ。かかれえ!」

 桃太郎は二匹の忠実な下僕+亀と一緒にお婆さんに突撃しました。

「ラスボスは美人のお姉ちゃんじゃねえのかよお!」

 亀さんは怒り心頭です。あまりにも理不尽な怒りですが。

「前は美人でムッチムチの二十歳の女子大生だったのじゃ」

 全身包帯ぐるぐるのミイラ男が現れました。声はお爺さんです。桃太郎たちは攻撃を中止しました。お爺さんが現れるということは何かが起こるということです。さすがに学習済みです。

「あれは、何十年も前のこと。ワシはそのおにゃのこに惚れておった。巨乳で可愛い、目の前にいるクソババアとは対照的な大和撫子じゃった」

 ミイラお爺さんはしんみりとした口調で語りました。ミサイルランチャーでセクハラジジイをぶっ飛ばさないようにと桃太郎が必死になってお婆さんが暴れるを止めています。

「じゃが、じゃが……! ワシはその女子おなごに騙されたのじゃ! 散々貢がされた上、変態扱いされて警察に追い回される始末! しかも、その女子は鬼が島㈱の社長をしておる娘。食い物の恨みは恐ろしいということを娘っ子に教えてやらねばなるまいと、鬼退治を始めたわけじゃ」

 随分アホな理由で鬼退治を始めたものです。というか、突っ込みどころが多すぎて突っ込めません。

「ワシは犯罪を起こさずに鬼が島㈱を攻略する自信がなかった。そこで後継者を育てねばと思っておったのじゃ。そこに、お婆さんが桃太郎を拉致して帰ってきた。これは渡りに船とばかりにワシはピーンと来た。こやつはワシの願望の救世主になりえると」

 桃太郎は怒髪天を衝いているお婆さんを放しました。

「おにょれクソジジイ! よくも浮気しくさりおったな! 天誅を加えてくれるわぐへへ」

「ワシの人生とムッチムチの女子大生を返せぇ!」

 壮絶な夫婦喧嘩が目の前で行われています。

 桃太郎は失笑し、ダイゴロウはあくびをし、ホームズは紫色のみたらし団子を食ってのた打ち回り、ポアロは持ってきた『完全犯罪2009』という本を読んでいます。

「わが社の社長室で騒いでおるのは誰だ?」

 突然野太い声が響きました。

 桃太郎たちはその声の方に振り向きます。

「わが名は鬼が島権兵衛。お主たちは何者じゃ」

 いわおの如き体躯をグレーのスーツで固めている壮年の男でした。長身は天を衝くほどで坊主頭が光ります。右手には金棒。なるほど、この男が『鬼』ですね。

「セクハラジジイ!」

「爆裂ヴァヴァア!」

 最低な自己紹介で雰囲気ぶち壊してくれてありがとうございます。

「こっちのエイリアンは無視してください」

 桃太郎はクールに言いました。。

「僕は桃太郎。東京都大江戸高校一年生です。こっちは犬のダイゴロウ、キジのポアロ、そしてそこでのた打ち回っているアホはサルのホームズです」

 てきぱきと自己紹介を済ませます。亀はいじけていますが、放置プレイです。

「お主が桃太郎か。現代になってまでも桃太郎一族と戦うとは、これも宿命か」

 ダンディな『鬼』は金棒を構えます。

 桃太郎も刀を構えますが、目は相手を捉えておらず、虚空に彷徨っています。

「どうした? お主はワシを倒しに来たのではないか?」

 桃太郎は沈黙で答えました。

「桃太郎! とっとと鬼を倒してぎゃるをお持ち帰りするのじゃあ!」

 その声は木霊するだけでした。

「これ以外に、戦う以外に解決策はないのかな?」

 桃太郎は強い視線を鬼が島権兵衛に向けました。

おはようございます、Jokerです。

そろそろ鬼退治も佳境です。

今までお付き合いくださった方、ありがとうございます。


ではまた次回お会いできることを祈りつつ……

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