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推しの超有名不思議系美少女コスプレイヤーが、底辺配信者の俺に何故かグイグイ来る件 ~推しと配信者コンビ結成でドキドキ・キュンキュンの毎日です~

作者: 佐月唯人

「おでんの婚約者さん、ばいポリ~! ありがとうございました~! それでは次の通話のお相手を決めたいと思いますー! 俺こと『ローポリ少年タモツ』と通話したい方は、コメント欄にて立候補の方よろしくお願いしますー!」


 顔隠しの、口だけ出ている自作タモツマスクの位置を左手で調整しながらコメント欄を眺める。

 Youmoveの生配信の醍醐味はやっぱりコメント欄での視聴者とのやり取りだと俺は思うのだ。


コメント

【おでんの話してただけなのにおもろかったww】

【通話乙 時間的に次がラストじゃない?】

【いつ見てもすごいマスク】


 俺はチャンネル登録者数が二十三人の弱小配信者ではあるが、こうやって配信すると固定メンバーみたいな人たちがだいたいいつも数人は来てくれる。

 うち一人はリア友の親友ではあるんだけどね。

 今は同接七人か。まあまあかな。


「そうですね、じゃあ次が今日のラストチャンスです! 誰かいませんか―!」


【はいはい! 私も話したいです! 初めてですけどいいですか?】

【うお、ルーファ?! マジか?!】

【本物なのか?!】


 立候補してくれた人のハンドルネームに目をやる、と。

 そこには、ルーファ・A・ケンタウリという名前があった。


「は、え?! ルーファさん?! 本物ですか?!」


 俺の推しの、短文投稿SNS・MUR2のフォロワー数が約二百万人の、超絶有名な美少女コスプレイヤーが自分の配信に来てくれているだけでもびっくりなのに、その上通話の申し込みだと?!


【本物ですよ! 証拠写真うpしますね(URL)】


 彼女が貼ったURLは――、MUR2の、ルーファ本人のプロフィールページだ。少なくとも危険なサイトではない。というか、個人的に毎日巡回しているページだったりする。

 そしてリンクに飛ぶとそこには、アニメ『いつでもそこに青い空』のメインヒロイン「時東めぐる」の私服コスプレをしているルーファさんの新規自撮り写真とともに、この配信のURLを添えた『ローポリ少年タモツの配信用』という短文の書き込みがあった。

 さらっさらの白髪ロングが美しい!! 時東めぐるは白髪キャラなのだが、実はルーファさんも地毛が白髪ロングなのだ。

 そしてニットのセーターの開いた胸元からこぼれんばかりの双丘がエッッッッッッッ!

 いやいや、落ち着け、落ち着け。


 本物だ!

 この機を逃がすな!


「確認しました! 申請ください!」


 ビデオ通話で使用するズームアプリに連絡先の追加申請が来る。えーっと……。


「る、ルーファ・A・ケンタウリって名前で合ってますか?」


 声が震える。落ち着け~!


【合ってます!】


 すぐさまビデオ通話に招待すると、向こうは爆速でビデオ通話に入ってくれた。

 時東めぐるのコスプレをしているルーファさんがほほ笑んでいる。くぅ、可愛い。

 音声と映像を配信に乗せるための操作もする。


「ルーファさん、こんポリ~! もうビデオ通話が配信に乗ってますよ!」


 こんポリとは、こんにちはとポリゴンのポリを組み合わせた独自の挨拶だ。本来の意味から離れて朝や夜にも使うけどね。他にもバリエーションとして別れの挨拶のばいポリがある。そう、さっきも言ってたね。


『もしもし、タモツさんこんポリ~! ルーファです!』


 真っ白い背景の前で、憧れのルーファさんが喋っている。


「ルーファさんと通話できるなんて感激です!」


『あはは、こちらもいつも見てます!! 今日は通話できてうれしいです!』


 ルーファさんがリアルタイムで返事をくれる……。

 通話だから当たり前ではあるけど、この状況は夢のようだ……卒倒しそう。

 いやいや、今気絶するわけにはいかない!


「いつも見てくださってるんですか?!」


 俺はやっとのことで返事をした。


『はい! タモツさんは私の推しですから!』


 嘘だろ?! あのルーファさんが俺を推しだと?!

 本当に夢なんじゃないか?!


『あ、信じられないって顔してますね。じゃあこれでどうでしょう……そのオリジナルマスクはタモツさんが世界初の3D格闘ゲーム「ポリゴンファイター」のキャラ、リュウスケの最初のモデルを参考に作った物ですが、その制作も見ましたよ! 作る間は目出し帽かぶってましたよね!』


「最初の配信じゃないですか?! 信じます、信じます! 俺もルーファさんが推しなので、今夢みたいです!」


【てぇてぇ】

【ガチ勢で草】

【出来が良いマスクだよな】

【それであんなにカクカクしてるんだ】

【初見さんがいっぱいだ】

【ルーファちゃん効果で同接百人まで来てるぞ! 囲め!】


 そうか、さっきのルーファさんのMUR2での書き込みが色んな人に見られて、そこから人が来てるのか。


『色々あってチャンネル登録やコメントはしてなかったんですけど……ごめんなさい』


「いやいや、見てくれてただけでも嬉しいですから! 謝らないでください!」


『ありがとうございます!』


 そう言ってルーファさんはセーターの袖を直した。


「いつ見てもクオリティの高いコスプレ衣装ですけど……作るのにどれくらいかかるんですか?」


 このマスクだけでも結構大変だったのに、彼女は毎回違う衣装を着て自撮りを上げている。

 その労力を想像すると、よっぽどコスプレが好きなんだろうと思える。


『え、いや、これ星間魔法で作るので一瞬なんです!』


「え? 魔法で? いやいやいや」


『むぅ、信じてませんね。今やって見せましょうか? あっそれだと裸が映っちゃうか』


「落ち着いて! BANされるから! やらないで!」


 彼女の裸を想像してしまいながら慌てて止める。

 このチャンネルは弱小だが、愛着があるのだ。


『えーでもあれは人間の裸がダメなだけでぇ、私は星だからぁ』


「どう見ても貴方も人ですからね?! あっ、ちょ、星って信じますからやめてください!」


 ルーファさんが何かしようとする身振りをしたので慌てて止める。


【草】

【設定に忠実だな……好感が持てる】

【設定とは何だ ルーファちゃんは星だゾ】

【おっと野暮ですまねえ】

【ルーファガチ勢おって草】

【どんどん人が増える~~五百人超えた!】


 そう、俺もガチ恋勢だから知っているが、ルーファさんは自身を宇宙の彼方のアルファ・ケンタウリA星という恒星そのものだと公言してはばからない不思議系コスプレイヤーなのである。

 彼女はその設定を律義に守った発言や投稿しかしていないため、ルーファさんガチ勢もいつしかその体で話しかけるようになっていた。

 ……俺? 俺は陰キャで奥手のガチ恋勢だから今までMUR2で話しかけることもできなかったよ。

 だからこれは降ってわいた千載一遇のチャンスなのである。


「ルーファさん……さすがですね!」


 彼女は設定に忠実なのに素でしゃべっているように見える。

 MUR2の活動では短文と写真なのでまだ誤魔化すこともできようが、今現在はリアルタイムでの映像なのに、印象がそれと変わらない。

 さすがのプロ意識と言える。


『え? はい、ありがとうございます?』


「ルーファさんと通話できて本当に幸せです。あ、やべ、感激で涙が。マスクがふやける?!」


 このマスクの材料は主に段ボールと画用紙なのだ。


【タモツのテンションがおかしくなっとるww】

【ルーファちゃんと通話なんて羨ましいいいいい】

【何気にルーファちゃんはMUR2以外での露出はこれが初なんじゃないか? この回伝説になるぞ】

【めちゃくちゃ切り抜かれるだろうな】

【一般人による地球上での目撃例すら無かったのにな……どこかの企業による架空の人物とか言われてたのに】

【同接一千人行ったぞ!】

【初見だけどタモツってやつも発想が天才だよな、ローポリ風のマスクをかぶればリアルバーチャルYoumoverの出来上がりってわけか】

【そうそう、初期は金無かったから。今は本物のVmoverできるくらいのパソコンだけど、マスクに愛着湧いたんだってさ】


『タモツさん、いつもの挨拶を私に向けてやってくださいよ!』


「喜んで! スゥ……「ルーファさん、こんポリ~~!! 今日もお相手は『ローポリ少年タモツ』ですよ~!!」……どうでしたか?!」


『尊すぎて超巨大フレア出しそう……』


【ルーファちゃんガチでうっとりしてて魅力的。本当に推しなんやな】

【スゥ……草 気合入っとるなww】

【超巨大フレアで大草原不可避】

【てぇてぇ】


「あはは、そんなに喜んでもらえるとは思わなかったです」


『ガチ勢ですからね、私は! 予告されてた動画投稿も楽しみにしてますよ!』


 かねてから予告していたネタ動画の作成のことも知っているんだな。

 信じがたいが本当にタモツのガチ勢なのだろう。


「ありがとうございます!」


【おーい、もう二十一時半近いぞ】

【タモツくん、そろそろ時間じゃないのかな?】


 おっと危ない、俺は高校生だから二十二時までしか配信ができないのだ!

 安全をとっていつも早めに二十一時半で配信を切り上げることを常連は知っている。

 おかげで助かった。


「すみません、ルーファさん。そろそろ配信を切り上げないといけなくて……」


『もうこんな時間?! 楽しい時間は過ぎるのが早いですね!』


「はい……」


 通話が終わってしまう。

 それがなんだかとても寂しい。


 そうか。

 この通話が終われば、もうルーファんさんとのつながりは無くなるようなものだからだ。

 それでいいのか、俺。

 いや、良くない。良くないけれど――。


 ここで告白するのも何かが違う気がした。

 でも、つながっていたかった。


 俺は、勇気を振り絞って――。


「ルーファさん、是非またコラボしてください!」


 淡い期待を込めて、そういった。

 すると。


『良いんですか?! やったあ、じゃあ次は是非、生で出演させてください!』


「へっ? い、良いんですか??」


 今まで本人のMUR2アカウント以外で露出が一切なかったのに?

 メディアの取材も不可能と言われていたのに?

 これはすごいことになったぞ。


『はい、もう都合がついたので。それに誘ってくれたのはタモツさんの方ですよ?』


「そうでしたね! いやあ、緊張で何が何やら」


『あはは、オフコラボ、楽しみにしてますね』


「こちらこそ! では、後でメッセージを送りますね」


『は~い。じゃあ、お疲れさまでした~。ばいポリ~~!!』


「乙です! ばいポリ~~!!」


【生ってことは直で会えるってこと?!】

【うらやましいいいいいいいいいい】

【これは次回に期待!】

【何気にルーファ生出演とか世界初じゃね】

【同接が万越えしとるwww】


 通話中は緊張であまり気にならなかったが、コメント欄が恐ろしい速さで流れていく。

 ルーファさん効果は絶大だ。


「それでは皆さん、ばいポリ~~!! 次の配信をお楽しみに~~!!」


 俺は興奮冷めやらぬ中、いつもの終わりの挨拶をしつつ、時間を違反しないため早々に配信を閉じた。

 パソコン用の椅子にどっぷりと座り直して深く息をはく。


「は~~……。俺が、推し? マジなのか……」


 感慨にふけっていると、スマホが震える。

 チェックすると、配信にも来ていた親友のソウちゃんがラインのメッセージを送ってくれていた。


『ヤスちゃん、すごいことになったな! 羨ましいぞおおおお』


『ありがとう……! 自分でも何が何やら。変なこと喋ってなかった?』


『いや安心しろ、極めて常識的だった。上手くやれよ』


『上手くって……まあ、そうなったらいいな』


『いいなじゃなくて、おまえがそうするんだよ! お休み』


『そうか、そうだな。おやすみ』


 メッセージのやり取りが終わる。

 ルーファさんと付き合う……か。今は想像もつかない。

 とりあえず、鉄は熱いうちに打てということで、ズームでルーファさんに次回のコラボについてメッセージを送っておこう。

 ズームアプリはビデオ通話だけではなく、文章でのメッセージも可能なのだ。


『ルーファさん、先ほどはありがとうございました!』


 すると、爆速で返事が返ってくる。


『こちらこそありがとうございました! チャンネル登録させていただきましたよ!』


『わあ、登録ありがとうございます~!』


『いえいえ! 次が待ち遠しいです』


 そこまで言ってくれるとは。


『次は生出演を希望とのことですが、こちらまで来られるのでしょうか……? 遠くないですか? 実は千葉県なんですけど』


 撮影はよそでもできなくはないが、機材やマスクを持っていく必要があるし、できれば近くで行いたい。

 しかし、ルーファさんに会えるのなら東京くらいであれば行っても構わないのだが――。


『あっ、それなら同じ県ですね』


『えっ? 菜原市ってわかります??』


『私も菜原市ですよ!』


「マジかよ?!」


 あまりのことに声が出てしまった。

 それで地元で全くうわさにならないの、逆に凄いな。

 いつも変装してるとかなのか?? 大変そうだが。

 いや、そもそも地球上で目撃例がないんだったな。てことはやっぱり変装かな。


『すごい偶然ですね! それならすぐにでもコラボできそうです。いつなら都合つきますか?』


『いつでもいいです! そちらに合わせられますよ!』


 おお、ありがたい。

 じゃあ、一応休日の土曜日にしておこうかな。

 今は春休みではあるが、それは学生の俺の都合であって、社会人と思われる人に平日は厳しいだろう。


『四月五日の土曜日、十三時に待ち合わせでいかがですか?』


『ばっちりです! ところでコラボって何するんですか?』


『うーん、考えてなかったです。無難なところでは対戦ゲームでゲーム実況とか……?』


 さっきの今だから、思考が追い付いていないのが本当のところだ。


『ゲーム!! やったことないのですごくやりたいです!! となると……ご自宅に行っても良いんですか?』


『そちらさえ良ければ』


『オッケーですよ!』


 配信部屋を兼ねている俺の部屋にルーファさんが来るの……?

 ヤバい、今から緊張してきた。


『じゃあ待ち合わせ場所は、アイモの中央時計広場に十三時でも良いですか? アイモ、わかりますか?』


 地元では有名な、近所のショッピングモールだが……。

 菜原市住みで知らないということはないだろう。


『わかりますよ! 大丈夫です! あ、星間魔法は配信で使っちゃっても良いですか?』


 不思議設定来たな。

 いや、冗談かもしれない。

 ここで本気で使って良いよって言われても困るだろうし、空気が読めてないだろう。

 だから……。


『いや、隠した方が良いんじゃないですかね。魔法が使えるなんてことになったら大騒ぎになりますよ』


『なるほど、確かに。ではそうします!』


 うんうん、良い返しだったかな。


『ではまた五日に会いましょう!』


『はーい! ばいポリ~~!! おやすみです!』


『ばいポリ~~!! おやすみなさい!』


 やり取りの終わったスマホを机の上に置き、俺は土曜日のコラボに期待を膨らませつつ寝る準備を始めた。

 そういえば、と思い出す。

 幼いころに見た、不思議な声だけのお姉さんとお話する夢。

 夢の中ではどうでもいい雑談をしただけなのだが、それなのにお姉さんはやたら嬉しそうに話を聞いてくれたっけ。

 具体的な内容は思い出せないが……、今、何故思い出したのだろう?

 まあ、大した理由は無いか。ふと何かを思い出すことはよくあることだし……。


     ◇     ◇


 腕時計を確認すると、十二時四十六分だった。

 少し早いかもしれないが、ルーファさんのことを考えながら待つのも悪くないかな、などと思いながらアイモの中央時計広場へと向かう。

 するとそこには人だかりがあった。


 ショッピングモールなのだから人が大勢いるのは普通のことだが、明らかに不自然に、広場の隅の方に人が集まっている。

 もしやと思って近づいてみると――


「サインください!」

「まさかこんなところで本物に会えるなんて!」

「めっちゃ綺麗だね、俺とお茶しない?」

「今日はコスプレしてないんですね!」


「人を待ってるんですよ~……」


 ファンに囲まれたルーファさんがいた。大きいカバンを持って立っている。

 地雷系の服が良く似合っている。良きかな。

 そんなことを思っていると、目が合う。

 気づかれたようだ。


「あっ、来てくれた! ごめんね、今日はこの人と過ごすの」


 そう言いながら彼女は顔を赤らめて腕を絡めてくる。

 そのまま引っ張られるようにして人だかりから離れる。

 ゆ、豊かな胸が腕に当たっている……!

 俺の心臓がバクバク言っているが、これバレてないよな?


「ふぅ、こんなに目立つだなんて思ってませんでしたよ」


「いつもはどうしてるんですか?」


「あ。えーっと……変装してるんです。サングラスとか、かけて。意外とバレないもんですよ。今日はこうしないとわからないかなと思いまして」


「なるほど」


 話しながらアイモを出る。

 道行く人の視線を感じる。

 腕は組んだまま。緊張が限界だ。


「あの……あんまこういうことしない方が良いですよ、俺も男なんで、勘違いします」


「こうでもしないと抜け出せそうになかったから……嫌でしたか?」


 その上目遣いは反則だろ……可愛すぎる。

 俺より背が低いから、身長的にそうなるのはわかるんだけども!


「嫌ではない、です」


「じゃあ儲けものってことでひとつ」


 そう言って彼女は腕を解いた。

 少し寂しいが、こちらから言いだしたことなので続けて欲しいと言うわけにもいかない。


「ここから近いんですよね?」


「はい、歩きで十五分くらいです」


「では行きましょー!」


 屈託のない笑顔がまぶしい。

 今日は最高の一日になりそうだ。


     ◇     ◇


「保人にこんな甲斐性があったなんて! ルーファちゃんいらっしゃい! ゆっくりしてってね~!」


 ルーファさんを母さんに紹介したらこれである。

 未成年である手前、事前に話を通してはおいたのだが……どうも話半分に「配信友達が来るらしい」程度にしか聞いていなかったと見た。

 父さんは仕事で海外に赴任しているので、普段は不在だ。家族は他に姉ちゃんもいるが、東京の大学に進学して独り暮らしをしているため今は家にいない。つまり母さんと俺の二人暮らしということである。


 自室のある二階に上がり、部屋の扉を開ける。


「ここがタモツさんの部屋ですか!」


「そう、配信部屋を兼ねてるんです」


 配信用のハイスぺックパソコンを買うのだって高一の夏休みにバイトしまくって何とかする程なのに、専用の部屋を用意するのは無理がある。

 六畳の部屋に、ベッド、配信用パソコンとデスク、椅子、テレビ、本棚、タンスなどが置かれている……配信用パソコンや、防音のためにウレタンが壁などに貼ってある以外は、普通の男子高校生の部屋だと思う。

 今はルーファさん用に居間から椅子を追加で持ってきてあるから合計二つ椅子があるけどね。


「綺麗にしてますね! ふむふむ」


「あんまり見ないでください……!」


 コラボが決まってからの二日間、必死になって掃除したが、女子の目線でどう見られるかよくわからないし。

 綺麗だと言われたのだからなんとかなったとは信じたい。


「ゲーム配信するってことでしたけど、何のソフトをやりたいですか? それなりに色々ありますけど」


 俺は今までもゲーム配信を行っていた。そのためのハイスペックパソコンである。

 だからこそ男一人の、奇妙なマスクをかぶった配信者なのに、チャンネル登録者数が二十三人もいたのだ。

 やはり好きな人の母数が多いジャンルを扱うと強い。本当に上に行くにはもっといろいろ必要だろうけど……俺のチャンネルは、ルーファさん効果ですでに登録者数が十万を超えていた。十分すぎる数だ。

 こないだの生配信のアーカイブの視聴回数も恐ろしいことに二百万回を超えていた。それだけ日本中、いや世界中の人がルーファさんの情報に飢えていたのだろう。

 それにビビッてあれから今日まで追加の配信はしていなかったのだが、コラボまで中止してしまうとルーファさんに会えなくなるため、勇気を出したということだ。

 閑話休題。


「うーん……ポリゴンファイターありますよね? 初代の」


「もちろんあります! このマスクにちなんで何回か配信しましたから」


「コンシューマーゲーム機でのゲーム自体が初めてなので、ガチ勢としてはタモツさんにちなんだゲームを最初にやりたいです」


「嬉しいこと言ってくれますけど、今時珍しいですね、初めてって……普段はパソコンで、とか?」


「いや、だって宇宙ではゲーム機もソフトも入手できませんでしたし、そもそもお金も持ってないですから。私、星ですし」


 不思議設定来たな。

 ガチ恋勢としては生で拝聴できるのは喜ばしいが。


「それを言ったらインターネットもできないんじゃ……?」


 ぽろっと野暮な質問をしてしまう。まずかったか?


「と、思うでしょ? 私は星間魔法で地球上の電波を解析することと、コンピュータとOSとソフトウェアの再現をすることに成功したのです!」


 腰に手を当ててぐっと胸を張るルーファさん。

 たわわな胸が揺れてエッッッッ!


「この解析と再現により、まずラジオ、次にテレビ、最後にインターネットを楽しめるようになったのです! 無線通信が発達してくれて本当にうれしいのです! それまでどれだけ暇だったことか! 他の星には魂が宿らなかったから話す相手もいなくて……あ、この体は私の魂の姿と同じ姿にしているんですけどね」


 暇。

 まあ、本当に恒星だったら、何十億年も宇宙の彼方にポツンとあるだけなわけで、それは暇だろう。

 魂についてはよくわからないが、変にツッコミを入れても面白くない。

 俺は作りこまれた設定と発言の自然さに感動した。

 プロ意識すごい。


「ルーファさん、さすがですね」


「そうでしょうそうでしょう! 我ながらよくやったと思います!」


 そっちに取られたか。まあいい。


「それじゃ、セッティングしますね~」


「は~い」


 父から受け継いだレトロゲーム機のベガサターンの映像・音声ケーブルの端子を、パソコンのキャプチャーボードにつなぐ。

 パソコンとベガサターンの電源を入れて、映像と音声を取り込んで……。

 あとは配信に乗せるだけだ。


「それじゃあ、配信始めましょっか。何か準備しますか?」


「じゃあコスプレ衣装に着替えたいので……」


 そういえば大きめのカバンを持っていたな。中身はそれか。

 さすがに、コスプレ衣装を着てアイモに行くわけにもいかないものな。


「それなら、部屋を出ていますので、終わったら声をかけてください」


「は~い」


 部屋を出て、扉を閉める。

 ……いかん、衣擦れの音が聞こえる。

 お、俺の部屋で憧れの推しが着替えている……!

 ……想像してしまうので、もう少し離れておこう。


 しばらくすると、「いいですよー」と声がかかった。

 中に入ると。


「どうです?」


 ポリゴンファイターの女性キャラ、ラナのコスプレをしたルーファさんがいた。

 胸が白いチューブトップによってこれでもかと強調されて、嫌でも目が行ってしまう。しかし、あまりじろじろ見るのも失礼だろう。理性を総動員して視線を外す。

 髪が白髪ロングから金髪のポニーテールになっているが、これはきっとウィッグだろうな。

 そしてジーンズの短いズボンからのびるすらっとした素足……!


「す、素敵です!! 最高にリギルです!!」


 リギルとはルーファさんガチ勢の使うスラングで、ルーファさんがコスプレ写真などで美脚を見せてくれた時に褒める意味で言う。

 何故リギルかと言うと、アルファ・ケンタウリA星の固有名をリギル・ケンタウルスと言い、リギルは「足」と言う意味のアラビア語の名詞から来ているからである。


「ありがとうございます! えへへ」


 生でこのやり取りができたことが感激だ。

 それにしても、ルーファさんはやたら上機嫌だな。


「もしかして、ゲームができるから上機嫌なんですか?」


「はい! 早くやりたくてうずうずします!」


 本当にうれしそうだ。ゲームが初めてって言うのは、マジなんだな。


「じゃあ、事前にコマンド表に目を通しておきましょうか」


 俺はそう言ってポリゴンファイターの取扱説明書を渡した。

 発売当時は電子説明書なんてないからね。


「おお、これが説明書……!」


 夢中になって読み始めるルーファさんだった。


     ◇     ◇


「皆さん、こんポリ~~!! 今日もお相手は『ローポリ少年タモツ』ですよ~!! な・な・何と、今日は特別ゲストがいらっしゃってます! って、予告していたからご存じの方がほとんどかな? では、どうぞ!」


「皆さん、こんポリ~~~~!! 自分がこの挨拶をする側に回れるとは……! ルーファです! 皆さんよろしくお願いします!!」


【きちゃああああああああ】

【うおおおおおおルーファあああああああああ】

【初代ポリゴンファイターのラナコスと見た! さいこおおおおおお】

【おい誰かタモツにもコメントしてやれww】

【こんポリ~~~~!!!!!】

【タモツの部屋じゃねーかうらやましいいいいいい】

【谷間があああああああ】

【今日も可愛いいいいいいいいい】


 コメント欄が前回以上にすさまじい速さで流れていく。

 もう追いきれる気がしない。目についたものだけ拾おう。

 今までの配信とは完全に別世界である。


「えー、今回はルーファさんの希望で初代ポリゴンファイターのゲーム実況配信となります! 俺のこのマスクの元ネタのゲームですね! ルーファさんはゲーム自体初めてということですが意気込みの方は?!」


「説明書のコマンドは覚えました! 後は試すだけです!」


「なかなかの自信! ではやっていただきましょう!」


【ルーファちゃんの初めてが見れるぞおおおお】

【言い方!www】

【ゲーム自体初めてとか今時珍しいな】

【ポリゴンファイターの初代は2と違って初心者にはきつい気もするが……本人の希望なら良いか】


 ベガサターンにポリゴンファイターのゲームディスクを入れる。

 すると読み込みが始まって、すぐにゲームのOPが始まった。


「おお~これはカクカクですね~~」


 ちなみに今の配信画面は、ポリゴンファイターの画面だけでなく、WEBカメラを通じて右下に俺とルーファさんの胸から上がワイプされて映っている。テレビでよくある感じの、右下の四角い窓に映っている、と言えばわかるかな。

 こうすることによって視聴者が一番見たいであろうルーファさんの反応も見せられるというわけだ。


「勝てるかな~~?」


 ゲーム内でもラナを選んだルーファさんは、事前の打ち合わせ通りアーケードモードを遊び始めた。

 アーケードモードとは、コンピュータが操作するキャラクターとの連戦モードである。敵を何体も倒していって、最後のボスを倒せばクリアだ。


「コマンドを素早く入力すれば技が出るんですね! 格闘ゲームってこんな感じなんですね~!」


 そう言いながらルーファさんは一人目の敵のジェッキーをボッコボコにしていく。多少の反撃は食らうものの、簡単に二本先取して勝ってしまった。


「ジェッキーは簡単とはいえ、本当に初心者ですか……?」


 普通、コマンド表を見て覚えたからと言って――あの短い時間で本当に覚えたのも驚きだが――実際に入力するのはまた別なんだけどなあ。


「正真正銘の初心者ですよ! 宇宙ではゲーム機を用意できないので!」


「そうでしたね! いやあ、あまりの強さについ」


「へっへっへ~、次も勝ちますよ!」


【宇宙ネタ助かる】

【ネタとは何だ ルーファちゃんは星だゾ】

【ガチ勢おって草】

【才能ありすぎ! eスポーツ行けるんじゃない?】


 少しコメント欄を見ている間に、ルーファさんは二人目のダフリーも秒殺してしまった。

 というか、一度も攻撃を受けていない、パーフェクト勝ちだった。

 ここまでは敵が弱いとはいえ……これはあっという間にクリアしてしまうんじゃなかろうか。


「やった! 良いところ見せちゃいますよ!」


 初心者には辛いはずの三人目のラナ(同キャラ対戦だ)もさすがにパーフェクトではないものの難なくこなし、四人目の忍丸にはまたパーフェクト勝ち。

 五人目のマイと六人目のレオはさらに難易度が上がるはずなのに快勝。戦う度に上手くなっているのが見ていてわかる。

 そのまま七・八人目のロウとリュウスケも簡単に倒してしまった。いや、簡単ではないはずなんだけどね? すごい才能だな……。


「おお? 何かメタリックな敵が出ましたね! 名前は、メタルか!」


「ルーファさん、こいつはラスボスです! ボーナスステージなので勝っても負けても大丈夫ですが……」


「どうせなら勝ちたいです! 行っくぞー!」


 ルーファさんは今までと同じ要領でメタルに挑む。

 最初はルーファさんが優勢で、そのまま勝つかと思われたが……メタルの連続空中コンボで一気に体力を減らされ、なんと一敗してしまった。

 メタル戦は三本先取でクリアとなるため、まだ負けが決まったわけでは無いが……。


「むむー、この技見たことあるなあ……他のキャラの技じゃないですか?」


「初見でよくそこまでわかりますね、メタルは他のキャラの技を使えるから、さっきみたいな連続空中コンボがあるんですよ」


「ラスボスだけありますね……でも、ただではやられませんよ!」


 そう言ってルーファさんは次のラウンドに挑む。

 空中コンボを警戒しているのがわかる。

 慎重に、慎重に……あっ、勝ったぞ! しかも自力でラナのコンボを発見している!


【初挑戦で自力でコンボ見つけるとかwww】

【天才だ!】

【格ゲーガチ勢と見紛う動きwww】

【ルーファちゃんがんばえー―! 超がんばえー―!】


「さすがですねルーファさん!」


「へっへへ~、この調子で行けば勝てますよ!」


 その宣言通り、そこからさらに二回勝ったルーファさんは、三本先取になり、無事アーケードモードをクリアできたのであった。

 エンディング画面が流れ始める。


「やったあ! タモツさん、勝ちましたよ~!」


 ルーファさんがご満悦の表情で右隣にいる俺に抱きついてきた!

 脳がとろけるんじゃないかと思うような甘い香りがする。

 そして左腕に当たっているものが……柔らかく……でっっっっっ!!!


【今すぐそこを代われタモツううううう】

【うらやましいいいいいいい】

【すごく……むにゅむにゅしてる……】

【てぇてぇ】

【マスクつけてるからタモツの表情がわからないけど、きっと喜んでるであろうことはわかるよ……】


「あ、エンディングも終わっちゃいましたね」


 俺から離れて、少し寂しそうにルーファさんが言う。

 残念だが仕方がない。


「あの! タモツさん!」


 この後は何を実況しよう、などと考えていた俺は真剣な様子のルーファさんに驚いた。


「その……今日、とっても楽しかったです。今回限りのコラボじゃなくて……二人で一緒に、これからもずっとYoumover活動をしていきませんか?!」


 なぜ自分なんかと? 何て一瞬、思ったけれど。


「ぜひ! よろしくお願いします!」


 そこは、圧倒的な嬉しさが勝った。

 これで、きっとルーファさんとのつながりは続いていくに違いない!


「やったあ! タモツさん、敬語も無しにしましょう……しよう! 対等ということで!」


「わかりま……わかったよ! ルーファ、よろしくね!」


「は~い!!」


【てぇてぇ】

【タモツのチャンネル見てればルーファちゃんが常に供給されるってことか!?】

【チャンネル登録するしかねえ!!!】

【ルーファちゃん……組むのか……俺以外のやつと……】

【そういやローポリ少年ってローポリ星人の少年って設定だったから、星のルーファちゃんとは意外とシナジーあるかもな】

【タモツガチ勢おって草】

【二人ともすごくうれしそう 互いに推しって良いな……】


 この後、俺とルーファさんはは時間ギリギリまでポリゴンファイターで対戦した。

 父さん仕込みで経験者の俺と、ほぼ互角のルーファさんはさすがの一言だった。

 最後の方は必死になっていたのはここだけの秘密だ。


     ◇     ◇


「皆さんこんポリ~~!! 今日のお相手は『ローポリ少年タモツ』と~~?」


「ルーファです! 晴れてこのチャンネルのレギュラーになりました! こんポリ~~!!!」


【こんポリ~~!!】

【今日はバトマン。の小倉アイのコスか! 可愛いいいいいい】

【うおおおおおおルーファあああああ】

【平日昼間なのにめちゃくちゃ人いるwwwお前ら働けwwww】

【タモツは学校ないの??】


 コメントでも指摘があったが、ルーファの今日のコスプレはアニメにもなった漫画家漫画の『バトマン。』のヒロイン、小倉アイの中学生のころのコスプレである。つまりセーラー服ね。セーラー服をたわわな胸が押し上げていて実にエッッッッッッッ!

 髪はウィッグで黒にしてあるみたいで、それもいつもと違っていい。

 これを間近で生で見られるなんて、いやあ、相方冥利に尽きるなあ。


「学校は今日は入学式なんで、在校生は休みなんですよ」


「そんでもって私は星なので働かなくていいの!」


【新事実:星はニートだった……?】

【もうそんな時期か……】

【こんな子と一緒に通いたい中学時代だった】

【今日は何するんだろ?】


「さて本日はですね、じゃじゃん! このペンタブレットで、お絵かき配信をします!」


 俺が取り出したのは、およそ一万円くらいのペンタブレット。パソコンと接続すると絵を描ける優れものである。

 描いている画面を配信で共有しつつ、雑談をするつもりだ。


「ちなみに描くのは私でーす! バリバリ描くよ!」


「頑張ってね、ルーファ。それじゃあ今から絵のリクエストを受け付けます! コメントで描いてほしいお題を上げてください! その中から俺が気に入ったものを独断と偏見で選びます!」


【なるほどね】

【了解】

【バディモンのトオル!】

【Fable/withnightのナディア!】

【モモ大戦のももか!】


「おっ、では一枚目はベガサターンでも遊べるゲームから、モモ大戦のももかにします! ルーファ、わかる?」


「昔アニメやってたよね! 見てたからわかるよ!」


 ルーファは凄い速さでペンを操り、下書きを作り上げていく。

 その間にコメント欄を見る、と――。


【あれ二十五年前のアニメだぞ? 生まれてなくね?】

【は、配信で見たんやろ(震え声)】

【ワイおじさん、残酷な現実の前にむせび泣く……二十五年とか信じたくない……】


「いやいやいや私は生まれてるに決まってるでしょ! 星だし。アルファ・ケンタウリA星だし。四十八億五千万歳なんだよ? すごく最近だよね、二十五年前って」


 ルーファが描きながら自然にスラスラとコメントに返している。

 確かに昔、理科の教科書にそんなことが書いてあった気がするが……。

 というか、上手すぎる。絵も凄いんだな、ルーファは。


【さすが星だ、文字通りスケールが違う】

【そうだよね、最近だよね!】

【でも、星ならどうやって見てたの?】


「こないだタモツにも話したけど、星間魔法ってのを開発してね、地球上の電波を解析して見てたの。特にアニメが好きで、今は深夜アニメがいっぱいあるのが助かる。パイオニア11号って知ってるかな? あれが私の方に向かって来たから、何あれ?! ってなって地球に興味を持ったんだけど、人類を知ったときはすごく嬉しかったなあ」


 ああ、地球外生命体へ向けて人類や太陽系の絵が描かれた金属板を乗せて宇宙を旅しているという探査機のことね。アルファ・ケンタウリの方向へ向かってたのか。それは知らなかった。

 それにしても喋っている間も手が止まらない。

 もう線画が終わりそうだ。


「嬉しいって、何が?」


「私の他にも意志を持った存在がいて……生きているってことが、だよ。それまで、寂しいってことすら、知らなかったから」


【俺らに感動したってことか】

【作りこまれてるなあ】

【作りとは何だ ルーファちゃんは星だゾ】

【いつものガチ勢だ!】


「ラジオやテレビは一方通行だから、寂しさはそこまで埋まらなかったけど、インターネットはいいね。電波の向こうに、皆がいるってわかるから。だから、感謝してるんだ」


 そこでなぜ俺を見る? 可愛いから良いけど。


「タモツ、ありがとう!」


「? うん、どういたしまして?」


「というわけで、できました~~!」


 画面には、袴にブーツの、大正時代っぽい恰好をした、桃色の髪のロングヘア―の少女の絵が表示されている。

 凄く上手だ。印刷して飾っておきたいくらいである。


「描いている間も思ったけど、ルーファは絵も上手いんだね」


「地球に来るためのこの体は凄くハイスペックに作ってあるからね。リアルチートってやつだよ~」


「ああ、そういう。流石だね、ルーファ!」


「もっと褒めたまえ~~!」


【すげえ上手い】

【プロ並みwwwww】

【星が地球に来てるって、何か想像するとロマンチック】

【わかる 宇宙はロマンだ】

【次はスーパーマルオを描いてほしい!】

【メカも見たいな、可動戦士ガンダル描いてよ】

【俺はゴーストライタヌが見たい!】


「ルーファ、ガンダルわかる?」


「わかるよ、劇場版はあまり見てないけど!」


「え、なんで?」


「テレビでやったやつしか見てないから! それも全部じゃないし、再放送のもあるけどね」


 ……なるほど。電波に乗った物しか見れてないということね。


「じゃあ、ガンダルで行こう!」


「おっけー!」


 結論から言うと、ルーファはメカも上手かった。専門に学んだのではと思わせるほどの腕だ。その後も雑談しながら(俺から見て)昔のアニメのキャラや、逆に最近のアニメのキャラを描いたりしてもらったが、そのうちに配信時間の終わりが近づいてきた。

 と言っても二十一時半ではなく、夕方の、十七時くらいね。今日はそういう約束なんだ。


「では、次で最後にします! 皆さんリクエストをどうぞ!」


【スーパーマルオのアップル姫!】

【ばいおんの浦沢唯】

【ガンダルのザフ!】

【ルーファちゃんが一番好きな何か】

【宙のカーブィ!】


 これが一番盛り上がりそうかな?


「では、最後はルーファが一番好きな何かにします!」


「よっしゃ! ラストね! これにしよ~~っと!」


 スラスラとペンを進めていくルーファ。

 これは……ポリゴンファイターのリュウスケか? 気に入ってくれたのかな。

 ……いや、違う!


【リュウスケ?】

【髪型が違くね】

【でもカクカクしてるし】

【いや、これ、タモツマスクだよ!】


「じゃ~~ん! というわけで、私が一番好きな何かは、『ローポリ少年タモツ』でした~~!」


【てぇてぇ!】

【そういや推しだって言ってたな!】

【これもう両思いだろww】

【てぇてぇ】

【これはてぇてぇ!!!】


 自分の顔が赤らんでるのを感じる。マスクで隠れててよかった。


「ルーファ、ありがとう!! 俺もルーファが推しだよ!」


 やっとのことでそう返す。


「知ってる!」


 そういったルーファの顔は、非常に満足げだった。


「では皆さん、今日はこれでお別れです! ばいポリ~~! 次の配信をお楽しみに~~!!」


「ばいポリ~~!!」


 配信を切り、画面を閉じる。


「俺の配信活動、本当に気に入ってくれてるんだな」


 ルーファは一瞬きょとんとした後で、


「いやいや、確かに活動も好きだけど、中身を描くと保人が特定されちゃうからだよ。それは困るでしょ?」


「う、うん、それは確かに困る」


 顔を隠している意味が無くなる……って、そうじゃなくて!

 それってもしかして……!

 ヤバい、まともにルーファの顔が見れない。


「じゃあ、着替えるからよろしく」


「お、おう。一階に行ってる」


 俺はマスクを棚に片付け、足早に部屋を出た。


 その後、ルーファを見送る時も顔が赤かった自信があるし、何なら夜もドキドキのあまり上手く寝つけなかった。

 でも、なぜ俺なんだ?

 推しだからか?

 こんなマスクを被ったみょうちきりんな配信者に惚れる理由がわからない。

 面白がって視聴して、推しだというだけならわかるのだが……。


     ◇     ◇


 あれから十日が経って、今日は四月十八日の金曜日。

 この間も何回か一緒に配信をしたが、結局、ルーファに告白することも、仲が進展することも無かった。

 だってルーファ、あんなこと言ったのにケロッとしてるんだもの。こっちもその気が無くなってしまったのだ。

 いや、うん、悪いのがルーファでないことくらいわかってるさ。

 ここにきて奥手陰キャの本領発揮と言える。


 学校から帰り、宿題をして、夕飯を食べ、そして十九時前、俺は学校の授業で使うため買った柔道着を着て、その上にジャケットを羽織り、リュックを背負い、さらに大きな荷物を倉庫から取り出して、家まで来てくれたルーファと共に出かける。

 ルーファは今日も地雷系の服装である。どうやらコスプレ以外では地雷系の格好をすることが多いようだ。よく似合っていて目の保養になるね。


 こんな時間にどこへって?

 今日は、かねてより予定していたネタ動画の素材を撮影するため、近所の菜原公園へ行くのである。

 夜のシーンが必要なんだね。


 菜原公園での撮影をするにあたって、実は春休みになる前に市役所に問い合わせに行った。

 場合によっては公園での撮影には申請が必要だからだが、その詳細がよくわからなかったためだ。

 結論から言うと今回の撮影には使用料が発生しない。収益化を前提とした撮影には二時間で一万一千円かかるのだが、趣味としての撮影なら無料で、相談当時の俺のチャンネルは収益化条件を満たすには程遠い数字だったし、収益化条件を後から満たした場合でも申請時に満たしていないなら無料のままだそうだ。

 俺みたいなただの学生に丁寧に教えてくれた職員の方には非常に頭が下がる。


「お、来たな、ヤスちゃん、それにルーファさん」


 待ち合わせ場所の、菜原公園ステージ前に行くと、既にそこにはソウちゃんがいた。

 俺の配信の初期からの常連の、子供のころからの親友である。


「ルーファ、こちらは五藤奏太くん、通称ソウちゃん。今日はカメラマンを頼んだんだよ」


「おう! ハンバーガー奢り一回分の働きはさせてもらうぜ。初めまして、ルーファさん! お会いできて光栄です。ヤスちゃんをよろしくお願いします!!」


「お願いされました! 任せてください!」


「おい待て、何をお願いしてるんだ?! ソウちゃんは俺の親か何かか」


 ソウちゃんは身内と言えるほど親しくはあるが、一応ツッコミは入れておく。

 すると、ソウちゃんは肩をすくめて苦笑しながら言った。


「軽いジョークだって。それより、それが例の巨大コントローラー?」


「ああ、そうだよ。作るのに一月もかかっちゃった。その分出来は良いと思いたいよ」


 そう言いながら、俺は自作の布製簡易バッグから、幅一メートルを超えている巨大なベガサターンのコントローラー……の、模型を取り出した。


「ふはは! 撮影に必要とはいえ、ここまでやるとはな! 実物見ると笑っちまうぜ。これ、どうやって作ったんだ?」


「素材はスタイロフォーム。きめの細かい発泡スチロールみたいな青い建築材で、ホームセンターで売ってる。それを切って専用の接着剤で積層して、削って形を作った! んで、下地材を塗った後でアクリル絵の具で仕上げだね」


「オタク特有の早口」


「やかましいわ、ソウちゃんだってオタクだろ!」


「ハハハ、すまんすまん。ところでルーファさんはべがた参野郎を知ってるんですか?」


 べがた参野郎。

 ゲーム会社ベガによる傑作レトロゲーム機・ベガサターンが販売されていた当時に放送されていたCMのキャラクターである。

 柔道着に身を包み、通り魔的に人を投げ飛ばしたかと思えばゲームの宣伝をしたり、巨大なコントローラーを担いで走って修行していたり、たいてい体を張ってゲームを宣伝したりと非常に面白い。

 父さんが当時録画したビデオに残っていたCMを見せてもらい、それが強烈に印象に残っていたのが今回の動画作成の理由でもある。


「うん! 当時見てましたよ。面白いCMでしたねえ」


「当時って……まだ産まれてないんじゃ……?」


「いやいや、私、星ですし。四十八億五千万歳ですし。余裕で生まれてるって言うか……二十七年前は割と最近ですよ」


 ルーファさんの発言に、ソウちゃんは感銘を受けたようだった。


「ヤスちゃんが言ってた通りだなあ……すごいですね」


 プロ意識が凄いという話をラインでしたのだ。


「そう、ルーファはすごいんだよ」


「もっと褒めるが良い~~! ハッハッハ!」


 皆でひとしきり笑った後で、


「……さて、撮影に移ろうか。べがた参野郎のCMパロディ動画用の素材は全部で五つ必要だけど、そのうち今日撮るのは四つだ。残りの一つは今までの配信から素材を作るから、実質、新規の撮影は今日の四つだけなんだ。じゃあ、ルーファは監督を頼む」


「任されたよ!」


 事前に渡してあった撮影予定表を手に、ルーファがほほ笑む。


「ソウちゃんはカメラマンね。撮影にはこれを使ってくれ」


「おう」


 リュックから取り出したコンパクトデジカメ――略してコンデジを渡す。ビデオ専用ではないが動画も撮影出来て、それなりに高性能、夜景もきれいに撮れる優れものだ。


「そして僕は……っと」


 ジャケットを脱ぎ、柔道着姿となった俺は、自作の布製簡易バッグから『ローポリ少年タモツ』のマスクを取り出し、被った。


「メインの役者! それじゃあ二人とも、打ち合わせ通り行こう!」


「おう!」


「張り切っていこう!」


 その後の撮影は順調に進んだ。

 巨大コントローラーを担いで走るシーンを撮り、巨大コントローラーを相手に寝技の練習をするシーンを撮り、そして巨大コントローラーのボタンをパンチで押しまくるふりをするシーンを撮り……。

 最後には、両手を掲げて構えをとり、


「ベガサターン、ヤロウッ!!」


 叫ぶ。マスクで映らないが、できるだけ凛々しい顔で。


「カーーット!」


 ルーファの合図で演技を止める。

 ソウちゃんから、OKだと合図がきた。


 皆で集まってコンデジの画面を覗き込み動画を確認すると、無事撮影出来ていた。


「アップが楽しみだね!」


「無事終わったな。じゃあ、また何かあったら呼んでくれよ、ヤスちゃん」


「ありがとう、ソウちゃん。じゃあまた学校で!」


「おう!」


 そう言うと、ソウちゃんは近くに駐輪してあった自転車に乗って去っていった。

 こちらも帰る準備をしてから、


「じゃあ、ルーファ、送るよ」


「あーー……うん。じゃあ、そこまで送って貰おうかな」


 二人して広場を離れ、歩き出した。

 隣接する二つ目の広場を通り抜けようとした、その時。


「にゃあーん」


 猫の鳴き声がした。


「猫ちゃんどこかな?」


 ルーファが辺りを探す。


「暗い時、猫は目が光るって言うけど……」


 きょろきょろと辺りを見渡しても、猫は見つからない。

 しかし。


「にゃにゃーん」


 声はすれども姿は見えず。

 不思議に思っていると。


「あ! いたよ!」


 ルーファが見つけたらしい。


「え? どこ?」


「あっちの木の上だね~」


 なるほど、高い木の上に子猫がいた。どうりで見つからないわけだ。

 二人で子猫のいる木の近くへ歩み寄る。


「可愛いねえ。撫でたいねえ。降りてこないかなあ」


「いや、これ、もしかすると、降りれなくなって困ってるんじゃないか?」


 そういうことがあると、ネットで見たことがある。

 しかし手を伸ばしても届きそうにない。

 登ることができれば、降ろせるかもしれないが……あまり木登りに自信はない。


「じゃあ、降ろしてあげれば、撫でさせてくれるかも! えーーっと、配信中じゃないし、周りに他に誰もいないから……OK!」


 そう言うとルーファは、浮いた。

 空中に。

 そして子猫のところまで浮かび上がり、抱えて戻ってきた。


「可愛いねえ、可愛いねえ、抱っこできるなんて思わなかったよ。……どうしたの?」


 首をかしげるルーファ。


「どうしたの、じゃないよ! まさか……まさか……今まで言っていたことって、全部本当だったの?!?! 星間魔法とか……星とか……魂の姿とか! 何かおかしいとは思ってたけど……!」


 俺が大声を出したせいで、子猫は驚いてルーファの手を振りほどいて逃げてしまったが、今はそれどころじゃない。


「むむー。本当だよ。もしかして、忘れちゃったの?」


「な、何を?」


「念話、つまりテレパシーの星間魔法ね。保人がちっちゃいころにお話したじゃない」


「そんなバカな……いや、待てよ」


 まさか。


「あの不思議な声だけのお姉さんの夢……あの声は、ルーファだったのか……」


 おしゃべりしてただけなのに妙に嬉しそうだった。

 それが、宇宙に独りで、寂しかったからなら頷ける。


「なーんだ、覚えてるじゃない」


「……でも、なんで俺だったんだ? 他にいくらでも頭良い人とか、カッコいい人とか、いるだろ。どうして当時六歳の俺なんだ?」


 当然の疑問。

 ルーファが星間魔法を使えて、誰にでも話しかけられるのであれば、もっと魅力的な人がいたはずではないか?


「それはね、保人に凄まじく星間魔法の適性があったからなんだ。こっちから話しかけることができたとしても、お返事が無かったらつまらないでしょ? 保人は、私が手伝うだけでそれができたってわけ。思ったよりも処理に手間がかかるから、あの時だけになったけどね」


 手伝いというのが何のことかはわからないが、確かにあの夢には不思議な感覚があった。何か、後押しされるような……。

 そしてあの夢を見たのも一回だけだから、話は合っている。初めて通話した日の夜に夢のことを思い出したのは、声を聞いて思い出したってことか!

 となると……。


「じゃあ、俺も空中に浮けるのか?」


「うーん、練習して慣れればできるって感じ?」


 ええ……ウソだろ……と言いたくもなるが。

 ルーファはマジの表情をしていた。

 証拠もあるし、もはや信じるしかない。


「それに、保人が私を救ってくれたから。だから、より興味を持ったの」


「いや、どうでもいい話しかしなかったと思うけど?」


 その日あったこととか、たわいのない話をしたはずだ。


「ううん。フリーWi-Fiのパスワードを、教えてくれたのは保人だもん。公共施設にあるから、誰でも使っていいって……。あれがあったから、私はインターネットができて、少し寂しくなくなったんだよ」


 そういや、そんなことを話したような気がする。


「でも、電波解析できるなら、いくらでもできるはずじゃ?」


「違うの。ラジオやだいたいのテレビはずっと無料だったけど、インターネットはフリーWi-Fiができるまではプロバイダーとか携帯電話会社とお金を払って契約しないとできなかったの。私は宇宙にいて、地球のお金なんて持ってなかったから、無理だったんだよ。指をくわえて眺めていることしか、できなかったの」


 そんなところに壁があったのか……。

 ゲーム機やソフトも買えなかったと言ってたものな。


「だから、保人には、感謝してもしきれない。ローポリ少年タモツの活動も推しだけど、そもそもの興味を持った理由はこれ。それからずっと見てたんだから。そのマスクを作ったときもね」


「……もしかして、配信を見てたんじゃなくて、俺自体を見てた?」


 当時の再生数がヒントだ。ルーファが配信を見ていたのなら、その分再生数や同接が増えていたはずだが、カウンターは常連の数しか回っていなかったような覚えがある。

 それに、初通話の時、ルーファは「制作も見ました」とは言ったが、「配信を見た」とは言っていない。


「うん、そう、最初はYoumoveじゃなくて、保人を見てたから、知ってたの。あのころにはもう、解析できるのは電波だけじゃなかったから」


「やっぱり。……でも、こうやってこっちに来れるなら、もっと早く来れば良かったんじゃ?」


 そうすれば、寂しさは埋まるだろう。


「ううん、これが最速なの。初めて通話した時、都合がついたって言ったでしょ? あれはこっちに体を作れるようになったって意味だったの。解析よりもずっと大変だったんだから」


「……なるほど」


 人間の体をゼロから作るなら、確かに大変そうな気はする。


「体を作れるってことは、コスプレの時に髪の色が違うのはウィッグじゃなくて、星間魔法で色を変えてたのか?」


「うん、そうだよ。見てて」


 ルーファはその場で髪の色を白から青、金、そしてまた白に戻した。


「……すごいな。自由自在なんだ」


「うん。そういうわけだから、私を送る必要はないの。というか、送る家もないし。本当は菜原市住みじゃなくて宇宙住みだから」


「じゃあ、いつも別れた後はどうしてたんだ?」


 家がないなら、今のルーファの体はどこに行ってたんだ?


「こうやって、毎回体は消して……来るときは作り直してたんだよ。宇宙に戻ると独りで、寂しいけど……保人や皆との思い出を思い返すから、大丈夫。じゃあ、おやすみ、保人。また明日!」


「あ、ちょっ――」


 止める間もなく、ルーファの体は消滅した。

 彼女がいたはずの目の前の空間には、ただ虚無だけが残る。


 ちくしょう、何が大丈夫だ。

 泣きそうな顔、していたじゃないか。

 俺は確かにルーファの助けにはなったのかもしれないけど……、でも、救ってなんか、いない気がする。


 四十八億五千万年の孤独。

 それは、人間の俺には、想像もつかないほどの苦しみではないのか。


     ◇     ◇


 家に帰って風呂に入り、パジャマに着替えて部屋に戻り、しばらくルーファのことを思い悩んでいると、姉ちゃんからラインの音声通話の着信が来た。

 もしかして、また同人誌の漫画原稿の作業をオンラインで手伝ってほしいのかな?


『もしもし、保人~、今修羅場なの、手伝って~!』


「やっぱりな……良いけど、姉ちゃん、次は計画的にやりなよね」


『はーい、やっぱり保人は頼りになるぅ! じゃ、背景の仕上げとベタとトーンね!』


「明日も予定あるから、今日は二~三時間しかできないよ?」


 あんなやりとりがあった手前平常心でいられるかわからないが、明日もルーファとの撮影の約束がある。


『それでいいから! お願い!』


 やれば、少しは気晴らしになるかもしれない。

 鬱々とした顔をルーファには見せたくなかった。


「じゃあ、次帰省したらアイス奢って」


『わかった!』


 それから僕は、パソコンを立ち上げてお絵かきソフトを起動して、オンラインストレージ内の姉ちゃんの原稿を仕上げていった。

 デジタルで描く原稿は便利だ。紙では不可能な処理が簡単にできる。


 通話をつないだままの、雑談交じりの作業は順調に進んでいった。


『そういや、保人、彼女出来たんだって? それもとびきり可愛いって母さん言ってたよ!』


 母さんが口を滑らしたか。いや、実の姉なら伝えてもおかしくはないか。

 それに、知っているなら相談しやすいかも。


「まだ彼女じゃないよ。というかちょうど良かった、姉ちゃんに相談しても良い?」


『おー、何でも聞きたまえ!』


「その……深く悲しい過去と秘密のある、親しい人がいて……」


『ふんふん』


「できれば、力になりたいんだけど、全然自信ないんだ」


『そっかー、なるほどなー。もしかして保人、相手の問題を解決してあげようとしてない? それは無理があるよ』


「えっ? 解決したらハッピーエンドでしょ?」


『それは、できたらの話。私たちはまだ社会人でも大人でもない、ただの学生。大人だって他人の問題を解決するなんて、仕事以外じゃめったにあることじゃないよ。そして仕事ってことは専門家としてのスキルがないと厳しいってわけさ』


 確かに。

 高いテンションから何とかしてあげたいと思っていたけど、おこがましかったのか?


「でも、じゃあ、どうしたらいいんだよ……?」


 だからといって、何もしないではいられなかった。


『もどかしいだろうけど、今は、支えてあげるだけでいいんじゃないかな。いつか解決する時に力を貸すにしても、まだ先の話だよ。後は本人がどうしてほしいのかだね』


「……なるほど、できるかはわからないけど、納得はした」


 姉ちゃんの説明は俺の中にすとんと入ってくる。伊達に四歳も年上じゃないってことか。


『後は、秘密だっけ? それについては……』


「ついては?」


 ごくり、と唾をのむ。


『惚れた女の秘密くらい、可愛いと思って受け入れてあげな』


「なにそれカッコいい!!」


 今日の姉ちゃんは名言製造機か?!


『……って、最近ハマってる漫画に書いてあったよ』


「せっかくカッコ良かったのに!」


 姉ちゃんの言葉じゃないのかよ!


『でも言ってることは正しいでしょ? 漫画だって捨てたもんじゃないよ!』


「まあ……それはそうだけど。ありがとう、姉ちゃん」


『どういたしまして~!』



 就寝時間ギリギリまで作業をし、姉ちゃんにお礼をめちゃくちゃ言われてから通話を切った後。

 俺は一人、ベッドの上で自問自答していた。


「……受け入れられる、よな」


 ルーファの秘密。恒星。星間魔法。

 四十八億五千万年の孤独。

 解決できると言ったら、今の俺ではウソになる。

 けれど、一緒に生きて、支えていくことはできると思った。


     ◇     ◇


 次の日の午前中。既にルーファは家に来ている。

 母さんは友人と一緒に出掛けているので、二人きりである。

 やはりというべきか、ルーファはケロッとした表情をして、何もかもが普段通りだった。もしかすると、体を作り直しているからなのかもしれない。


 そして今日の配信は、俺の部屋では行わない。

 では何をするのかと言うと――。


「皆さんこんポリ~~!! 今日もお相手は『ローポリ少年タモツ』と~~?」


「こんポリ~~! ルーファです!」


 リビングダイニングキッチンのキッチン部分に並んで立つ俺たちを、部屋から持ってきたパソコンと、それにつなげたマイク付きのWEBカメラで配信に乗せている。

 この部屋には大型のテレビがあるので、映像はそこに出力されている。こうすることでコメントもたまに拾うことができるという寸法だ。

 ルーファはミニスカニーソのメイド服のコスプレをしており、やる気満々である。


「今日は私の希望で、お料理配信をしますよ!」


 以前の打ち合わせで希望されたのだ。

 ちなみに俺はと言うと、いつものタモツマスクを被っているとさすがに料理中は危険だということで、初期に使っていた目出し帽を引っ張り出してきて着用している。料理ということで、エプロンもしてるよ。


【ヤバすぎる絵面wwwww不審者と美少女wwww】

【ルーファきちゃあああああああ】

【ローポリ要素消し飛んでて草】

【太ももおおおおおおお】

【出た! 初期の目出し帽www】

【何作るの?】


「今日はルーファたっての希望で、オムライスに挑戦します!」


「萌え萌えキュンを自分でやってみたかったの!」


【それ絶対可愛いやつ】

【俺たちは既にキュンキュンだぜえええええ】

【一緒に料理なんて不審者であることを除けばまるで新婚さんみたいだ……末永く爆発しろ】


「ではさっそく作っていきましょう! ルーファには我が家のレシピを教えてあげるね」


「おお! 家伝のレシピだね、楽しみ!」


 というわけで早速調理に取り掛かる。


 順番に手を洗い、それからルーファには人参・ピーマン・玉ねぎをみじん切りにしてもらう。この時期は新玉ねぎが出ているので、今回は新玉だ。ルーファは料理が初めてのはずだが、手際は経験者と比べても遜色ない。

 その間に俺は合い挽き肉を解凍し、フライパンで炒める。色が変わったら、みじん切りにしてもらった野菜を加え、よく炒める。


「合い挽きなんだね、普通は鶏肉とかじゃないの?」


「チキンライスが多いけど、うちではこれなんだ。コクが出て美味しいよ。俺はご飯を炒めちゃうから、ルーファはタマゴを別々の容器に一つずつ割り入れてよく溶いておいてくれないかな?」


「任された!」


 塩・胡椒をして、なじむまで炒めたら、二人分のごはんを投入。具材が混ざるまで炒めたら、ケチャップを入れ、さらに炒める。

 味見をしたら少し薄かったので、ケチャップと塩胡椒を少し足して炒める。この辺は感覚だ。

 再度味見をするとちょうど良かったので、火を消してフライパンをコンロから外しておく。

 なんとなくコメント欄を見ると。


【滾る後ろ姿】

【ルーファちゃん料理も上手だね】

【やっとこっち見たww】


 後ろ姿しか映らないのは今後の課題だな。

 それにコメントとも絡めていない。次からはせめてコメント読み上げ機能を使おう。

 WEBカメラに向かって軽く手を振ってから、二つ目のフライパンを取り出す。

 フライパンを熱し、油を薄く塗り、ルーファが解いてくれたタマゴの一つ目を注ぐ。


「堅焼きで良い?」


「うん!」


 待ちきれない、といった様子のルーファはとても可愛い。

 タマゴをフライパンいっぱいに伸ばし、弱火にする。

 焼きあがったので、ご飯を半分乗せて、タマゴで包み、ひっくり返して皿によそった。


「おお~~美味しそう!」


「もう一つやるから、ちょっと待っててね」


「了解だよ~」


 もう一つのタマゴも同じように焼き、ご飯を乗せ、また皿によそう。


「か~んせ~いだね!」


「いや、まだなんだ」


「えっ?」


「萌え萌えキュンをしたいんだよね、やっぱりケチャップで文字を書いてこその萌え萌えキュンだと俺は思うなあ」


「あ~そうか! 早く食べたくてつい忘れてたよ~。じゃあさ、じゃあさ、お互いへのメッセージを書いて交換しない?」


 なるほど、それは配信的にもいい考えだ。ウケそう。


「それ採用! じゃあまずはルーファからどうぞ!」


 ケチャップの容器を渡す。するとルーファはお皿を持ってテレビのあるリビング部分に移動して文字を書き始めた。

 ああ、見せないためか。視聴者からしたら、見た時のリアクションが面白いんだもんな。今見ていたら、自然なリアクションができなくなる。


 俺があちらを見ないようにしていると、ややあってルーファが戻ってきた。

 ケチャップを受け取り、後ろを向いているルーファをちらりと見てから、俺も文字を書き始め……、できた。


「じゃあ、せーので見せよう」


「とってくる!」


 たたた、とリビングへ行き、カメラに文字が映らないようにオムライスを持って戻ってくるルーファ。


「「せーのっ」」


 二人で見せ合い、その後カメラにも映す。

 ルーファのには……、『キュンキュンしよっ!』と書いてある。

 俺のには……。


「わっ! 私もそういうこと書けばよかった!」


 俺のオムライスには『いつもありがとう』と書いたのだ。


「まあまあ、俺はいつもルーファにキュンキュンしてるし、良いんじゃないかな」


【さらりとこういうことをこの男は……!】

【てぇてぇ】

【さりげない感謝って素敵よね】

【美味しそう!!!】


 さて、配信もこの辺で終了かな。

 ルーファには最後にあれをやってもらおう。


「それでは、本日のメインイベントです! ルーファ、よろしく!」


 ルーファは手でハートを作り、


「『萌え萌えキュ~ン! 美味しくなあれ!』……どう? どう? 可愛かった~?」


【あざと可愛いいいいいいいい】

【タモツもやれ】

【最っ高おおおおお】

【こんな店があったら週九で通う!】

【週の概念が壊れるwwww】

【美味しくなったああああああ】


「『タモツもやれ』……うん、タモツも一緒にやろうよ!」


「え、ええ~? 俺もぉ?」


 目出し帽にエプロン姿で萌え萌えキュンってどういう状況?


「良いから良いから、手をハートにして、はい!」


「むぅ……、で、では、『も、萌え萌えキュ~ン……美味しくなれ!』ど、どう?」


「良いね! これは美味しくなった!」


【不審者の萌え萌えキュンいただきました!】

【俺たちは何を見せられているんだ】

【最初に言ったやつ責任とれ!】

【なんだこの空気】

【やけっぱちの美味しくなれ! で噴いた】


「で、では皆さん、俺たちはこれからお昼ごはんを食べますので、配信は終了とさせていただきます!」


「ばいポリ~~!!」


 ルーファがカメラに向かって手を小さく振る。可愛いな。


「ばいポリ~~!! 次の配信をお楽しみに~~!!」


 そして俺はパソコンに近づき、WEBカメラを伏せ、配信終了の操作をしようとした。


「あれ?」


 一瞬画面が固まる。だがまたすぐに動くようになった。

 何度かクリックをして、配信画面を閉じる。


「どうしたの?」


「フリーズしかけたんだよ。買ってまだ一年なんだからしっかりしてほしい。電源落とすね」


「いや、せっかくだからパソコンで音楽かけながら食べない?」


 それは、雰囲気が良くなって良いかもしれないな。


「じゃあそうしよう」


 パソコンとつながっているテレビから、できるだけ雰囲気の良くなりそうなアルバムを選択して音楽を流す。

 と言ってもラブロマンス的な音楽をかける勇気はなく、高校受験期に聴きながら勉強すると頭がすっきりするという噂で入手して少しだけ聞いたモーツァルトのアルバムだ。要はクラシック音楽だね。


 配信が終わったので、スマホのマナーモードを解除する。

 そして目出し帽を外しておくのも忘れない。これがあるとムードは消え失せるだろうからね。


 何故そこまで雰囲気を気にするのか? これから大切な話をしようとしているからだよ!

 成功率を上げるためなら何にでもすがりたいくらいだね!

 ……モーツァルトが向いているかはよくわからんが……選曲ミスったかもしれない……。


 すでにルーファはダイニングテーブルについて待っているので、俺も向かいに座る。

 オムライスをおあずけにして話を切り出すのも良くないだろうと思うので、食事を先に始めよう。


「もういいかな?」


 待ちきれないと言った様子でルーファが言う。


「うん」


 手を合わせて、


「「いただきまーす」」


 うん、美味い。いつもの味だ。合い挽き肉でコクが出てるね。


「どう? うちの味は」


「美味しい! ……でも正直言うと、私星だからチキンライスバージョンを食べたことが無いのでどう違うかはわかんない……」


 ああ、そうか。宇宙にオムライスなんてないものな。

 いや、待てよ。


「それだと、もしかして食事自体初めてだったり……?」


「実はそうなんだよねえ。食べるって良いものだね。なんというか、元気が出る」


「たんとお食べ……!」


 それからしばしの間、雑談をしながら食べていると、オムライスを二人とも食べ終わってしまった。

 そう、話を切り出すタイミングを計れなかったのである。


 いやでも、満腹で落ち着いた時の方が良いかもしれないし!

 いいかげん、勇気を出せ!

 支えるって決めたじゃないか!

 振られたらどうしようという恐怖が体を包むけれど……、ええい、ままよ!


「…………昨日の話だけどさ」


「ああ、宇宙の私ね」


「うん。今日は、いや、今日からずっと、もう、こっちに来るための体を消さないで欲しい。そんなの、辛すぎる。毎回死の恐怖を感じてるようなもんだろ。違うか?……俺もバイトしてそのための金を稼ぐから、とにかく住む場所を探そう」


 自分の体が消えていく感触なんて、死に近いと思う。と言っても想像でしかないから、もしかしたら違うのかもしれない――と思ったが、どうやら予想は当たっていたようだった。

 ルーファが泣きそうな顔をしている。


「でも、タモツに負担かけちゃうよ」


「良いんだ。俺にとってルーファはそれくらい大切な存在なんだ。母さんに頼んでチャンネルの収益化を始めるって手もあるし。それに最悪、ルーファにも働いてもらえば何とかなるんじゃないかと」


 チャンネルの今の勢いを考えれば、しばらくはかなりの額が手に入りそうだ。しかし、それは芸能活動みたいなもので、浮き沈みは当然あるだろう。だからバイトも必要だ。


「それは最悪じゃなくて当然だけども。……本当に、良いの?」


「俺は、ルーファの寂しさを埋める一助になりたい。本心だ。ええと、つまり、俺は、ルーファのことが好――」


 パンポンパンポン! パンポンパンポン!


 好きなんだ、と言おうとしたら、スマホがけたたましく鳴り出した。

 こんな大切な時に、誰だ?

 無視したいが、止まってくれない。

 それに、何か緊急の知らせだったらマズい。


 スマホを見ると、ソウちゃんからラインの音声通話の着信が来ていた。


「出ていいよ」


 ルーファに促され、頷き、通話に出る。


『ヤ……いや、タモツ! 早く切れって!』


 開口一番、ソウちゃんはよくわからないことを言い出した。


「切れって、この通話を? どういうこと?」


『いや、違うんだよ! 落ち着いて聞けよ、今……お前ことタモツは……配信を切り忘れています……! だから……早く切れ……!』


「は?! え?! マジで?!」


 そういえば、配信を切った――と思った時、フリーズしかけていた。あの時、誤動作して配信を切れていなかったと考えればつじつまが合う。


「やっべ」


 危うく、告白するところを全世界に向けて生中継するところだった。

 冷や汗が出るのを感じる。


『わかったか? 念のためパソコンの電源も落とせよ。それじゃあな』


「おう……ありがとね」


『いいってことよ。またな』


 通話が切れた後、急いでパソコンの電源を落とした。

 WEBカメラを伏せておいたので、不幸中の幸いで顔バレはしていないが――、もっと気をつけよう。


「あーあ、良いところだったのに」


 ルーファはどことなく不満そうだった。


「良いところって……まあ、大切な話の最中ではあったけどさ。……いや、待てよ。まさか、ルーファ……気づいてたのか?」


 電波の解析ができるルーファだ。それくらいの解析はできてもおかしくない。

 それに、さっきのやり取りの間、俺のことを保人ではなくタモツと呼んでいた。

 ソウちゃんがヤスちゃんと言いかけてタモツと言い直していたことを思い出して気がついたのだが、名前バレを防ぐためだとすれば筋が通る。


「生中継で言われれば、もう他の人には盗られないって思っちゃって……」


 ペロ、と舌を出すルーファ。


「そこまで俺のことを気に入ってくれたんだね」


『惚れた女の秘密くらい、可愛いと思って受け入れてあげな』……か。昨日の姉ちゃんの言葉を思い出す。きっと今がその時だ。


「ありがとう。続き、良いかな」


 もう答えを貰っているようなものだが、ちゃんと伝えたい。


「うん。聞きたいな」


 ルーファの向かいの席にもう一度座る。


「ルーファ、俺と一緒に生きていって欲しい。俺と付き合ってください!」


 ルーファはゆっくりと頷いた後で、微笑んだ。


「うん、是非! 喜んで!」


 微笑みあいながら、こんなに幸福を感じたのは今までの人生で初めてかもしれないな、などと思うのであった。


     ◇     ◇


 ルーファと一緒に食事の後片付けをした後で、インターネットを使い一人暮らし用の物件をああでもないこうでもないと吟味したが、結局無駄骨に終わった。

 理由は母さんの鶴の一声だ。


「事情は分かったわ。でも一人暮らしはお金もそれを稼ぐ時間ももったいない! 部屋も余ってるし、うちに住んでもらえばいいでしょ」


 その申し出をルーファは喜んで受け入れ、ウキウキ同居生活の始まりとなった。

 家賃はとらないが、食費だけもらうことになる。その金は当面、配信から得られる収入から出すこととなった。そう、収益化の許可が下りたのだ。俺は未成年なので保護者のアカウントと関連付けたりなんだりしないと、Youmoveでお金を稼ぐことはできない。


 ちなみに星間魔法など宇宙のこともすべて伝えたのに、母さんはあっけらかんと受け入れ、その上星間魔法を習おうとする始末だった。母は強し、ということなのだろうか。

 俺に高い適性があるのなら、その血縁の母さんもそうなのではないかと思ったら、俺ほどではないもののそれなりに適性があるらしい。

 とりあえず美容に使える星間魔法を使えるようになるべく練習中だ。


 そうそう、生配信で告白しかけたり、その間(実際は事実ではあるが)宇宙ネタをしゃべっていたことについては、おおむねの視聴者にはよくできたネタだと思われ、めちゃくちゃ切り抜かれた。

 しかし「あの」ルーファと付き合いだしたことを後の配信で報告したときは少し反応を見るのが怖かった。

 だが、【早く結婚しろ】【末永く超新星爆発しろ】【まだ付き合ってなかったの?】などとおおよそ好意的な反応が多かったので嬉しかった。

 超新星爆発のコメントについてはルーファが珍しくひきつった顔で、

「縁起でもないこと言うね……」

 と、素の反応を見せたところ、宇宙ネタだと思われてまたファンを沸かせたのであった。


 俺はと言うと、星間魔法を基礎から練習しつつ、学業、そしてYoumover活動を精力的に行っている。この間もべがた参野郎のパロディ動画を完成させてアップしたところ、大好評だった。

 はじめはルーファ目当ての人ばかりだったが、次第に俺=タモツのことも面白がってくれている人も増えつつあるのでありがたい限りである。

 その期待には応えたい。


 そしてルーファはと言うと――。


「保人! 今度は『ハートキャリバーⅧ』でゲーム実況しない? これやってみたかったんだあ」


 今日も俺と一緒に、楽しく過ごしている。

 最近は寂しそうなそぶりすらしない。

 そのことを嬉しく思いながら、この笑顔を無くさないために、俺も恒星並みの寿命を星間魔法で得たいという思いを強くした。

 ルーファによれば、俺ならば順当に努力していけばできるらしい。

 俺は、ルーファと一緒に生きていくと決めたのだ。俺が数十年か長く見ても百年ちょっとで死んでしまったら、ルーファはまた独りに戻ってしまう。それは避けたい。


「それなら持ってるから、今からやってみる?」


「うん、配信しよ!」


「ああ、始めよう」


 チャンネル登録者数は五十万人を超えてなお成長中だ。たまにちょっと怖くなるけれど、今はとても楽しい。

 きっと、ルーファが隣にいるからだと思う。

 俺は配信準備を終えた。


「こんポリ~~!! 今日もお相手は『ローポリ少年タモツ』と~~?」


「こんポリ~~!! ルーファです! 今日は『ハートキャリバーⅧ』の実況をしたいと思います! 剣を使って戦う3D対戦格闘ゲームで……」


 まあ、まだ時間はたっぷりある。

 ルーファと一緒に、楽しみながら目標を達成していこう――。



END

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