寂しがり屋。
時は経ち、私たちは多少の人間関係にストレスを抱えながらも、楽しく学生生活を送っていた。
「もうすぐテスト期間が始まるね。」
真面目に授業を受けていないわけではないが、それほど熱心に自習するほど頑張っていないので、不安を胸に残しながら私たちは雑談していた。
そんな中、太一という同級生からあるニュースを聞くことになる。
彼は颯のグループの一人で背は小さめ。一見人当たりが良さそうに見えるが、実は人見知り気味の彼と仲良くなったのは、彼の恋愛話を聞いている時だった。
授業終わりに大学裏の喫煙所で煙草を吸っていると、颯に付き合って一緒についてきたのだ。私も雪が付き合ってくれたのでこれで4人になった。
「こいつ振られたんだよ。」
颯が殺傷力強めの言葉を発した。太一が元々同じ学部の女の子と付き合っていたことは、私も雪も知っていた。少し前に別れたみたいだ。周りの時間が過ぎるのを早く感じた。いつの間に別れていたのだろう。よりを戻したい太一と、そうではない元カノ。複雑な感情とを抱えつつも諦めない彼を私は尊敬した。私はそこまで本気になれないから。それを聞いて私には疑問が募った。そこまでしてどうして復縁したいのか、そうまでさせる要因はなんなのだろう。相手の本心なんてわからない。私ならとっくに諦めているのに、なぜそこまでがむしゃらになれるのだろう。そんな私にはない感情で突っ走れる人を私は心から疎ましくも思う。
太一の恋愛相談は途切れることはなかった。しかし、私にとっても勉強になることばかりで、少し面白いと感じてしまうのは失礼だろうか。
これは2ヶ月ほど続き、次第に夜中に私が電話をかけても怒らないくらい仲良くなった。
そんな太一から嬉しくも寂しい話を聞いた。
「颯彼女できたんだよ。」
確かに颯は人間的にはとても好意的で話しやすいと思う。人に好かれるのもわかる。しかし、昔の恋愛はともかく、今の考えは、やれればいいという割り切ったもの。そんなクズ男だと思っていたのだが、彼に恋人ができて嬉しい反面、少し悲しくて寂しいと感じてしまった。
なぜなら私と遊んでくれなくなってしまうから。彼女ができた。それ自体に不満はない。しかし遊ぶ時間が減ってしまうのはまた別の問題なのではないだろうか。
そしてまた別の問題が発生している。その彼女が私のことを恋敵のような目つきで視線を送ってくることだ。全くもって何もないのに、仲が良い私のことをよく思っていないみたいだ。それに加え、私の容姿が良いと彼女は思っているようで、自分に自信がないように感じる。正直、女の子に可愛いと思われるのは男に言われるよりも嬉しい。私も彼女と仲良くなれれば良いのだが、嫉妬が強めのようで、私は手も足も出せない。こうなってくると逆に苛立ってきてしまい、雪に愚痴をこぼすことが多くなった。
「マジで何も心配するようなことないのに。それに思うことがあれば面と向かって言ってくれれば良いのに。」
「この前めっちゃ見てきたから、睨み返してやったわ。」
子供じみているとは思うが、この歳になっても女の睨みつけが怖いことは変わらない。
それからしばらくして、私たちは大学内であまり話さなくさった。彼女に私と話しているところを見られるとまずいみたいだ。私の心情はというと、あまり芳しくはない。だって、仲のいい人と第三者のせいで強制的に引き離される状況なんて、普通に寂しいに決まっている。
金曜日は彼女が泊まりにくるようになり、私は家にすら訪れることができない。いっそ他に気軽に遊んでくれそうかつ、酔った私の面倒を見てくれそうな人を探そうか。
颯が付き合い始めたその日から、颯と遊ぶ時間は減っていった。土日も関わることはない。しかし電話はバレなければ大丈夫なようで、時々ふっかるで夜中にイタ電をしているくらいの関係だ。
このモヤモヤする気持ちはなんなのだろう。少し前までは颯にとって私はグループの男たちと同じくらい仲が良くて、優先してくれたように感じるのに、今では彼女優先に見える。仕方がないことはわかる。彼女側が私の存在を毛嫌いすることも、特別な関係の中で邪魔者は私の方だということも。
この関係性は覆すことはできないのだろう。まるで数学の公式のようだ。あらかじめ決まっているような関係性。
寂しい。
その年の最後に会ったのは、颯が帰省する前に一緒にゲームセンターに遊びに行ったくらいだ。




