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9話

 ロバートはニッコリと笑いながら言った。


「ルイゼちゃん、それはそうと。君のクラスにセイラ・フローレンスとかいう女子生徒はいなかったかな?」


「いますよ、彼女がどうかしましたか?」


「いや、ちょっと気になる話を聞いてね。確か、セイラという名前は偽名で。本名はセシル・フローレンスらしいんだよ」


 私はいきなりのことに驚きを隠せない。二の句が継げないでいると、姉が代わりに問いかける。


「んま、それは本当なの?」


「ああ、実はエヴァライト家の影達に調べさせたらね。どうやら、セシルが女装をして学園に通っている案件が出てきたんだ」


「ふうむ、成程ねえ。あのセイラさんが男子だったなんて」


 姉もロバートも難しい顔をして黙り込む。私も複雑な心境だ。けど、何で女装をしてまで学園に通う必要があるのか?  

 それはさすがにわからなかった。


 馬車が停まり、学園に到着した。扉が開かれて先にロバートが降りる。次に姉がエスコートされながら、降りた。最後に私も同じようにされて降りる。


「じゃあ、ルイゼ。私達は先に行くわ。一人でも大丈夫?」


「大丈夫だと思います、わからなかったら。他の方に訊いてみます」


「そうね、そうしたらいいわ。では、またお昼にね」


 姉は手を振りながら、ロバートと一緒に行ってしまう。私は一人でゆっくりと教室に向かった。


 あれから、教室までの道順は覚えていたので迷わずに行けた。引き戸を開けて中に入る。すると、既に生徒がちらほらと席についていた。昨日に座った席にスタスタと近づく。椅子を引いて座る。カバンを横側にあるフックに掛けて、教科書やノート、筆記用具などを出す。今日から早いが通常の授業が始まるらしい。確か、そういう風にプリントには書いてあったはずだ。思い出しながら、机の下にあるスペースに教科書類を入れる。一時限目の科目をチェックして必要な物を用意もした。そうしていたら、隣の席から声を掛けられる。


「おはよう、ソアレ嬢」


「……おはようございます、殿下」


「ソアレ嬢、俺のことはライカでいいよ。君のこともルイゼ嬢と呼ばせてもらうから」


「わかりました、では。今後はライカ様と呼ばせていただきます」


「うん、とりあえずは。よろしく頼むよ。ルイゼ嬢」


 そう言って、殿下もといライカ様はにっこりと笑った。私もつられて笑っていた。すると、前方から視線を感じる。気がついてそちらを見たら、昨日に声をかけてきたあのセイラがじっと私やライカ様を見つめていた。


「……どうかしたか、ルイゼ嬢」


「いえ、何でもありません。ただ、ちょっと次の授業が気になって」


「あ、そうだ。俺も早く準備しないと。知らせてくれてありがとう、助かったよ。ルイゼ嬢」


 ライカ様はそう言うと、慌てて授業の準備を始めた。私は再び前を見た。そうしたら、セイラことセシルはふいっと目線を逸らす。確か、昨日も同じようにしていたが。私はあまりに不可解なので内心で首を傾げた。


 授業が始まり、私は黒板に書かれる文字を担当の先生の説明も聞きながら、ノートに書き写していく。


「……であるからして、このフローレンス王国は初代の国王や王妃の活躍により、建国された。現在、初代王妃が考案した国を覆う結界は維持され続けている。では、教科書の二ページ目を開いてくれ」


 生徒達は手を止めて、教科書を皆開く。パラパラと紙を捲る音が微かに聞こえる。今は歴史の授業をしていた。


「結界は代々、大聖女が自身の霊力を要である水晶石に注ぎ込むことにより、維持をされてきた。それは皆も知っているだろう。フローレンス王国が建国されて早くも五百年が経とうとしているがね、結界が損なわれたことはない」


 先生はそう言って、また黒板にチョークで授業内容を書き込んだ。私や他の生徒達もノートに写すのを再開した。それは一時限目が終わるまで続いたのだった。


 

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