3話
エントランスにたどり着くと、姉のリーゼロッテが既にいた。
艷やかなハニーブロンドの髪を腰まで伸ばし、シニヨン風に結い上げている。瞳は翡翠色だ。私と同じ制服だが、リボンの色だけは藍色で違う。ちなみに、姉は四年生で来年の春には卒業だ。年齢も十七歳で私より、三歳は上だった。
「あら、身支度はできたみたいね。久しぶり、ルイゼ」
「はい、お久しぶりです。リーゼロッテ姉様」
「ふふっ、あなたも学園に入学するとはね。時間が流れるのは早いものだわ」
姉はそう言って笑う。やはり、姉は母にそっくりだ。私は父にそっくりだが。顔の造形は姉と私は全くと言って良い程に似ていない。が、目の色だけは同じだ。父が藍色で母は淡い琥珀色なのだが。その二人の色が混じり合って今の私達の瞳になった。
「さ、行きましょ。早くしないと本当に遅れるわ」
「わかりました」
「行ってらっしゃいませ、お嬢様方」
家令が丁寧に一礼しながら、言ってくれた。私は姉やメイドのツェリの三人でエントランスを出る。先にツェリが乗り、姉が乗り込むのに手を貸す。次に私にも手を貸してくれる。乗り込むと、御者が扉を閉めた。馬車はゆっくりと動き、学園へと出発した。
姉やツェリと三人で馬車の中にてポツポツと喋る。
「それにしても、ルイゼが魔術科を選ぶとはね。意外というか」
「そうですか?」
「ええ、凄く意外だったわ。ルイゼは騎士科に行くのかと思っていたから」
姉はそう言ってコロコロと笑う。ツェリもちょっと苦笑いの表情だ。二人とも、私が魔術科に行くとは思っていなかったのがわかった。
「私もルイゼお嬢様が魔術科に行くとおっしゃった時は、驚きました」
「そうなの、そんなに意外だったのね」
「ええ、まあ。我が家はかつては優れた魔術師を輩出していたとは聞くのよ。だけど、それも昔の話ではあったから」
「はあ、確かにそうですね」
「あ、そろそろ着くわね。ルイゼ、入学式の会場までは付いて行くわ。その後は別行動よ」
「はい」
頷くと、馬車が停まった。どうやら、学園に着いたらしい。ここにあの小説のヒロインのセイラやライカ殿下がいるのだ。不思議と緊張感が湧いてきた。ドキドキしながら、手を握りしめたのだった。
馬車を降りたら、ツェリは中で待機だ。今日は入学式が終わったら、クラスでの自己紹介などかあるくらいだろう。たぶん、午前中にはお邸に帰れるはず。そう思いながら、姉を見た。
「ルイゼ、会場は大講堂のはずだから。一緒に行きましょう」
「わかりました」
私は頷いた。やはり、姉がいてくれてよかった。そう思いながらも付いて行く。けど、蔦が絡まった外壁が何ともレトロな感じだ。全体的に石造りの建物でとにかく広い。大講堂は少し奥に入った所にあった。
その近くまで行くと、姉はある令嬢に声を掛けた。
「あ、レウィシア!」
「あら、リーゼロッテ。久しぶりねえ」
レウィシアと呼ばれた令嬢はこちらに小走りでやってくる。縦巻きにしたプラチナブロンドに淡い紫色の瞳が目立つ。背は私より、五センチくらいは高いか。華奢ながらも出るところはしっかり出たなかなかに艶やかな人だ。姉は背が高くてスラリとした感じだから、対照的というか。
「あら、隣にいる子は初めて会うわね?」
「ああ、この子は妹よ。名前をルイゼというの。今年にこちらに入学することになってね」
「そうなの、可愛らしいじゃない」
レウィシアと言うらしい令嬢は私を見て、にっこりと笑いかける。
「初めまして、ルイゼさん。私はお姉さんの同級生でレウィシア・エルグランドと言うの。よろしくね」
「初めまして、レウィシア様。改めて、私はルイゼ・ソアレと申します」
「……ふふっ。やはり、噂は本当だったわね。妹さんがソアレ侯爵の養女になったというのは」
「ご存知だったんですか?」
「知っていたわよ、と言っても私の婚約者伝いではあるけど」
レウィシアはそう言って肩を竦めた。姉も苦笑いした。私は小首を傾げたのだった。




