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第8話 王の仕事って大変ですね。

朝食を終えたアーロンはエイベルと執務室に来ていた。


執務室には机が幾つも並んでいて、まるで現代日本の会社のオフィスのようである。

既に仕事は始まっているようで多くの文官らしき者が歩き回っていた。

書類が宙を舞ったり、羽ペンが自動で動いたり、人の言葉を話す鳥が窓から何度も出入りしていた。その光景を見たアーロンは大声をあげそうになり、慌てて手で口を塞ぐ。


「すげ・・・・・ぇ・・・。」

「どうかされましたか?陛下。」


エイベルが口を押えるアーロンを見て聞いてきた。


「いや、大丈夫だ気にするな。」


このオフィスのような部屋の奥に壁で仕切られ、オフィスが見渡せる様なガラス窓がついた小部屋が有り一番豪華な机がガラス越しに見えている。

その小部屋に向かってアーロンは歩いて行く。

その後を、何も言わずにエイベルがついて来ているのでその机が自分の机であると確信した。


アーロンは王の仕事なんて初めてなので出来るか不安だった。


席に着いて、直ぐに渡された書類に目を通してみると、その内容が理解できる事に驚いた。

前のアーロンの記憶が融合しているのだから理解できるのは当たり前のことなのだ。

所々解らない部分もあったが、エイベルやほかの文官のスペックがとてつもなく高く、サポートが万全なので問題なく仕事をすることが出来た。


「陛下、今日はこのあたりで切り上げましょう。」


アーロンは仕事に慣れるのに必死で、時間が経つのを忘れていたようで既に夕方近くになっていたようだ。エイベルが声をかけてくれなければ、ずっと仕事を続けていただろう。


「そうか、もう夕方になってるな。そうしよう!」


その後夕食を食べ、寝室に戻ってきていた。アーロンはベットに横になりながら、今日一日を思い出していた。

仕事をしていて、自分が覚醒する前のアーロンがどれ程この国のを事大事に思って日々精進していたのかが伝わってきたのだ。

色々な書類に目を通すたびに覚醒前のアーロンの感情や考えが一郎の中に流れ込んでくる。

記憶はある程度融合されていたので知識はあった。

しかし、書類に目を通すたびに覚醒前のアーロンの悲しみや怒り、不安や安堵そして喜びなどの感情が押し寄せてきた。

その感情に引っ張られたのかは、分からないが一郎は覚醒前のアーロンの夢を引き継ぐ事を決意する。


それから、二週間が経った日の夕方のことだった。

いつものようにアーロンはオフィスの自分用の小部屋で仕事をしていた。


「もうやめだ!休みたーーい。」

「楽しくないよーー!」


アーロンが弱音を吐いていた。二週間前の夜の決意はどうしたのか?

アーロンの弱音の原因はこの世界の仕事環境にあった。


この世界では休日というものが存在しな。

休まない訳ではないのだが、現代日本のように決まった曜日に休むという習慣がないのだ。

仕事がある間は働き暇な時に休む、みたいな感じである。


みんなが一斉に休むのは建国記念日とその前後併せて三日間ぐらいである。

その三日間はお祭りなので、催しや屋台などで賑わうので働いているものも比較的多い。

王宮に仕える者たちはもちろん休みじゃない。


だから、現代日本のサラリーマンだった一郎には耐えられなかったのだ。

前世の一郎の会社は比較的ホワイトで週休二日制だった。

リフレッシュ休暇まであったのだからとうてい無理である。


「陛下、もう少しなのでがんばってください。」


エイベルが困った顔をしながらアーロンにいった。

その横から女性の声がした。


「先程から何度もうるさいですね!最近の陛下は、すぐに弱音を吐くようになりましたね。エイベルの言うとおり、学園時代のアーロンに戻ったみたいです。」

「ハハハハハ!そう思うだろ。カミラ。」


エイベルが楽しそうに笑いながらその女性をカミラと呼んだ。


カミラ

彼女はエルフ族の女性でアーロンやエイベルの学園時代からの親友である。

エルフだけあって、とてつもなく美人で、剣の腕前が凄くこの国一番の剣士で剣聖と呼ばれている。

エルフは精霊との繋がりも強く、精霊魔法が得意な者が多いはずだが、カミラは苦手にしていた。

使えない訳ではないが、力加減が出来ず暴走エルフになってしまうので自ら封印している。

エイベルと違い頭はあまり良くない。力が強いので昔からゴリ押しで、考える前に行動するタイプである。

何故か、フローラとは馬が合うみたいでとても仲が良い。

アーロンの護衛兼友達である。


先程から砕けたしゃべり方をしているのは、小部屋の扉を閉めてるので外に声が漏れることが無いからだ。


「お前ら、言いたい放題だな!学園時代そんなに弱音吐いてたのか俺。」


その質問にカミラが答えた。


「アーロン覚えていないの?ボケるにはまだ早いわよ。」

「学園時代のあんたは何時もさぼる事ばかり考えてたじゃない!頭が良すぎると悪知恵もよく浮かぶものなんでしょうね。」


エイベルも楽しそうに話し出す。


「最近は昔に戻ったようで楽しいです、こんな時間も良いものですね!ただし二人とも砕けた話し方はこの部屋だけにしてくださいね。家臣や第一王妃などに聞かれたら大変ですからね!」


「分かっておる。心配するでない!」


「任せてちょうだい。完璧よー!」


アーロンは威厳たっぷりに、カミラは軽く答えた。


「そう!お願いしますよ。第一王妃の前であからさまにフローラ様達を庇ったときはビックリしましたよ。」


二週間前の事をエイベルは言っているのだ。


「すまん、気を付けるよ。」


「ん・なんの話?」


カミラが聞いてくる。

あの日カミラは、街の近くに魔物が出たので討伐に行っていた。

普段は冒険者ギルドで対応するのだが、出現した魔物というのがドラゴンだったので王宮の方に連絡が上がってきていた。

普通の冒険者が束になっても勝てるかどうかわからないドラゴンだったのでカミラ討伐に行くことになった。

まぁ、一匹程度ではカミラとってはただのトカゲであるので。一人で出かけていき昼頃には帰ってきていたのだから。カミラの強さか別次元である。

だから朝食での事を知らなかったのだ。


「アーロン、カッコいいじゃない!遂にやる気になったわね。私はいつでも準備万端デストロイヤーだぜ!」


カミラちゃんは、脳筋である。

カミラの手綱を握っておかなければヤバいと、アーロンとエイベルは再認識する。











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