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第7話 不安

ヒルダが私室で考えをめぐらしている頃


第二王妃フローラ達も私室に戻っていた。

二人の王女、フレイアとアンジーもフローラの部屋でソファーに座っていた。

フローラの部屋はアーロンの寝室のようにシンプルで落ち着いた部屋のようだ。


姉のフレイアが妹のアンジーに何やら注意をしているようだ。


「もおー。アンジーはお転婆すぎるわよ!さっきは、お姉ちゃんビックリしたんだからね。」

「ごめんなさいです。でも、ちちうえが、しんぱいだったんだもん!あたちがのど『イガイガ・チカチカ』したときのおくしゅり(キャンディー)もっていたから、あーんしたの。」


アンジーが一生懸命にアーロンの事を心配して何かしようとした事はフレイアも解っていた。

しかし、大変な事になる所だったのだ。

フレイアは第一王妃が自分たち母娘にとって危険な人物である事を理解しているので、まだ幼い妹アンジーは自分が守ると心にきめている。


「父上が心配でも、第一王妃様には気をつけなさいと何時もお姉ちゃんが言っているでしょ!今朝は父上のおかげで大丈夫だったけど次はわからないわよ。」


フレイアは少し強めにアンジーを注意しておく。


「はーい!きょうのちちうえ、とてもやさしかったのです。あたちのおくしゅりたべてくれたからだいしゅきーー!」


アンジーは元気いっぱいに返事をしているが本当に分かっているのかと不安になるフレイアだった。


「そうね!今日の父上はとても優しかったわね。いつも優しいけど今日は特別だったは。ねえ、母上!」


「そうね、よかったわね。」


フローラの返事が返ってくる。


フレイアは、アーロンが妹のアンジーと視線を合わせるために膝をつき話しかける姿が異国の王子様が愛する姫に話しかけるように見えたのだ。父上がとても素敵だったと二人してはしゃいでいる。

二人とも重度のファザコンのようだ。


フローラは、ニコニコと今朝のアーロンの事を話している娘たちを見つめながら考えていた。


フレイアもまたアーロンに違和感を感じていた。私達を守って頂いたのはとてもうれしく思っている。

しかし今回はあからさますぎた、明らかにアーロンはフレイア側を守ったのだ。


今までのアーロンは、まず第一王妃を立てたうえでフローラ達を守る方法を取ってきた。

それが今朝は違ったのだ。

このままでは、あの強欲で我儘な第一王妃が黙っていないだろうとフローラは思っている。


最近では、あの馬鹿王子ダーメンが王太子になり、更に我儘ぶりに拍車がかかってきていた。


もともとヒルダは政略結婚でこの国に来たのでアーロンの事を好きなわけでもなく、王の面子など考えずにわがまま放題だった。

息子ダーメンが時期国王になれると解った今、まるで自分が女王になったかの振る舞いをしだした。

流石にアーロンの前や公の場では控えているようだが、宮廷に勤めている者達は皆気付いている。

ヒルダの力が強くなるのと比例するように悪いうわさも多く出てきていた。


莫大使途不明金が増えたり、王宮の使用人や兵士が行方不明になったりしている。

特に人種以外の知恵ある種族(亜人種)の者が行方不明になることが多いようだ。


この国エアフルトは昔から亜人種と友好的にしてきていた。

アーロンが王になってからは更に友好的になり、国の要職に就く者も少なくない。

アーロンの夢は人族だけでなく全ての種族が仲良く暮らしていくことのできる国を造る事らしい。

あらゆる種族が力を合わせる事でどんな困難も乗り越えられる強い国を築くことが出来ると常日頃から、家臣たちに言っている。

だが、今この国では亜人種達の多くが行方不明になっている。

これは、アーロンの夢を叶えるうえで起こってはいけない事件である。


フローラはこの行方不明事件にヒルダが関係しているとにらんでいた。

しかし、第一王妃つながるような証拠は一つも出てこない。


フローラは何時もヒルダの行動に警戒し対応してきたので、今がとても危険な時期である事を肌で実感しているのだ。


そんな事もあり、今朝のアーロンの態度が心配になっていた。

自分達を守ってくれたことは嬉しい事だが、それ以上に今回のアーロン態度の変化は何かしらの意図があるのではないかと推察していた。

そして、これから何か大きな事が起こるのではないかと不安になるフローラだった。


「この一件は、父上に連絡する事にしましょう・・・。」


フローラは、机に座って羽ペンとインクを取り出した。そして一枚の紙に手紙を書き始めた。

十数分後手紙を書き終えたフローラが何やら言葉を言った。


「風の精霊さんお願いね!」


すると突然、目の前に緑色の鳥の姿をした風の精霊が現れる。


「ピイ!」


風の精霊の足に手紙をくくりつけたフローラはもう一度風の精霊にお願いする。


「ピイーー!」


風の精霊は現れた時と同じように一瞬で消えた。


ちなみに、フローラが風の精霊を使役していることを知っているのは、アーロンとエイベルなど数人である。ヒルダは知らない。



後日、第二王妃フローラからの手紙を受け取った辺境伯アドルフは兵を動かす準備に取り掛かることになる。



※一郎が覚醒してアーロンと融合する前のアーロンは、息子ダーメンが王太子になってから第一王妃が謀反を起こす可能性があることに気付いていた。内密にフローラの父、アーロンにとっての義父であるアドルフと連絡をとり機会をうかがっていたのだ。ヒルダの謀反の証拠をおさえ捕まえるために。しかし、覚醒した一郎と融合したアーロンはまだその記憶を思い出していない。





 

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