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第6話 疑念

朝食後、第一王妃は私室に戻ってきていた。


 第一王妃の部屋はアーロンの部屋とは正反対である。

豪華な家具が並び、金やダイヤやエメラルドなどむやみやたらに散りばめられた下品な装飾品が部屋中に掛けられている。


キングサイズのソファーに座ったヒルダは何やらブツブツ言いながら考え事をしているようだ。

その様子を馬鹿王子のダーメンもソファーに座って見ている。

ダーメンは朝食での事に腹を立てていたので、母であるヒルダに聞いてほしいと思っていた。

私室に戻ったヒルダは先ほどから何やら考え事をしているようなので言い出せないまま時間だけが過ぎている。

しかし、元来我慢をすることのできないダーメンはヒルダに声をかけた。


「母上!父上のあの態度はどうしたのでしょう。せっかく母上が教養の無い第二王妃達に教育をしていたのに。あんな態度をとられると母上が悪いようではないですか!物の良し悪しの分からない父上の無能さにはあきれてしまいます。」


ダーメンがまくしたてるようにヒルダに話しかける。

ヒルダはダーメンの声が聞こえていないようで、今もブツブツと呟いて考え事をしているので返事は返ってこない。


「母上!母上!聞かれているのですか?」


もう一度ダーメンはヒルダに声をかけた。

それでもヒルダは反応しない。


ヒルダは朝食の席での一件で違和感を感じていた事について考えをめぐらしていた。

違和感とはもちろんアーロンに対してである。


今までも第二王妃達をかばうような事は確かにあった。

しかし、今回のように表立ってアーロン本人が直接かばう方法をとることは無かった。あくまでも第三者を使い穏便に解決していたのだ。

だが、今回は明らかに違っていた。

アーロン自身が第二王妃達をかばっていた、ヒルダの叱責を無視して第二王妃達ををかばっていたのだ。


その事がどうしても腑に落ちない。


今まで波風立てないように立ち振る舞っていたアーロンが初めて表立って反抗を示したのだ。ちょっとした朝食の出来事がヒルダは気になって仕方がなかった。

アーロンが一瞬まるで別人のように見えたからだ。


二度も母親に無視されたダーメンの顔が真っ赤になっている。怒っているようだ。

ダーメンが大声で再度ヒルダに話しかける。


「母上ーーー!」


「・・? 何ですか大声を出してうるさいではないですか、考え事ができないでしょ!」


思考を邪魔されたヒルダはダーメンを注意する。


「しかし、母上!今日の父上はどうしたのでしょう。いつも以上に無能だったではないですか、別人のようでした。第二王妃なんかをかばいだてして。」


「ん?・・・・・!」


ヒルダは何かに気付いた。


「そうよ!、ダーメンあなたの言うとおりかもしれないわ・・・・別人!」


ヒルダは昨晩アーロンの寝室で何かが有って、エイベルがアーロンの寝室に行った事は知っていたのだ。


元々アーロンの心配などした事がなかったから朝食の場で話はしをしなかったのだ。

だが今は、昨晩に何が起こっていたのか知らなくてわいけないと思った。

自分の感じた違和感の答えがそこにあるかもしれないと。


「誰かおらぬか!」


ヒルダはすぐにメイドを呼び寄せ昨晩の事を知っている者を呼んでくるように指示を出した。


第一王妃の観察能力の高さに驚かされる。

朝食時のアーロンの変化だけで、違和感の正体にたどりつこうとしている。


「ヒルダ様、昨晩陛下の部屋の警備にあたっていた兵士の一人を連れてまいりました。」


メイドが部屋の外からヒルダに声をかけてきた。


「分かったわ、入りなさい!」

「失礼します。」


部屋にメイドと昨晩アーロンの部屋の警備をしていた兵士の一人が入ってきた。

兵士は訳が分からないまま第一王妃の部屋まで連れてこられたので怯えている。

兵士の男はヒルダの前で膝をつき顔を伏せた。


「貴様が昨晩陛下の部屋の警備をしていた兵士で間違いないですね?」


「はい!間違いございません。」


兵士の男肯定する。


「では、貴様に少し聞きたい事がある故正直に答よ!これは、陛下の安全のためでもあるのだ。分かったな。」


ヒルダは強めの口調で兵士に言った。


「昨晩陛下の寝室で何があったか詳しく話してみよ!」


兵士はヒルダに話始める。

①陛下の部屋から大きな声が聞こえた事

②部屋には問題はなく陛下の寝言であったこと。

③寝ぼけた陛下が、自分の事が分っておらず「陛下って・・誰れ?」などと言っていた事。

④その後は、国王補佐のエイベルに部屋から退出させられたのでそれ以降の事は分からないという事。


ヒルダは③の話を兵士から聞いた瞬間に何かを察したようだ。

その瞬間ヒルダの顔がより醜悪になり、悪い笑みを浮かべていた。


「ありがとう!ご苦労様。もう帰っていいわ」


兵士は安堵の表情を見せヒルダに挨拶をしてドアに向かって歩いて行く。


『ブスッ』


「な・・何故? ぐぁーー」


兵士が部屋から出る直前ヒルダの専属メイドが兵士の背中にナイフを突き立てていた。

ナイフには毒が塗られていて兵士はすぐに命を落とした。

ヒルダは笑顔でメイドを見ている。


「よくやりました。」

「ここには誰も来ていません!陛下の話など何も聞いていないのです。分かっていますね」


メイドは、無言のまま静かに頷いて、兵士の死体をかたづけ始める。


部屋のソファーで一部始終を見ていたダーメンはガタガタ震えながら母であるヒルダえの恐怖心に抗っていた。実母ながら母のこういう一面は何度見ても慣れることができないでいる。


そんなダーメンを横目で見ていたヒルダがため息をついた。


「ダーメン!こんな事ぐらいでガタガタ震えているようでは立派な王にはなれませんよ!兵や民など替えは幾らでもいるのですよ、一人死んだぐらいで驚いていてはダメです。しっかりしなさい!」


「そうだわ!近いうちに平民狩りをいたしましょう。私も幼い頃にやったことがあります。あれは良い勉強になりました。あなたにもいい勉強になることでしょう。分かりましたね。」


ダーメンは深呼吸をした後静かに返事をした。


「かしこまりました、母上。」




















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