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第38話 いざ!ビート領へ③


「ヒャッハー!」

「皆殺しだー!」

「汚物は焼毒だー!」


アーロンはこの世界にも世紀末が存在することに感動していた。

盗賊たちがアーロン達の馬車の前に現れる。


「来たみたいだね。」



馬車の中から外を確認すると、前方に10人後方に5人左右に2人づつアーロンの馬車を囲むようにして盗賊たちが取り囲んでいた。

一瞬で馬車を取り囲むあたりベテランの盗賊のようだ。



「アーロンどうするの?」


「どうするのじゃ?」


「話しかけてくると思うから少し待っててね。」



取り囲んだ盗賊たちが話しかけてくる。



「ドワーフの爺!死にたくなかったら馬車を止めて大人しくしろ!」



クローンの視覚は今アーロンと共有しているので状況はよく見えている。

バイコーンとも感覚共有しているので静かに馬車を止めた。


『ビュン!』


馬車を止めた瞬間、弓矢がドワーフのクローンの眉間に突き刺さる。

御者台からドワーフのクローンが幌馬車内に転げ落ちて来て霧散して消える。消える姿は外に居る盗賊たちには見えていない。



「やったぞ!」



盗賊たちは唯一の男であるドワーフを仕留めたことで、残りが子供と若い女になったので安心してニタニタ笑っている。



「中の奴出てくるんだ。もう女二人と子供だけなのは分かっているんだ。ドワーフの爺みたいに死にたくなかったら出て来い。」



馬車の中ではシルフィーとドーラが青ざめている。



「新しいクローンが爆発しないのは解っていたけど、矢が刺さった時はビックリしたわ。」


「わらわもじゃ。安全になった事を忘れてたから、死を覚悟したのじゃ。」



改善される前のクローンを知っている二人は盗賊の矢がドワーフのクローンに刺さった時死ぬほどの恐怖を感じていた。



「シルフィー僕を抱っこした状態で外に出てもらえるかな。怯えた演技も忘れずにね!ドーラも同じようにおびえた感じで一緒に馬車から降りてね。」


「解ったわ。」


「了解なのじゃ。」



シルフィーはアーロンを抱えて幌馬車から降りる。

その後を追うようにドーラも馬車から降りた。

降りてくる三人をじっくり観察するように盗賊たちが見ていた。


「これは!大当たりだったようだな。綺麗な女達じゃないか高値で売れそうだぜ!まあ、俺たちが楽しんだ後だがな。」


「ガキの方も、そういった嗜好のジジイにでも売れそうだな。ダメならどこかの山にでも捨てれば勝手に死んでくれるだろうさ。」


「よし!後ろの奴、中に入って荷物を調べろ!お前たちは動くなよ。」


お頭の男が馬車の後方の男達に指示を出す。



アーロンが小声でシルフィーに話しかける。



「馬車に入った奴らを風の籠を作って隔離してみるから見ててね。」



アーロンが風魔法を使って馬車の中に入っていった五人の盗賊達を隔離する。

馬車の中は外からでは見えないし風の籠で囲まれているので物音も一切漏れることは無い。



「シルフィーどう?上手くいってるかな?」



眷属の精霊たちのおかげで状況を把握しているシルフィーに状況確認する。



「・・・・まぁ、隔離と言えば隔離出来ているような感じね。・・・・。」


「何?どういう事。」


「後で自分で確認すれば良いと思うわ。」


「?」



アーロン達が小声でやり取りしていると馬車の左右に陣取っていた盗賊たちがアーロン達を捕まえる為に近づいてきている。



「次は近づいてきている4人の足止めだね。そうだ!氷魔法で足を凍らせて足止めだ。アニメでも良くある奴だからさ。」



シルフィーとドーラはガタガタ震えながら怯えた演技を続けてくれているので、盗賊たちは何の警戒もしていない。



「凍ってな!」



アーロンがシルフィーの腕の中で中二病全開でポーズを決めて氷魔法を使う。

イメージは脚が凍り付いて地面に張り付いて動けなくなるイメージた。

すると目の前の盗賊たちの足元が凍り付いたと思った瞬間、全身が氷に覆われてしまった。

氷の彫刻の出来上がりである。



「え!?」


「やっぱりね。」


「やっぱりなのじゃ。」


「かなり魔力減らしたんだけど、まだ魔力多すぎですか?シルフィーさん。」


「そうね、今の1/10で良いくらいね。」


「気をつけます。てことは前の風魔法も・・・・。」


「・・・・・・。」



多分盗賊は即死だ。


目の前の仲間が一瞬で氷の彫刻になったのを見た仲間たちは固まっている。

そんな中、お頭だけは状況を整理していた。

相手は震えている女二人と抱かれている子供だけだ。

今のは魔法に違いない。

この3人に魔法が使えるとは思えないので、他に人が近くに潜んでると結論付ける。



「周りに気をつけろ!近くに魔法使いが居るに違いない警戒しろ!」



お頭が指示を出すと盗賊達全員がアーロン達に背を向けて周りを警戒し始めた。



「どこだ出て来い!」


「隠れてないで正々堂々戦え!」


「臆病者が!卑怯だぞ!」


自分たちの所業を棚に上げた言いたい放題である。

だが、どんなに警戒しても誰もいないのだ。

盗賊たちの後姿を見ながらシルフィーとドーラが必死で笑いを堪えている。

シルフィーは下を向いて顔を見られないようにしているが、肩が上下に小刻みに動いている。

ドーラにいたっては、膝から崩れ落ち地面を手でたたいて声を殺して笑っている。声が出ていないだけで笑っているのが解る。



「盗賊たちの背中丸見えで、魔法の的にしか見えないんだけど・・。」


「「今度はちゃんと魔力の量を調節するのよ!」のじゃ!」


「少しの魔力~。少しの魔力~。少し~~。」



アーロンは目の前の10個の的に向かって氷魔法を使った。



「うわぁー何だ!」


「冷てぇ~」


「足が~俺の脚が~」


目の前の盗賊達から悲鳴が聞こえる。

どうやら今度は殺す事無く魔法で拘束できたようだ。

10人共腰まで凍って地面に固定されていた。

その姿を確認して、アーロンがシルフィーの腕から降りる。



「シルフィー、ドーラ今度は完璧じゃない!」


「そうね!」


「上手いのじゃ!」



そんな会話をしながら盗賊達に近づいていく3人。

自分たちの後ろから聞えてくる楽しそうな声に気付いた盗賊達が上半身だけで振り返る。

今までガタガタ震えていた女2人と抱きかかえられていた子供が笑顔で近づいてきた。



「ねぇ、おじさん達盗賊さんだよね。」



男の子が話しかけてきたので盗賊達が驚いている。



「何者だ!?もしかした今の魔法はお前たちがやったのか?」


「そうだよ。僕の魔法なんだ、まだ力加減が難しくて失敗したけどね。」



4才位の子供が笑顔でそう話してくるのは不気味で恐ろしいのだろう。

盗賊達の顔が青ざめている。



「助けてくれー!」


「殺さないでー。」


「足の感覚が無くなってきたー。いやだー。死にたくない!」



アーロンは、この後どうしたら良いか迷っていた。

異世界に来て人間を直接、殺した事が無いのだ。

勿論、王だった頃も間接的には有るが直接自分でを殺害したことは無い。



「シルフィー!僕、人間を殺した事ないからこの人達の処遇に悩んでるんだけど?」


「何言ってんのよ!氷漬けにして殺っちゃてるじゃない。」


「そうなのじゃ!馬車の中の奴らなど風魔法の刃でミンチ状態なのじゃ。」


「それは・・・僕の意志じゃなくて・・ちょっとしたミスだから。殺すつもりなんて無かったの!」



シルフィーとドーラが眼を細めてこちらを見てくる。

シルフィーとドーラがそんな事を言うものだから盗賊達は涙と鼻水を流しながら命乞いを始める。



「ごめんなさい!」


「助けてください。なんでもしますからー。」


「うわぁー。神様ー。」



むさ苦しい盗賊が涙と鼻水で汚さが増していく。


実際アーロンは盗賊を殺すつもりは無い。

しかし、このまま野放しにすると又悪さをするといけないので対処に困っていた。



「このままで放置で良いんじゃない!」


「どうせ下半身は氷漬けで身動きできないしね。運が良ければ誰かに助けられると思うし、運が無ければこの辺りの魔物の餌よ。」


「そうだね!じゃーシルフィーとドーラ出発しようか。」



シルフィーの説明を聞いたアーロンはその案で行く事に決めた。

アーロンは自分で殺したくないだけで盗賊が死ぬことには抵抗が無いので旅の続きを優先することにした。

馬車に乗り込み盗賊達のミンチを魔法でキレイにして、新しいドワーフを御者台に乗せて出発する。

その後ろから、盗賊達の泣き声や叫び声が聞こえて来ていたが無視である。




その日の夜、盗賊達は魔物たちがキレイに片づけてくれたようである。








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