第18話 王都脱出
エイベルはフローラの部屋に向かっていた。
「早くフローラ様を安全な所にお連れしなくてわ。」
ヒルダ達の前で堂々と振舞っていたが余り時間がないことが分かっているエイベルはとにかく最速でフローラ様たちの安全を確保するために焦っていた。
いくらアーロンから全権を任されたとしても、あくまでも代理者に過ぎない。
ヒルダ達が正式な手続きをして王太子であるダーメンを王にしてしまえばエイベルはあっという間に無力になってしまう事が分かっているからだ。
ダーメンは腐ってもアーロンの息子で王位継承権1位である。
今は書簡を見て戸惑っているだろうが、ヒルダの事だすぐにダーメンを国王にするための行動を起こすだろうと考えていた。
ダーメンが国王になってしまえば、フローラ達の命は無いに等しい。
エイベルがフローラの部屋に着いたと同時にフレイアとアンジーが扉の前にいた。
「フレイア様、アンジー様大丈夫でしたか?さぁ!お部屋の中に入りましょう。」
エイベルが扉を開けて二人と一緒に部屋に入る。
「母上!父上はどうされたのですか?平気ですよね。」
「ちちうえのびょうきはあたちがなおすです。」
二人はアーロンが亡くなったことをまだ知らないが、フレイアは薄々気付いている様子であった。
「・・・・・・。大丈夫よ。」
フローラは沈黙の後二人の娘に嘘をついた。
3人を見ていたエイベルが話始める。
「フレイア様、アンジー様、安心してくださいアーロン様は大丈夫ですよ。今日は城下街に視察のお仕事に行っていただいたのでお疲れになっていたようです。心配させてごめんねと言っておいででしたよ。」
エイベルが二人を安心させるために嘘をつく。
「・・・・・。」
「ちちうえへいきなの? よかったです。」
「それでですね、フローラ様少しの間お父上であるアドルフ辺境伯様の所に姫様達と一緒に帰られるのはいかがですか。アーロン様の療養もかねて少し羽を伸ばすのも良いかとおもわれますが。いかがですか?」
フローラは今の王宮が自分や娘たちにとって危険であることを分かっているので素直に受け入れる。
「そうですわね。そう致しましょう。」
「アーロン王はただいまお休みになっておられますので、準備が整い次第、後日お連れ致しますので先にご出発ください。」
「・・・・・。」
「ちちうえあとでくるの。あんじーたのしみですー。」
フレイアは何も言わない。アンジーは喜んでいる。
「それでは、夜明けと共に出発していただきたいと思いますので、こちらのお部屋で姫様達にはフローラ様と一緒にお休みいただきますね。アンジー様朝が早いのでしっかりお休みくださいね。」
「わかったですー。」
そう言ってエイベルはカミラを連れて隣の部屋に移った。
隣の部屋に移ったエイベルとカミラは今後について話始める。
エイベルが胸のポケットから小さなベルを取り出し鳴らした。
白い光が音が広がるように部屋中に広がり薄い膜を作る。これは盗聴防止の魔道具で、話を聞かれないようにしたのだ。
「よし、これで大丈夫だ!」
「カミラ、お前はフローラ様達を護衛してもらうために一緒に王都を離れてもらうぞ。第一王妃の事だ、どんな手段に出るか分からないからな。剣聖であるお前が傍にいてくれれば問題などないだろうからな。」
「エイベル、あなたはどうするのですか?」
「少しでも時間稼ぎできるように、全権代理者として第一王妃側を牽制しておくよ。ダーメンが王になるのを少しでも遅らせないと大変だからな。アドルフ様の準備もまだ、整っていないだろうからな。」
エイベルは城に残ってヒルダ達の計画を遅らせるようだ。
だが、ダーメンが王になりエイベルの権力が無くなれば、すぐにでも処刑されかねない。カミラはエイベルを心配していた。
「何だその顔は?心配してるのか、何の問題もない時間稼ぎが出来たら俺もビート領に向かうさ!アーロンの夢は俺達で叶えないとな。」
「そこでだ、カミルにお願いがあるんだが。エルフの秘宝、姿くらましのマントを少しの間貸してくれないか。あれが有ればいつでも城を抜け出せるからな。フフフ。」
「仕方がないですね。貸してあげますからちゃんと返しに来るんですよ。フフフ」
その後、ヒルダ達の行動を予測してその対処法やビート領までの安全かつ最短ルートをわりだし完全な脱出計画を立てた。
さすがはすべての分野のおいて秀でた知能を持つエイベルが考えた計画だ。
この計画を崩す事は至難の業だ。もし崩す事が出来てもフローラ達の傍には剣聖カミラの護衛付きである。最強の布陣だ。
少しずつ夜が明けて来て朝靄が立ち込めてきている。
王城の裏に馬車が二台用意されている。
一台は普通の幌のついた馬車。
もう一台は豪華な王族用の馬車である。
時間差で出発させヒルダ達の追っ手を撒く作戦である。
馬車には既にフローラ達が乗り込んでいる。
もちろん豪華な王族用の馬車に乗ってもらっている。
「エイベル!乗る馬車が逆じゃないのか?ヒルダ達をだますなら普通の馬車の方が良いんじゃないの?」
「いいや間違ってないよ。ヒルダ達はいまカミラが思ったように逃げるのにフローラ様達が偽装してると考えて王族用の馬車以外を狙うだろうから、あえていつもの王族用の馬車で出発してもらうよ。兵士も数人つけるからね。いかにもフローラ様が乗ってますよって感じにね。」
裏の裏をかく作戦らしい。
「もし、バレたとしても問題なんてないだろ!剣聖!」
「当り前よ!私の前に現れた奴らは全員細切れにして魔物どもの餌にしてあげるから案してちょうだい。」
自信満々にカミラが答えた。
「じゃあ頼んだよカミ。また会おう!」
「あんたは頭は良いけど弱っちいんだから無理はしないでよね。また会いましょう。」
カミラは馬車に乗り込んだ。ゆっくりと馬車が朝霧の中を走りだした。
「ちょうど朝霧が目隠しになってよかった。さぁ俺は俺の仕事を始めるとするかな。」
エイベルは一人、王城に入っていく。




