第16話 王の死の報告を受けて
第一王妃ヒルダは自室で寛いでいた。ここ数日はアーロンに会っていない。
部屋の扉がノックもなく開かれた。
『ドン!バタン。』
凄い勢いで入ってきたのはこの国の王太子ダーメンである。その表情は何か希望に満ちたような満面の笑みを浮かべている。
「母上!ついに、ついにこの時が来ました。私の時代が来たのです。」
「いきなりどうしたのですか?ノックもせずに入ってきて無作法ですよ!そんな事では王になどなれませんよ。」
ヒルダが相変わらず出来の悪い王太子をみて注意をする。
「だからもう大丈夫なのです。父上が今亡くなったと連絡がはいったのです。これでもうこの国の王は王太子である私のものです。喜んでください。」
「・・! ダーメン、王が亡くなったとはどういう事ですか。本当なのですか?」
「間違いありません今王宮は大騒ぎになっていますし、王の部屋に医務官も向かったそうですから。」
ヒルダは最初ダーメンの報告のビックリしたが、元々アーロンの存在が邪魔に思っていたので死んでくれたことはとても都合がよい事だ当初の予定が早まってとても喜んでいる。
「ダーメン王はなぜ亡くなったのですか?どこでどのような経緯でどうして亡くなったのか詳しく話しなさい!とてもだいじなことです。後、そのように喜びを表に出すのはやめなさい!周りの者に何を言われるか分らないのですよ!少しは考えて行動をしなさい。」
ダーメンの態度をしかりつけた後、詳しくダーメンからはなしをきく。馬鹿王子のダーメンが上手く説明できるわけもなく、ダーメン付きのメイドがヒルダに説明する。
①アーロンが自室で亡くなった事
②アーロンの部屋にはフローラ達母娘が一緒にいた事
③アーロンとフローラ達が一緒にお茶をしていた事
④そのお茶はフローラが用意した物である事
⑤お茶を飲んだ後苦しみだし亡くなった事
その話を聞いていたヒルダはどんどん笑みを深くしていった。すべての話を聞き終わったヒルダはダーメンに向かって。
「ダーメン!一緒についてくるのです。」
ヒルダとダーメンは部屋を足早に出て行った。現場に居合わせたフローラ達を問い詰めて排除するために動き出したのだ。
ヒルダが部屋で寛いでるのと同じ時間
王の執務室にいたエイベルとカミラはアーロンが倒れたという報告を受けアーロンの私室に向かっていた。
二人とも顔が真っ青になっている。
カミラなど理解が出来ず困惑していた。先ほどまで二人で城下街まで行きお腹いっぱいになるまで食べ歩きをしてきたのだ、倒れるなどおもってもいなかったからだ。
二人が全速力で走りアーロンの部屋にたどり着いた時、部屋には医務官が数人でアーロンを診ている時だった。
すぐ傍には、床に座り込んだまま放心状態のフローラ様がいた。
「フローラ様、大丈夫ですか?」
エイベルが声をかけるが聞こえていない様子だ。
「陛・陛・陛下がお亡くなりになっている!」
その時医務官がアーロンの死亡を告げた。その言葉に一番に反応したのはカミラだった。すぐさまアーロンのもとに駆け寄り話しかける。エイベルも駆け寄ってベットに寝かされたアーロンをのぞき込む。
「アーロン!アーロン!起きてください!」
アーロンの返事はない。
「悪ふざけは無しですよ!お腹がいっぱいでくるしいだけでしょう!何かいってください・・・。」
やはり返事がない。エイベルはカミラの横でじっとアーロンを見ているだけである。その眼には涙が溜まっていて今にもあふれ出しそうであるが、グッとこらえているようだ。
「アーロン!起きなさい!この国はあなたが守るのでしょう!!」
「昔からいつも言っていたでわないですか!寝ていては、何もできないでわないですか!休日は終わりです!早く起きて仕事をしてください!」
「あなたはこの国の王なのですよ!あなたが居なくなってどうするのです…うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ア~ロ~~ン、うわぁぁぁぁ~~ん」
まったく起き上がる気配のないアーロンを見て、ついにカミラが泣き出してしまった。
一方エイベルは頭をフル回転させていた。
アーロンの一件をメイド達に詳しく聞いた限りこの後必ずフローラ様たちは窮地に追いやられる事は明白だ。
この一件を第一王妃達が黙って放置しておくはずがないとエイベルは思っている。
親友であり君主として仕えた王が、最も大切に思い愛したフローラ様達を守る事が、死んでしまったアーロンの為にできる最後の事だと考えていた。
そのために、全神経を使いフローラ様達の安全を確保する最善の方法を探していた。
「フローラ様、後はお任せください。お部屋に戻っていてください。」
「誰か!フローラ様をお部屋にお連れしろ。・・・・・・・・・・解かったな。」
エイベルはフローラに駆け寄ってきたメイドにフローラを任せる。その時メイドに指示を出す。もし、第一王妃の手の者がフローラ様に会いに来たらすぐに報告しにくるようにと強く言ってく。
メイド達は、座ったままのフローラ様を連れて部屋から出てフローラ様の私室にむかった。
「カミラ泣くのは後だ立て!今はアーロンの為に何をするべきかをかんがえるのだ。」
カミラはまだ泣いている。
「お前にはアーロンが最も大事にしていたモノを守ってもらわないと困るんだ!それを守れるのは剣聖であるお前だけなんだからな。」
「(´Д⊂グスン ・・・・うん。」
カミラはエイベルの話を聞き少し持ち直した。
「もう解かってるだろ!守るべき者が。」
「うん!まかせて、フローラ様達は剣聖の名にかけて私が守って見せるから。アーロンまかせてね。」
今まで泣き崩れていたカミラの瞳に光がよみがえる。
こうしてアーロンの親友二人の手によりアーロンの家族を守る長い夜が始まろうとしていた。




