第15話 第二王妃の訪問
アーロンが自室に戻って、歩き疲れた体をソファーで癒しながら物思いにふけていると、部屋の扉がノックされた。
『コンコン』
「陛下!第二王妃フローラ様が陛下に会いに来られております。」
兵士の声がする。
どうやらフローラがアーロンの部屋に訪れたようだ。
アーロンは留守中にフローラ達に何か有ったのかな?と思ったが、フローラ達3人へのお土産の事を思い出し渡すのにナイスタイミングだと思いすぐに返事をする。
「分かった、すぐに入ってもらってくれ。」
部屋の扉が開きフローラが入ってきた。
「陛下、失礼いたします。気分転換はいかがでしたか?」
「エイベルから聞きましたよ。久しぶりの城下街はいかがでしたか?私もご一緒したかったです。」
どうやらエイベルがフローラには話していたようで、少し甘えたようにフローラが言ってきた。
カミラを城内で見かけたみたいで、アーロンが帰ってきていると思いアーロンに会いに来たみたいだ。
「陛下、疲れておられる所申し訳ないのですが、お会いしたくて来ちゃいました。少しお時間よろしいでしょうか?」
アーロンはフローラがとても可愛く思い首を縦に振る。
「よかったです!よかったらお茶でもお入れいたしますので一緒にいかがですか?」
「ありがとう、ちょうど喉が渇いていたからありがたいよ」
その言葉を聞いたフローラは満面の笑顔になり喜んでいる。その顔がアンジー姫と一緒だったのですこし笑ってしまった。
「今日はとても美味しいお茶の葉が入ったので陛下とご一緒したかったのです。・・?陛下どうして笑っているのですか、私何かおかしかったですか?」
「いや、フローラの喜んだ時の顔がアンジーとそっくりだったので、つい笑っちゃったんだ。」
アーロンの答えにフローラは顔を赤くしてはにかんでいる。
アンジーの話をしてお土産の事を思い出したアーロンが
「そうだフローラ、今フレイアとアンジーの二人が何しているか知ってるかい?」
「今日街でフローラ達にお土産を買って来たんだが出来ればフレイアとアンジーにも直に渡せればと思うんだけど。」
アーロンは三つの箱を持ちながらフローラに聞いてみた。
「本当ですか、二人ともきっと大喜びすると思いますので!すぐに知らせてここに呼びますわ」
フローラが二人のメイドに指示を出すと部屋から出ていく。
アーロンの部屋を出るまではゆっくりとした足取りのメイド達だったが部屋を出ると大急ぎで二人のお姫様を迎えに走っていった。
迎えに出ていくメイド達と入れ替わるようにお茶の準備をしてフローラのメイドが部屋に入ってきた。
「フレイアとアンジーが来るまでの間さっき話してた美味しい紅茶でもいただこうかな。」
するとメイドでなくフローラがソファーから立ち上がり紅茶をいれはじめる。
アーロンは、てっきりメイドがお茶を入れてくれると思っていたからフローラが目の前でお茶を入れるのに驚いた。
「陛下、どうぞお飲みください。」
フローラの入れてくれた紅茶を一口飲んだアーロンは紅茶の香りにビックリした。
紅茶の事など何も知らないアーロンだったが、この紅茶が最高級なものだとわかるほどだった。
「すごい、この紅茶はとても美味しいよ!まるで疲れがいやされるようだ。」
「良かったです、陛下に喜んでもらいたくてメイドにお茶の入れ方を習ったんですよ。」
フレイアとアンジーが来るまでの間、紅茶を飲みながら今日の城下街での事を二人で楽しく話す事にした。
少しするとアーロンの部屋にフレイアとアンジーが入ってきた。
「ちちうえー!あいにきたですーー。だいすきですーー。」
「アンジーこら!父上に抱き着くなんて・・・!。」
アンジーはバームクーヘン事件以来今まで以上にアーロン大好きになっているので積極的になっているが、そんなことを知らないフレイアはビックリしている。
アンジーが、父とはいえ王に走っていき飛びついたのだ。しかも父上はそんなアンジーをしっかりキャッチして抱っこしていたのだ。いつも周りの視線を気にしてきたフレイアは父であるアーロンにあまり甘えた事が無かったので妹のアンジーが少し羨ましく思えた。
※フレイア5歳・アンジー3歳
「フレイア何だ?そのふくれ顔は」
いつもお姉さんを演じているフレイアもまだ5歳である。思わず顔に出ていたようでアーロンに見つかってしまった。ピンときたアーロンが膝立ちになり優しい顔で声をかける。
「フレイアもおいで。」
フレイアは顔を真っ赤にしながらもゆっくりとアーロンの前まで歩いてきて、しっかりと抱き着いた。
「父上!あたしも大好きです。」
アーロンの両隣にはフレイアとアンジーが座ってフローラは向かい合って座ることになった。
アーロンはカミラに貰った二人の娘達の髪飾りと自分で選んだフローラの首飾りを渡した。
お土産を受け取った三人は箱を開けて大喜びしている。
すごく高価な物というわけではないがアーロンからのプレゼントとあって格別のようだ。
アーロンもとても嬉しい。
前世で独身貴族だったアーロンは家族の幸せを感じて感動している。
女神のミスで殺されたが今は少し女神に感謝していた。
「ありがとうございます!とても素敵な首飾りですわ。いかがですか似合っていますか?」
首飾りを付けたフローラの問いかけに三人が答える。
「ああ、とても似合っているよ。喜んでくれたみたいで嬉しいよ。」
「母上とてもお似合いです。父上もさすがです。」
「ははうえびじんさんです。」
とても喜んでくれたフローラを見てアーロンもとても嬉しい。
フレイアとアンジーの髪飾りも色違いでとても似合っていてとてもかわいい。カミラのセンスが抜群でアーロンは驚く。
食いしん坊なだけでは無かったみたいだ。
そんなやり取りをしているとお茶が冷めてしまっていたのでアーロンは人数分のお茶をメイドに頼む。
紅茶はすぐに新しいのが用意されでてきた。
皆とたくさん話して喉が渇いていたアーロンはそのお茶を一口飲む。
『ゴクリ』
「今日はフローラ達と話せてよ・よ・・・ぐぁ」
「陛下?どうされ・・陛下ーーー! 」
「父上?」
「ちちうえ?」
紅茶を飲んだアーロンが急に胸を押さえて苦しみだした。それを見たフローラ達が慌てて駆け寄る。
アンジーは状況が理解できていないようで???状態である。
アーロンは胸を押さえ苦しんでいる、そしてすぐに動かなくなった。
「早く医務官を呼ぶのです。早くしなさい!」
「メイド達は娘たちを部屋に連れて行くのです!」
フローラの声に周りの者たちが一斉に動き出す。
メイド達は倒れたアーロンを見て泣き出してしまったフレイアとアンジーの抱きしめフレイア達のヘアに連れて行った。
直ぐに医務官はアーロンの部屋にやってきた。兵士がアーロンを抱えてベットに運び終えたと同時であった。
「フローラ様、これはどうされたのですか?なぜ陛下がお倒れになっているのですか?」
医務官も突然の事であたふたしている。
最近のアーロンの体が健康である事は医務官が一番知っているので急に倒れたと報告を受け戸惑っているようだ。
「そんなことは良いから早く陛下の容態を見るのだ!先程から少しも動かないのだ。」
医務官がアーロンの傍に駆け寄り状態を確認する。
「な・なんてことだ!陛・陛・陛下がお亡くなりになっている。」
医務官がガタガタ震えながらのけぞり尻もちをついた。
周りの兵やメイド達も全員顔が青ざめて何も言えなくなっていた。
医務官の報告を聞いた時からフローラは魂が抜けてしまったかのようにピクリとも動かなくなってしまい、まるで人形のようである。
先ほどまでの少女のような表情などどこにも無くなってしまった。
アーロンが死んでしまったのだ。アーロンの異世界転生は二週間ほどの短いもので終了してしまった。
アーロンの死は城内にあっという間に広まりエイベルやカミラはもちろん第一王妃の耳にもすぐに届く事になる。
この死亡の原因が女神のせいだった事など世界の誰一人として知る由も無い。
エアフルト国の多くの者にとって最悪の方向に歴史が動き出す切っ掛けになってしまった。




