106話 『コーヒーを大量に飲んだあとに尿意を感じる』ぐらいの軽いノリ。
106話 『コーヒーを大量に飲んだあとに尿意を感じる』ぐらいの軽いノリ。
もちろん、田中の『武の覚醒』は、ここまでの積み重ねがあってのもの。
『センエースを殺し続けた経験値』が、『真醒・究極超神化に覚醒したセンの武に触れた経験値』をキッカケにして目覚めていく。
覚醒するのは、センエースだけの特権ではない。
というか、田中の方が、頻繁に起こっている。
固有神化の目覚めに、武の覚醒。
田中の進化は止まらない。
「あ……なんか……もう一個、イケる気がする……うん、きとる、きとる。あ、これ、いけるな……開くわ、これ」
と、まるで、『コーヒーを大量に飲んだあとに尿意を感じる』ぐらいの軽いノリで、
田中は、
「――天星神化2――」
覚醒したばかりの固有神化を、すぐさま次のステージへと押し上げてしまった。
爆裂に膨れ上がる、田中の存在値。
もはや、普通に、センの真醒・究極超神化の出力を超えていた。
ぶっちゃけた話、足元にも及んでいない。
その様を見たセンは、
(……もう、俺、帰っていい?)
と、完全にヘシ折れた顔で、そうつぶやくことしか出来なかった。
★
――目論見としては、大成功と言ってよかった。
センが覚醒し、その覚醒をキッカケとして田中も目覚める。
二人の覚醒に触れたことで、配下たちの器も大きくなっていく。
道標であり、指針であり、ゴールであり、ビジョンであり、夢でもある。
明確な『目標』があるかどうかで、そこにたどり着く速度には大きな違いが出てくる。
田中の凶悪な覚醒は、配下にとって大きな光。
あれだけ大きな光だから、そこに向かって、迷わずに進める。
あまりに眩しすぎて、直視することは出来ないけれど、おかげで、迷うということはありえない。
目標は、もうある程度、達成できたので、
田中は『センを殺すこと』はしなかった。
途中からは、殺すどうこうの次元ではなく、センに対して『指導手』を打ちはじめた。
丁寧に、丁寧に、丁寧に、導かれたことで、
センも、自然と、『蓮武・超虹気』をマスターすることが出来たのだった。
すべては、手取り足取り、丁寧な教導を受けた結果。
過保護と言ってもいいレベルの矯正を受けたことで、センは次のステージに進んだ。
進んだというか、押し上げられた感じ。
……当然、その結果に対し、センの『はらわた』は煮えくり返っている。
屈辱とかいう次元ではなかった。
自尊心が完全にぶっ壊された。
もともと、センは、『精神の異形』だったわけだが、
今回の件を経て、さらに大きく歪んでしまった。
田中と関係性をつくるたびに、どんどん歪んでいくセン。
「……」
死んだ目で、田中をにらみつけている。
この5年、センは、田中と殴り合い続けた。
もう、『明らかに手を抜かれている』、というのが分かる中で、ずっと、教導を受け続けるという屈辱。
正直、センは強くなれた。
上位者からの適切で完璧なフィードバックは宝物。
2人の闘いは、『殺しあい』などと呼ぶことはできなかった。
コーチと小学生の二人三脚みたいな感じだった。
センの覚醒が、田中の覚醒のトリガーとなり、
成長した田中が、適切にセンを押し上げていく。
字面だけでみれば。非常に理想的な関係性。
しかし、感情論の視点では……




